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選んだお題で千文字ワンライ!  作者: アマチュア小説家同好会
八周目(お題:『薬』『落し物』『綱渡り』/日付:2018/12/22)
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おやすみ。(お題:薬/著者:幻影の夜桜)

 今日も、何もしないまま日が暮れてしまった。

 生命維持に必要なこと以外は何もしていない。


 ああ、いつからこんな生活になってしまったか。

 ……そもそも時間の概念がないぼくに「いつ」なんて言葉は使いようもないけれど。


 まず今日が何月何日かすら分からないんだ。

 外の景色すら忘れてしまった。

 ぼくが知ってるのは、綺麗なぼくの部屋の景色だけ。



 さて、今日こそ布団から出ようと思って何日経っただろう。

 でももう夜になってしまった。

 夜だから寝なければいけない。


 ぼくは布団から手を伸ばし、半分くらい水の入ったペットボトルと、二粒の錠剤を手に取る。


 これを飲めばぼくの一日は終わる。

 そしてまた明日が始まる。

 明日こそは、布団から出よう。

 明日こそは、何かをしよう。

 明日こそは、何かを変えよう。




 ……。


 …………。


 ………………。




 ……変わる?

 明日になったら、何か変わる?


 何が変わる?

 どうやって変わる?

 なんで、『明日に変わる?』


 じゃあ今日と明日の違いって何なんだろう。




 ……違い、ないよね。


 じゃあ……きっと、明日もこうして過ごすのかな。


 明後日も、こうして過ごすのかな。




 ぼくの手の中で、錠剤が少しずつ柔らかくなっていく。

 ぼくの体温で、錠剤が少しずつ溶けていく。




 今手の中にある錠剤を飲めば……ぼくの今日は終わる。

 次に目が覚めたらぼくの明日が始まっている。

 でもそれは、明日であって今日でもある。


 きっと明日のぼくは、またずっと布団にこもって時間を浪費する。

 そして多分、またこの錠剤を飲んで明日を終わらせて、明後日を呼ぶ。

 今日と明日と変わらない、明後日を。




 ……ああ、なんだ。そういうことだったのか。

 そりゃ、いつまでたっても変われないわけだ。




 ふふ、なんだか馬鹿らしくなってきちゃったな。

 ぼくは今まで何をしていたんだろう。

『明日になったら変われる』なんて、どうして思ってしまったんだろう。


 ああ、でももういいや。

 とにかく、ぼくは変われない。

 今日変われないぼくは、明日も変わらない。

 今日布団から出ないぼくは、明日も出られない。

 今日何もできなかったぼくは、明日も何もできない。




 ぼくは溶けかけた錠剤がくっついた手をティッシュで拭いた。


 思い切って布団を蹴った。

 少し寒かったけど、関係ない。

 ぼくはそのまま起き上がった。いつぶりだろう。

 そして机の前に座った。備え付けられた引き出しを引いた。

 その中から一つの小瓶を出してその栓を開けた。


 おはよう。




 おやすみ。

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