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選んだお題で千文字ワンライ!  作者: アマチュア小説家同好会
七周目(お題:『ココア』『マフラー』『理想郷』/日付:2018/12/15)
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マフラーの彼女(お題:マフラー/著者:幻影の夜桜)

「……まだ早いな」


 今日は十一月なのにも関わらず、最高気温は九度らしい。たった一桁である。

 もちろん絶賛コート日和。ただ、俺は十二月までコートは着ないと決めていた。

 このマフラーも、同じだ。


「大体な。この時期からマフラーなんてしたら冬の本場に耐えられなくなるだろってんだ」


 別に誰かに言ってるわけじゃない。

 自分に言い聞かせているだけである。

 そう、まだ秋だ。秋にマフラーなんて着けるのが邪道なんだ。





 駅にはコートやマフラーを身につけた人が多く居た。

 くそ、あいつらめ。冬になったらどうするつもりなんだ。

 ……しかし寒いな。


「まったく。女子に至っちゃ脚は出して上はコートにマフラーって何だよ。気が知れないな」


 別に誰かに言ってるわけじゃない。

 実際女子を前にしたらやれオシャレだの、やれ男子もしてみろだの、文句を言うに違いない。


 あの女子高生だってそうだ。生脚は見せるくせにコートを着てマフラーで鼻まで覆って……。


「なんだあの子。あんな子いたっけ」


 白い息を吐いて小さく震えながらとある女子を見ていたら、その可愛さに思わずびっくりした。

 好みドンピシャである。それにマフラーもとても似合っていた。

 もうこの駅を通学に使って二年になるというのに、どうして気付かなかったのだろう。


 そんなことを考えながら思わず見とれていたら、反対側の電車に乗って去ってしまった。





 三月一日。

 マイルールで三月になったらマフラーを付けないという約束がある。春だからだ。


「三月でも着けてるやつはどうせ十一月から着けてるんだ。それみろ」


 別に誰かに言ってるわけじゃない。

 自分に言い聞かせているだけ。


 駅に着くとみんなマフラーをしていた。

 三月とはいえ、今日は寒かった。

 まだ全然冬だった。


 そんなマフラーを着ける人たちを、俺は一人一人見ていった。


 ……居ないな。今日は居ない日か。


 あの女の子を探したが、今日は居ない日らしい。諦めようとすると、ドンと誰かとぶつかった。

 ごめんなさいと頭を下げた女子高生は、件の彼女だった。


 いいよ、と俺の声を聞いた彼女はハッと顔を上げた。やっぱりマフラーをしていて、とても似合っている。


「あ、やっぱり冬しかマフラー着けないんだ」


 多分思わずこぼれた独り言だったんだと思う。

 でも俺は反応してしまった。


「ああ……やっぱり目立ってた?」


 女の子は俺の返事を聞いて口を押さえた。相手に聞こえるほどにこぼれたことに今気付いたらしい。


「あ、ごめんなさい……えっと、すごく寒そうにしてたから……でも、冬しか着けなかったから。そんなルールあるのかな、って考えちゃって……」


 あわわ、と答えた彼女は可愛かった。


「でもすごいなって。私冬に弱くて、すぐ厚着しちゃうし、朝は寝坊しちゃうし。それで冬は遅くなりがちで。……だから、すごいな、って覚えちゃって」


 ……なるほど。冬まで見なかったのはそのせいか。


「今日も寒いもんね」


「は、はい……! あ……電車来たので、失礼します! ……耐寒頑張ってください!」


 そう言った彼女はとてててと走っていった。



 もうちょっと寒い日が続けばいいな。

 あの子がもう少し寝坊するように。

 あの子がマフラーを着けるように。

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