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出来損ないのノア  作者: きなこ
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夜会

ー祖国のために。

私はずっとそうやって生きてきた。

神から力を与えられた『宿主』として。

その意思は今日も変わらない。一つ手を間違えれば死ぬかもしれないスパイとして敵国、エイドラ連合国に潜入している。

手に持ったカクテルを一口、口に含み、情報を整理する。

今私は、エイドラ連合国の夜会パーティーに参加している。ここには大者ばかりが集まっている。

あそこには、大企業の社長が、あそこにはマフィアの親分がー。

その中にはエイドラ連合国の宿主もいる。

一番前にゆったりと座っているのは、エイドラ連合国の総司令官、モーニン・キャロウェイだ。

私の目的は、このパーティーで宿主に接触した親しくなることだ。そして徐々に情報を抜く。

一番好ましいのは、今日ここで彼と話せることだ。

ー思えば懐かしいものだ。多くの一般人がぶつかり合って戦争をしていた時代が。

そんな戦争は、神が現れ、この世の人間から人間を罪に導く『七つの業因』、傲慢、強欲、色欲、嫉妬、暴食、憤怒、怠惰の感情を取り除いたことで終幕を迎えた。

今は、神から力を与えられた宿主のみが争う。

それには強さだけではない、情報が必要だ。

するとバッっと電気が消えた。

、、、何だ?

スポットライトが光り、座っているモーニンだけが照らされた。

「皆さま、今日はお忙しい中、このパーティーにお越 しくださり、誠にありがとうございます。

 それでは誠に勝手ながら、余興を行わせていただき たいと思います。

 それではー、」

パチっとと指が鳴らされた。

「It’s a show time!」

手首に違和感。その瞬間、動けなくなった。

指一本動かない。金縛りにあったようだ。

視界の端に自分の手首が見えた。

銀色に輝く手錠がかかった手首を。

「七つの業因が七番目、怠惰。

 俺の能力は、『世界を惰する』。」

抑揚のない、無機質な声。だがそれが少年の特有の声の高さなことはわかった。

声の持ち主が俺の視界に入ってきた。

銀色の髪、真っ赤な目、黒い軍服、手に持つ、鎖で繋がった2つの鎌、自らの手にもかかった手錠。

何で、何でこの私が、「『未成年の子供になんか負けるんだ。』だろう?」

少年が薄い唇を動かした。

本能的な恐怖が襲う。

「それはあんたが弱いから。」


バシュッと音がして血が飛び散る。

目の前の女から手錠を外し、自分の手首に付け直すと、女はゆっくりと倒れた。

周りから悲鳴が聞こえる。

あーあ、めんどくせぇな、一般人の前で人殺すの。

息をしていないことを確認しようとすると、女の口がかすかに動いてることに気がついた。

耳を寄せる。

「、、、未成年の君が、人を殺すなんて、間違ってい る。」

、、、ときどきいるんだよな、こういうおせっかい。

俺は鎌を持ち直し、とどめを刺そうと振り下ろした。

するとドーンッと爆発音が響く。

それに合わせた悲鳴も。

うげ、と思わず声に出た。

アイツ、ほんとに何やってんだ。

「ノアー!!!!!」

、、、今一番声を聞きたくない相手から名前を呼ばれた。声の方向を見ると、ダダダダダ、と音がするようにそいつ、ニアが黒髪を揺らし、コチラに走ってくる。

「ノア!見た!?今のあたしの能力!

 今日めちゃくちゃ調子いいかも!」

「そんなに満面の笑みで言うな、バカ。

 建物に被害が及ばないようにって言われてただろう が。」

「あー!!バカって言った!

 バカって言った人はカバと結婚するんですよー   だ。」

「ガキかよ。」

「16歳はガキです。」

はぁ、とため息をつくと、総司令官の声が聞こえてきた。

「皆さま、お楽しみいただけたでしょうか、今絶命した合計2名の方々は全て敵国のスパイとなっております。このようなスパイがいなくなるよう、エイドラ連合国軍部として誠心誠意励みたいと思っております。

また、それについての皆さまへのご協力を仰ぎたいため、お話を改めてしたく存じます。それでは、コチラの部屋へどうぞ。」

悲鳴はすでに収まっている。

まぁ、第一線を駆け抜ける人たちしか集まってないからな、肝も据わってるか。

10分ほどかけて移動が完了すると、そこには2人の死体と、俺とニアが残された。

すると、いきなりニアが服を脱ぎ始めた。

「おい、何してんだよ、バカ。」

「血がついちゃったから脱ごうと思って。

 ホラ、ノアもついてるから脱ぎなよ。」

「お前、恥じらいを持て、恥じらいを。」

「おっと、思春期ですか、ノアくん。

 いいじゃん、あたし達双子なんだから。」

こいつなら公共の場でもやりそうなんだよなぁ。

それにー。

「その体、お前が自由に使えると思ってんなよ。」

ニアは動きを止めた。

そしてゆっくりとコチラを見る。

「キャハ、ノアから『あの子』のこと持ち出すなんて めずらしーね。」

ニアは耳障りにキャハキャハ笑い続ける。

赤い目をじっとりと細めながら。

俺はニアから目を逸らして、このあと会議だぞ、と呟いた。

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