第19話 乳母になっちゃった!!
「(まさか、私が乳母になるなんて…………)」
基晴と治輔は仕事があるらしく、部屋を後にしていた。
一子は、安良子さんの腕の中でスヤスヤ眠っている。
「(安良子さんなら、大丈夫ですって)」
安良子さんの本音は分からない。
けど、基晴が言っていたように、こうやって寝ているのだから、これほど乳母として相応しい人は居ないだろう。
俺も基晴の立場なら、家柄云々関係無しに、乳母になって欲しい。
「(…………怖いんです。相応しい乳母になれるかどうかが)」
「(誰しも最初から完璧な人なんて居ません。けど、安良子さんなら大丈夫です)」
「(…………ありがとうございます)」
◇ ◇ ◇ ◇
「あら、安良子がお世話してくれていたの?」
朝になって、舞子が目を覚ました。
体は流石に起こせないらしい。
髪が乱れていて、いつも通りの姿ではない。
けど、顔色は完全に戻っていた。
「…………はい。基晴様から乳母になって欲しいと言われたので…………」
「あら、そうなの。安良子なら安心ね」
舞子、本当に産後なのか…………?
妹産まれたとき、母さんそんな元気じゃなかったで…………?
「二人とも夜通しお疲れ様。今日はゆっくり休んでちょうだい」
「「失礼致します」」
いくら、安良子さんと話していたとはいえ、流石に夜通しの警備は疲れた。
「雅道さん、夜通し警備をされていて、お体は大丈夫なのですか?」
「だいじょ、ぶ、です…………。安良子さんは…………?」
「大丈夫じゃないですよ!?ほら、掴まって」
俺は、急激な眠気に襲われ、倒れかけた。
そんな俺を、安良子さんは支えてくれた。
そして、安良子さんに介抱されながら、自部屋の布団に下ろされた。
「(お休みなさい)」
その言葉を最後に、俺は深い深い眠りについた。
◇ ◇ ◇ ◇
「——雅道さん、もうすぐ参上の時間でございます。雅道さん」
「うーん…………」
俺は、安良子さんの起こす声で起きた。
熟睡していたのだろう。
「おはよう…………って、うわ!?」
「どうされたのですか?」
安良子さんは、なぜか枕元に居た。
まさか、こんな近くに居るとは思わず、びっくりして飛び起きた。
「す、すみません…………。まさか、そんな近くに居るとは思わなくて…………」
「そ、そうでございましたか…………。こちらこそ、すみません…………」
「い、いや、安良子さんは何も謝らなくても…………」
申し訳なさそうにしている安良子さんに、胸が締め付けられる。
「とりあえず、着替えてきますね」
「は、はい」
俺は、その場から逃げるように、屏風の裏へ、着替えに行った。
「安良子さんは寝れましたか?」
「はい。雅道さんこそ大丈夫ですか?」
「自分は大丈夫です。よく寝れました」
「それは良かったです」
あの時安良子さんが居なかったら、ヤバかったかもしれない。
「…………私、乳母として頑張ってみます」
「お互い、頑張りましょう」
◇ ◇ ◇ ◇
「二人ともおはよう。昨日は良く眠れた?」
「「はい」」
舞子はまだ白一色のラフな服装で、髪は乱れていた。
「雅道はいつも通りお願い。安良子は伝えたいことがあるわ」
俺は壁際に寄った。
部屋には、陣痛が始まったときに最初に入ってきた女房の人が居た。
「何でございましょうか」
「乳母は、そこに居る黄山和子も担当することになったわ。七日後からは私もお世話はするけど、二人で一子を支えてね」
黄山和子…………。
全然知らんな。
「承知致しました」
「よろしくね、安良子」
優しそうやな。
というか、まぁ一番に駆けつけてる時点で、安心か。
「はい、よろしくお願いします」
「ふふ、頼もしいわね」




