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安良子の表と裏-一族の繁栄と政治闘争、その陰で交錯する人々-  作者: 綿ダッコ
第2章〜順応したい〜

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第11話 バッタバタ

 無事に合格した。


 とりあえず、一段落したってことでいいんよな?


 …………いや、しとこう。


 そうじゃないと、心が保たない。


「受かられて安心しました」


「安良子さんのおかげです」


「…………良かったです」


 その後、安良子さんに置いていかれそうになりながら、安良子さんの部屋の前に着いた。


 慣れない服だからだろうか?


「(雅道さんのお荷物は、他の方が居ない間に運ぶので、それまで屏風の後ろに居てください)」


 机の上の紙を見ようとしたが、それを安良子さんに止められて、屏風の後ろに行くよう促された。


 チラッとしか見られなかったが、文字を書いているようには見えなかった。


 じゃあ、なんであの人は何しに来たんや…………?


「(雅道さん、今のうちにお入りください!!)」


「(は、はい…………!!)」


 安良子さんは、必死だった。


 もはや、紙を見る暇もなく、最短距離で自分の部屋に滑り込んだ。


 内装は安良子さんの部屋とほぼ一緒だった。


 唯一違うのは模様ぐらい。


 本来は、女房に与える予定だったのだろうか?


「(…………落ち着かんな)」


 現代での俺の部屋は、壁が白一色だ。


 けど、ここの部屋は違う。


 俺の部屋という実感が湧かない。


 そんな気を紛らわせるように、隅々まで部屋を確認した。


 俺が着ていた制服は、屏風の裏の棚に置かれていた。


 結び目は、俺が結んだ時より硬くなっていた。


 安良子さんが結んでくれたのだろう。


「(雅道さん、これを)」


 部屋を歩き回っていると、安良子さんが何冊かの本を持ってきてくれた。


挿絵(By みてみん)


「(漢詩の本ですか?)」


「(はい、それと漢文の本もございます)」


「(ありがとうございます)」


「(私はその本を読みましたので、雅道さんがお持ちください)」


 安良子さんはそれだけ言って、部屋に戻ってしまった。


 後でお礼を言おう。


 渡された本は、一旦机の上に置いておいた。


 匿ってくれた時に解説してくれた本を読んだ。


 解説してくれたからか、頭に入りやすかった。


 けど、読み終わる頃にはそろそろ出ないといけない時間になっていた。


「雅道之助、行きますよ」


 安良子さんはさっきまでとは違い、鮮やかな十二単を着ていた。


 おしろいも塗り直されていた。 


「(安良子さん、本、ありがとうございます)」


「(何か分からないことがあれば、人目を盗んで、聞きに来てください)」


 人が通らないうちに、お礼を言っておいた。


 もしかしたら、タイミングが無くなるかもしれないからね。


「詳しいことは分かりませんが、おそらく宴が行われます。舞子様は宴を好まれていらっしゃいますので。そこで装備一式を渡されるのでしょう」


「つまり、宴という名の式典ということですか?」


「そういうことになります。舞子様もご懐妊されていますので、お酒が出されることもないでしょう」


 お酒…………そっか、この時代は20歳以上からとかの制限がないのか。


 …………出ないなら、関係ないか。


「雅道之助だな?ここで待ちなさい」


 そこに居たのは、試験の時に居た唯一の男性だった。


 大柄…………とまでは言えないけど、ガタイは良い。


 般若の表情の方がまだ穏やかに感じる。


 足に力が入らない。


「安良子様は、舞子様の元へ」


「は、はい…………!!」


 安良子さんも気圧されているのか、返事が上手くできていない。


「…………なんてな。冗談や」


 安良子さんが部屋の中に入ったあと、その人は急に笑いながら肩を叩いてきた。


 …………怖い。


「ちょっと、脅かしたくてな。俺は巳之助(みのすけ)や」


 まだ思考が追いつかない。


 腰を抜かす途中みたいなポーズで、固まっている。


「役職としては、おまえと同じ私的な侍司や。ただ、部屋の前やけどな」


 ようやく、思考が追いついてきた。


 この人も私的なのか。


 じゃあ、同じような試験を受けたのか…………?


「…………み、巳之助さんも試験を受けられたことがあるのですか?」


「ん?俺は友人の紹介と過去の功績が評価されてな。その話を聞かせてやろうか?」


 実力の持ち主ってことか…………。


 てことは、勝ち目はないな。


 多分、敵に回したら物理的に負ける。


「じゃ、じゃあ——」


「雅道之助、お入りください」


 ちょうど良いところに、来てくれた。


 姿勢を慌てて戻した。


「頑張れ、よ」


 巳之助さんは、背中を押してくれた。


 今のところは、味方だろう。


 …………多分。

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