全員集合は夜会の後に
沈黙の中、いきなりドアが開く音がしたと思ったら、視界が揺れた。
敵か?
体を固め、戦闘体制をとる
しかしすぐにそれをやめた。
持ち上げた犯人は我らが軍部の一員、亦凡さんだったからだ。
亦凡さんは軽々と片手ずつで俺たちのことを持ち上げ、傍に抱えている。
「ちょっと、ゆでダコさん。
もう歳なんだから腰ボキッと言っちゃうよ?」
「儂はまだまだ現役だ!
それに、ニア!またゆでダコって言ったな!?」
「だって怒るとすぐ顔真っ赤になるんだもん。
ハゲだし。名前書くの難しいし。」
「名前書くのが難しいのはその理由にならないだろ!カタカナでイーファンって書け、これだから最近の若者は。」
「亦凡さん、主語がいつも通り大きいです。」
にしても、確実に怒ってるよなぁ、亦凡さん。まぁ、怒ってる理由はわかるんだけど。
「じゃない、儂は怒ってるんだ。」
ほらやっぱり。
「お前らまた人殺ししやがって、儂がちょっと目を離している隙に、モーガンめ。」
俺は転がってる死体に目をやる。
ニアが殺したのに関しては、もう原型を留めていない。
まぁ、あいつの能力爆発系だしな。
「お言葉ですが、亦凡さん、俺たちは宿主として軍部に所属しているんです。戦わないことはできませんよ。」
「ここは未成年がいていい場所じゃないんだよ、ノア。」
亦凡さんが俺のことをギロリと睨む。
200センチメートルの威圧感はやっぱり半端ないな。
「いいか、子供は大人に守られて勉強してればいいん だ。子供が安心して過ごせる世界。それが儂のなか で一番重要なんだよ。」
俺が言い返そうと口を開いたとき、また扉の開く音がした。
「まったく、君たちはいつも元気だねぇ。」
この穏やかな声はモニカさんだ。
こちらに向かってくるたびに、モニカさんの金色の三つ編みが大きく揺れる。
「今日も反抗期かい?ノアくん、ニアちゃん。」
「だってゆでダコさんが今日もゆでダコさんしてるんだもん。」
「ゆでダコさんねぇ、プププ。
ところで君たち、このスパイのどちらかは能力者らしいよ。すぐに処理しないと。」
「え!?あんなに弱かったのに!?」
ニアが大袈裟に驚く。
隣で亦凡さんが何か言いたそうにしているのは無視しておこう。そりゃプププなんて笑われたらな。
「あはは、そりゃあ、君たちに勝てる人はそうそういないよ。『厄災のダブルデーモン』たちにはさ。」
「やっぱ思うんだけどさ、その名前めちゃくちゃダサくない?」
「久しぶりに俺もお前の意見に同感だよ。
で、本当に早く処理しないとですよ。」
そうだね、とモニカさんが頷いたとき、部屋の空気が変わった。
右目にかかる眼帯、顔の大きな火傷跡、軍服から覗く傷跡。
それらが彼、総司令官、モーガンが進んできた道のりを表している。
こつんこつんと、総司令官の足音だけが響く。
彼はゆっくりと口を開いた。
「むかしむかしー。」




