第17話 緊急事態!!
今日は、早く起きた…………気がする。
今何時かが分からないのが困る。
とりあえず、次の知らせの鐘を待とう。
俺は、さっさと着替えて身支度をする。
今日も何もないといいのだが…………。
「……雅道さん、朝でございます」
「はい」
俺は、ここでの出来事を紙に記すことにした。
昨日、夕飯を食べている時に舞子の使者から、紙の束を渡された。舞子からの贈り物らしい。
ここに来るまでの出来事を昨日の夜から急いで、記していた。
その紙は、制服と同じく厳重に見えないようにしておいた。
「……一昨日、伝え忘れていたのですが、雅道さんが作ってくださったらお食事、大変美味しかっです」
「それは良かったです」
「あの…………私に教えていただけないでしょうか?」
「別に、普通に作っただけですけど…………」
そんなに美味しかったのだろうか?
俺的には普通に作っただけなんやけど…………。
「いえ、特に汁物が大変美味でした。あんな味の深い汁物、食べたことがございません」
出汁をとったからかな?
「あれは魚を一緒に煮込んで、出汁を取ったんです。本来は捨てるところを、勿体ないんで一緒に具材にしましたけどね」
「そうだったんですね。私、そんな方法知らなかったです」
知らなかったのか。
まぁ、ただでさえ食材の量が少ないから、分からんでもない。
毎日、取れなさそうな食材量やし。
「それと、朝のお食事は私に作らせてください」
「分かりました」
そう言うと、安良子さんは食事の準備を始めた。
俺は、廊下でその様子を眺めていた。
「……雅道さん、恥ずかしゅうございます」
「あっ、すみません」
俺はいそいそと、部屋へ戻った。
そして、程なくして食事が運ばれてきた。
「雅道さんのおっしゃっていた通りに、出汁をとってみました」
「いただきます」
俺は、真っ先に汁物を手に取った。
汁物の中には、魚が1尾が入っていた。
「……どうでしょうか?」
「美味しいです」
「良かったです…………!!」
安良子さんの顔には、1日目の夜の時のような笑顔が広がっていた。
「私は、戻った時に食べます。雅道さんが食べ終えたら、参りましょう。食器も片付けておきます」
「ありがとうございます」
俺は、味わいながらも、急いで食べた。
そして、安良子さんの言葉に甘えて、食器をまとめて入り口の近くに置いておく。
昨日と同じように、舞子に挨拶に行った。
「……今日もよろしくね」
「承知致しました」
今日の舞子は、体調がすぐれないのか、あまり元気がなさそうに見えた。
一応、笑顔ではあるが、隠しきれているかと言われれば、怪しい。
けど、俺が介入出来るところではない。
「……昨日はどうだった?」
「内宮についてよく分かりました」
「……そう、それは良かったわ」
やっぱり、様子がおかしい。
もしかして…………。
「舞子様、人を呼んできましょうか?」
「……大丈夫よ。雅道はここに居てちょうだい。それは他の者に頼むから」
「…………承知致しました」
本当に大丈夫か?
でも、たしかに今誰も居ない状態にする方が、危険か…………。
「ああ!!」
「舞子様!?」
舞子は肘掛けに、完全に身を預けていた。
けど、それすら無意味な程に床に倒れてしまった。
「「「「舞子様!!」」」」
部屋に続々と、お世話係の人たちが入ってくる。
俺には何の知識もない。
それは、入ってきた人たちも同じようで、慌てている。
じゃあ、俺が出来ることは…………。
「とにかく、詳しい人たちを呼んできてください!!」
「「「分かりました!!」」」
「雅道、何があった!!」
巳之助さんが、御簾を乱暴に上げて、入ってきた。
「舞子様が!!」
その先の情報が言えなかった。
完全にパニクっている。
「産まれるんだな?」
「はい!!」
「分かった。入り口は任せとけ。今こそ、舞子様をお守りしろ」
「はい!!」
それでも、巳之助さんは冷静だった。
やっぱり、頼もしい。
「舞子様、大丈夫ですからね」
俺は、他の人が来るまで舞子の側に居た。
というか、それしか出来ない。
「雅道、何やってるの!!男子禁制よ」
「舞子様のお付きの侍司ですよ」
これで許されるのか、分からない。
あかんのなら、素直に出ていく。
「そうだったわね。じゃあ、この仕切りからの奥にはいかないこと」
俺の前に仕切りが立てられた。
入り口からは、お坊さんらしき人達がひっきりなしに入ってくる。
「巳之助、僧侶以外の男性は止めなさい。それが、基晴様であってもね」
「承知致しました」
実の父親でも、あかんのか。
部屋の中は、祈祷の声と舞子の声が入り混じっている。
さっきの人が来た出入り口から、怒号と慌てる声が聞こえる。
誰が怒っていて、慌てているのか分からない。
けど、全て女性の声ということは、分かった。
「うわ!?」
仕切りの上から、乾燥した米が降ってきた。
なぜに!?
「舞子!!」
かと思えば、廊下から男性の声が聞こえてきた。
「待て。今は、僧侶の方以外の男性は入れません」
「私は、己鴨基晴である。通されよ」
「しかし…………」
「舞子の親であるぞ!!」
「基晴様、お止めください!!」
基晴と巳之助さんが、争っていることが、声から分かった。
「雅道、手伝ってくれ!!」
部屋の声に負けないほどの大きさで、助けを求められた。
抑えられる自信はない。
けど、このまま待っているわけにもいかない。
「「基晴様、お止めください!!」」
力が強い。
基晴の元の力なのか…………?
だとしたら、耐えられない。
「お父様!!」
すると、奥から俺の就任式で、司会をしていた男性が来た。
「お父様、お止めください!!舞子姉さまは、大変な時です。こんな時に混乱を起こせば、お体に障ってしまいます!!」
姉さまってことは、舞子の弟なのか?
「治輔、今だからこそだろ!!」
それでも、基晴が力を緩める気配はない。
もうすぐ、御簾の前に来てしまう。
「もし、舞子姉さまがお亡くなりになられたら、どうされるのですか!!」
治輔は、すごい剣幕で基晴に迫った。
正直、どっちが親か分からない。
「…………分かったよ」
ようやく、基晴は力を緩めた。
「雅道、ありがとうな。戻ってくれ」
「分かりました」




