↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『古典魔法?要らない』とクビにされた俺、自動魔法が止まった王国で“唯一まともに魔法を使える人間”でした  作者: 他力本願寺


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
32/36

第32話 断罪

広場の中央に開かれた巨大な地下への階段。

俺たちがいよいよ中枢へと足を踏み入れようとした時、近衛兵に両脇を抱えられたバルザックが、醜く身をよじって抵抗した。


「離せ! 私は王国の財務大臣だぞ! 国家の予算を効率化し、国益を優先しただけだ! 帳簿の数字を見れば明らかだろう!」


彼の甲高い声が、静まり返った広場に響く。

公開査問とも言えるこの状況で、彼は最後まで自分の行いを正当化しようとしていた。


「予算の還流など、どの派閥もやっていることだ! インフラの保守などという目に見えない無駄な費用を削り、目に見える防衛新事業に投資したことの何が悪い! 私は数字の面から国家を回していたのだ!」


「……数字の面から、ですか」


俺は地下へ向かう足を止め、バルザックを静かに見下ろした。


「あなたは効率という数字にとらわれるあまり、最も重要なことを見落としていた」


「何だと……?」


「教育とインフラの保守は、平時には『無駄』に見えるかもしれない。だが、その本当の価値は、それが『止まってから』初めて分かるものだ」


俺の言葉に、広場に集まっていた市民や難民、職人たちが深く頷く。


「水が出ない。火が点かない。結界が破れる。……その時になって、最新の教材も、派手な防衛事業も、すべてが机上の空論だったと露呈した。あなたが削った『無駄』こそが、この国の基盤そのものだったんです」


「ぐ、うぅ……!」


バルザックは反論できず、歯を食いしばる。


そこに、群衆の中から一人の初老の男が進み出た。

王立魔法学院の学院長オルグレンだった。


「……バルザック殿。我々は、重大な過ちを犯したのだ」


彼は深々と頭を下げ、懺悔するように言葉を絞り出した。


「予算の削減に抗えず、古典詠唱科の廃止を受け入れたのは私だ。基礎を軽んじ、目先の成果ばかりを追い求めた私の怠慢が、この危機を招いた。……ユーリス殿、そして塾の皆よ。本当に申し訳なかった」


学院長の謝罪に、群衆は静まり返った。


フェリシア王女が、凛とした声で最終的な裁定を下す。


「バルザック財務大臣。あなたの罪は、単なる予算の不正流用ではありません。国家のインフラを危機にさらし、人々の思考の機会を奪い取ろうとした大罪です。……よって、今この瞬間をもって一切の公職を剥奪し、資産の全面調査、ならびに関係企業への徹底した監査を実施します。押収した資産はすべて、被害を受けた市民への補填、そして新たな教育制度の設立資金に充てられます」


「そ、そんな……私の築き上げたすべてが……!」


処刑ではない。

だが、権力と金にしがみついてきた彼にとって、それは死以上の社会的抹殺――完全な『断罪』だった。

バルザックはついに崩れ落ち、近衛兵によって広場から引きずり出されていった。


「王国の皆さん、そして他国から集まった皆さん」


フェリシア王女は、広場を見渡して力強く宣言した。


「この危機を乗り越えた暁には、私は王国の教育制度を根本から作り直します。誰もが基礎を学び、自らの足で立てる『新制度』への移行を、ここに誓います!」


広場から、割れんばかりの歓声と拍手が沸き起こった。

それは、旧時代の完全な終焉と、新たな魔法時代の幕開けを象徴する響きだった。


『――不確定要素の排除、および新制度への移行宣言を記録。中枢へのアクセス経路の安定化を完了しました』


アルナが、俺の隣で静かに告げる。


「アルナ。俺たちはこれから中枢へ行き、ゼクスを止める。だが、彼は『製作者の権能』を持っている。お前は彼に操られるかもしれない。……ここで待っていてもいいんだぞ」


俺がそう提案すると、アルナはわずかに首を傾げ、淡く発光する瞳で俺を見つめた。


『否定します。私は《アルカナ》の管理人格であり、同時にエルドラが残した教育の記録層そのものです。……私も、あなた方と共に中枢へ行くことを望みます』


感情を持たないはずのシステムが、自らの『意思』を示した瞬間だった。


「……分かった。一緒に行こう」


俺が微笑んで頷くと、ミリアやガルド、ロイド、セレスティアをはじめとする三十一名の継承者たちも力強く頷き返した。


「行きましょう、先生。私たちの学びが、どれだけの力を持っているか……あの絶望した魔王に教えてやるんです」


ミリアの言葉を合図に、俺たちは大地の底へ口を開けた巨大な階段を、迷うことなく降り始めた。


ゼクスが待つ、システムの中枢へ。

すべての決着をつけるために。


========================================

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。