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『古典魔法?要らない』とクビにされた俺、自動魔法が止まった王国で“唯一まともに魔法を使える人間”でした  作者: 他力本願寺


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第23話 お前たちは、使わせてもらっていただけだ

王国東部、大中継晶がそびえ立つ霊脈の楔。

かつては豊かな魔力を放っていたその巨大な石柱は、今や禍々しい赤黒い光に包まれていた。


俺たち『古典魔法塾』の面々と、護衛として同行を申し出た王女フェリシア、そして数人の王国代表の役人たちが広場に到着すると、そこにはすでに先客がいた。


「よく来たな、思考を取り戻そうと足掻く者たちよ」


中継晶の頂上から静かに舞い降りたのは、黒衣の男――アルカナの共同開発者ゼクスだった。


顔の半分を覆う機械の部品が、赤い義眼と共に不気味に駆動音を立てる。

百年の時を生きるその体からは、ガルドすらも赤子のように思えるほどの、底知れない圧倒的な魔力が漏れ出していた。


「ひぃぃっ……! あ、あれが、魔王……!」


同行していた王国の役人が、そのプレッシャーに耐えきれずに後ずさりし、腰を抜かした。


ゼクスは役人たちを一瞥し、冷ややかな嘲笑を浮かべた。


「相変わらず、無様だな。お前たちが王国の代表か?」


「そ、そうだ! 貴様が《アルカナ》を止めている張本人だな! 今すぐ魔物どもを引かせ、基盤を復旧しろ! 我々は、魔法を正当に管理する権限を持つ――」


役人が震える声で叫んだ瞬間、ゼクスが指先を軽く弾いた。


――ドゴォォォンッ!!


役人たちのすぐ横の地面が、見えない力によってクレーターのように抉れ飛んだ。

悲鳴を上げて地面に這いつくばる役人たちを、ゼクスは見下ろす。


「権限だと? 笑わせるな」


ゼクスの赤い義眼が、残酷な光を放つ。


「お前たちは、魔法を管理してなどいない。仕組みの一つも理解せず、ただ与えられたおもちゃのボタンを押し、『魔法を使っている』と錯覚していただけだ。……お前たちは、私とエルドラが作ったシステムに、魔法を使わせてもらっていただけなのだ」


「あ、ああ……っ」


役人たちは完全に言葉を失い、恐怖で顔を覆った。

それは、彼らが無意識に蓋をしていた事実。人類が魔法という強大な力の上に胡座をかき、自ら牙を抜かれた家畜に成り下がっていたという真実だった。


「その通りです」


俺は、這いつくばる役人たちの前に静かに進み出た。


「彼らは依存し、甘え、考えることをやめた。あなたが絶望した百年と、今の王国は何も変わっていません。……ゼクス殿」


「ほう。お前が、手紙を受け取った教師か」


ゼクスの視線が俺を射抜く。

その圧力に負けじと、ミリアやガルド、ロイドたちも一歩前へ出て俺の背中を守るように立った。


「……なるほど。後ろにいるのは、お前が教え直した生徒たちというわけか。だが、無駄なことだ」


ゼクスは哀れむように首を振った。


「人間は便利さを与えられれば、必ずまた思考を捨てる。エルドラは教育でそれを防げると信じたが、結果はどうだ? 百年後、王国は予算を惜しんで教育を切り捨て、最後の教師であるお前を追放した。これが、人間の本質なのだ」


ゼクスの言葉には、深い悲しみと絶望が裏打ちされていた。

彼もまた、かつては人類の未来を信じていたからこそ、これほどまでに人間を憎んでいるのだ。


「ええ、人間は間違えます。便利さに流され、大切なものを簡単に切り捨てる」


俺は杖を握り直し、ゼクスの赤い瞳を真っ直ぐに見返した。


「ですが、間違えたのなら、もう一度教えればいい。忘れたのなら、思い出させればいい。彼らは今、自分の足で立ち、自分の力で魔法を組み上げようとしています」


「……エルドラの真似事か。滑稽だな」


ゼクスは機械の腕を天高く掲げた。


「言葉でなら、何とでも言える。ならば、その『教育』とやらが、この絶望を覆すほどの力を持っているのか……見せてもらうとしよう」


ゼクスが指を鳴らすと、大中継晶の赤黒い光が激しく明滅を始めた。


「さあ、第一問だ。お前たちの生徒は、この理不尽な暗闇の中で、何を考え、何を守る?」


引き起こされるのは、単純な攻撃ではない。

彼が《アルカナ》の権能を用いて発生させたのは、複合的なインフラの連鎖障害だった。


俺は背後の生徒たちを振り返った。

彼らの瞳には、もう恐怖はない。


俺は無言で杖を握り直した。


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