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安良子の表と裏-一族の繁栄と政治闘争、その陰で交錯する人々-  作者: 綿ダッコ
第3章〜一大事〜

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第17話 緊急事態!!

 今日は、早く起きた…………気がする。


 今何時かが分からないのが困る。


 とりあえず、次の知らせの鐘を待とう。


 俺は、さっさと着替えて身支度をする。


 今日も何もないといいのだが…………。


「……雅道さん、朝でございます」


「はい」


 俺は、ここでの出来事を紙に記すことにした。


 昨日、夕飯を食べている時に舞子の使者から、紙の束を渡された。舞子からの贈り物らしい。


 ここに来るまでの出来事を昨日の夜から急いで、記していた。


 その紙は、制服と同じく厳重に見えないようにしておいた。


「……一昨日、伝え忘れていたのですが、雅道さんが作ってくださったらお食事、大変美味しかっです」


「それは良かったです」


「あの…………私に教えていただけないでしょうか?」


「別に、普通に作っただけですけど…………」


 そんなに美味しかったのだろうか?


 俺的には普通に作っただけなんやけど…………。


「いえ、特に汁物が大変美味でした。あんな味の深い汁物、食べたことがございません」


 出汁をとったからかな?


「あれは魚を一緒に煮込んで、出汁を取ったんです。本来は捨てるところを、勿体ないんで一緒に具材にしましたけどね」


「そうだったんですね。私、そんな方法知らなかったです」


 知らなかったのか。


 まぁ、ただでさえ食材の量が少ないから、分からんでもない。


 毎日、取れなさそうな食材量やし。


「それと、朝のお食事は私に作らせてください」


「分かりました」


 そう言うと、安良子さんは食事の準備を始めた。


 俺は、廊下でその様子を眺めていた。


「……雅道さん、恥ずかしゅうございます」


挿絵(By みてみん)


「あっ、すみません」


 俺はいそいそと、部屋へ戻った。


 そして、程なくして食事が運ばれてきた。


「雅道さんのおっしゃっていた通りに、出汁をとってみました」


「いただきます」


 俺は、真っ先に汁物を手に取った。


 汁物の中には、魚が1尾が入っていた。


「……どうでしょうか?」


「美味しいです」


「良かったです…………!!」


 安良子さんの顔には、1日目の夜の時のような笑顔が広がっていた。


「私は、戻った時に食べます。雅道さんが食べ終えたら、参りましょう。食器も片付けておきます」


「ありがとうございます」


 俺は、味わいながらも、急いで食べた。


 そして、安良子さんの言葉に甘えて、食器をまとめて入り口の近くに置いておく。


 昨日と同じように、舞子に挨拶に行った。


「……今日もよろしくね」


「承知致しました」


 今日の舞子は、体調がすぐれないのか、あまり元気がなさそうに見えた。


 一応、笑顔ではあるが、隠しきれているかと言われれば、怪しい。


 けど、俺が介入出来るところではない。


「……昨日はどうだった?」


「内宮についてよく分かりました」


「……そう、それは良かったわ」


 やっぱり、様子がおかしい。


 もしかして…………。


「舞子様、人を呼んできましょうか?」


「……大丈夫よ。雅道はここに居てちょうだい。それは他の者に頼むから」


「…………承知致しました」


 本当に大丈夫か?


 でも、たしかに今誰も居ない状態にする方が、危険か…………。


「ああ!!」


「舞子様!?」


 舞子は肘掛けに、完全に身を預けていた。


 けど、それすら無意味な程に床に倒れてしまった。


「「「「舞子様!!」」」」


 部屋に続々と、お世話係の人たちが入ってくる。


 俺には何の知識もない。


 それは、入ってきた人たちも同じようで、慌てている。


 じゃあ、俺が出来ることは…………。


「とにかく、詳しい人たちを呼んできてください!!」


「「「分かりました!!」」」


「雅道、何があった!!」


 巳之助さんが、御簾を乱暴に上げて、入ってきた。


「舞子様が!!」


 その先の情報が言えなかった。


 完全にパニクっている。


「産まれるんだな?」


「はい!!」


「分かった。入り口は任せとけ。今こそ、舞子様をお守りしろ」


「はい!!」


 それでも、巳之助さんは冷静だった。


 やっぱり、頼もしい。


「舞子様、大丈夫ですからね」


 俺は、他の人が来るまで舞子の側に居た。


 というか、それしか出来ない。


「雅道、何やってるの!!男子禁制よ」


「舞子様のお付きの侍司ですよ」


 これで許されるのか、分からない。


 あかんのなら、素直に出ていく。


「そうだったわね。じゃあ、この仕切りからの奥にはいかないこと」


 俺の前に仕切りが立てられた。


 入り口からは、お坊さんらしき人達がひっきりなしに入ってくる。


「巳之助、僧侶以外の男性は止めなさい。それが、基晴様であってもね」


「承知致しました」


 実の父親でも、あかんのか。


 部屋の中は、祈祷の声と舞子の声が入り混じっている。


 さっきの人が来た出入り口から、怒号と慌てる声が聞こえる。


 誰が怒っていて、慌てているのか分からない。


 けど、全て女性の声ということは、分かった。


「うわ!?」


 仕切りの上から、乾燥した米が降ってきた。


 なぜに!?


「舞子!!」


 かと思えば、廊下から男性の声が聞こえてきた。


「待て。今は、僧侶の方以外の男性は入れません」


「私は、己鴨基晴である。通されよ」


「しかし…………」


「舞子の親であるぞ!!」


「基晴様、お止めください!!」


 基晴と巳之助さんが、争っていることが、声から分かった。


「雅道、手伝ってくれ!!」


 部屋の声に負けないほどの大きさで、助けを求められた。


 抑えられる自信はない。


 けど、このまま待っているわけにもいかない。


「「基晴様、お止めください!!」」


 力が強い。


 基晴の元の力なのか…………?


 だとしたら、耐えられない。


「お父様!!」


 すると、奥から俺の就任式で、司会をしていた男性が来た。


「お父様、お止めください!!舞子姉さまは、大変な時です。こんな時に混乱を起こせば、お体に障ってしまいます!!」


 姉さまってことは、舞子の弟なのか?


「治輔(はるすけ)、今だからこそだろ!!」


 それでも、基晴が力を緩める気配はない。


 もうすぐ、御簾の前に来てしまう。


「もし、舞子姉さまがお亡くなりになられたら、どうされるのですか!!」


 治輔は、すごい剣幕で基晴に迫った。


 正直、どっちが親か分からない。


「…………分かったよ」


 ようやく、基晴は力を緩めた。


「雅道、ありがとうな。戻ってくれ」


「分かりました」

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