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最強クラフトで異次元無双  作者: 御自賛
18/22

その17

次の日の朝食後、工房にマニとライエと3人で入り浸っている。マニの銃を打合せしながら作る為だ。


ライエは、工房を見て驚いている。


「わああ、おっきいお部屋!」


「工房って言うんだよ。ここで色々な物を作るんだ。」


「色々な?」


「見ててごらん、これからマニの銃を作るから。」


「うん、わかった!」


早速マニと打合せに入る。


「それで、どういう風に使いたいのかな?」


「マデュレとサヴィネの銃を見ていて思ったのだけど、どうせ遠近両用なのだからプルとは違ったスタイルで攻めてみたいわ。」


「と言うことは、プルと同じタイプで形の違うやつとか?」


「そう、それよ!銃の先に、サヴィネのタイプと同じ剣がついているのが良いわ。」


つまり、銃剣付き拳銃と言う訳か。確かに弾丸は近接時なら節約できるか...。


「わかった、取り敢えず作ってみよう。サット、オペレーター頼む。」


「了解。」


短く答え、俺のアイディアを読み取って作業に入る。


「分子プリンティング開始。」


5m立方体の透明なオブジェが空中に出現する。サットはオペレーターモードに入る。


「素材分子充填。分子プリンティング開始...終了。精密形成開始...終了。魔導回路プリンティング開始...終了。強化コーティング開始...終了。」


チーッ!チーッ!とプリントの音が響く。ライエは口をポカンと開けたまま目を釘付けにして見ている。


「お口からヨダレがたれそうだよ。(笑)」


ハッ!と気付き口をムニュムニュして閉じ、こちらにベロを出しながらエヘヘって笑う。可愛い。


銃は5分位で仕上がった。盾付きは好みではないのだろうから、ドラムマガジンが不可で装弾数が少なくなってしまう。


その代わり、銃身をロングバレルにして近接攻撃を受けやすい形にした。そして刃渡り15cmの片刃の銃剣が先端に付いている。


装弾方式はライフルと同じにして、ここぞと言うときに射撃するスタイルでまとめてみた。勿論リアクター付きで、マナシールド完備だ。


「奥様、こんな感じですが如何致しますか?」


「もうっ!マサったら...」


マニは口を尖らせながら新品を手に取り、握りや機能を確かめながら両手で銃剣を振り回して試した。


「後でサヴィネを呼んで、射撃場で練習してくるわ。ありがとうマサ、愛してる。」


「お役にたてていたら幸いです。」


ライエはマニの真似をして、両腕をブンブン振り回しながら飛び回っている。元気だなあ。


さて、一休みしたら銃座の方へ行かないと。3人でお茶をして、ライエを子供の家に送っていった。


その後、マニはサヴィネの家に行ってしまった。俺は銃座を設置しに、ドームの真下に向かった。




ドーム真下へ来ている。銃座の設置をするのはドームの上なので、この位置から階段で登れるようにしなければ。


村長とアズ様とマデュレは、現地集合の手筈になっている。彼等が来る前に出来る作業をやってしまおう。


まずドームの中心から一番近い壁に、螺旋階段を設置した。周囲の邪魔にならないように、コンパクトかつ機能的な構造に。


そして高さ5m位で橋上通路をドームから吊り下げる方式で作り、その先を円筒状の構造物へ繋げる。特にハッチ等は作らずに、構造物横から自由に出入りできる。


円筒内部は二人まで入れるスペースにし、中央に金属のポールが屋根まで突き出ていて、硬化セラミックの円錐形の傘が付いている。


そして傘と円筒形の防護壁の間を20cm位隙間を空けた。この隙間から村の外側が全方位で見渡せる。結構絶景かな。(笑)


「しかし、見事なものだな。マサよ、お前は絵を筆で書くが如く建築するのだな。」


後ろを向くと、全員が揃って見学していた。何時からそこに?(笑)


「驚きました、親父様。一言声をかけて下されば良かったのに。」


「いや、お前が夢中になっているのを邪魔したくなかったのだよ。許しておくれ。」


「いえいえ、こちらこそ気付かずに申し訳ない。アズ様もマデュレも勘弁してほしい。」


よく見ると、マニとサヴィネも一緒だ。どうやらマデュレに誘われたのだな。アズ様は子供みたいに目をキラキラさせている。


「マサさんの技能は、近くで見ていても全く原理が解りませんね。光の粒子が形を成している風に見えるけど。」


「アズ様、すみません。掟で秘密は明かせないんです。」


「ごめんなさい。研究者の癖が出てしまったわね。」


「お気になさらず。作業自体は見学して頂いて結構なので。」


マデュレと村長で、使い勝手や設置が適切かを確認してもらった。


「マデュレ、銃を貸して。この円筒形の中に入って、この隙間からこう構えるんだ。それで、ポールのここに腰掛けられる。」


「ああ、これが覗き穴なのですね。万が一蟲が襲ってきても、大丈夫そうです。そして構えながら座れるのですね。この腰掛けの高さが絶妙ですね!」


「凄いわね、こんな景色が村から展望出来るなんて。新鮮だわ。」


サヴィネがマニと周囲を展望台代わりにして眺めている。村長とアズ様は、設置箇所や通路などの構造に問題がないか調べている。


「うーむ、完璧に見えるな。素晴らしい!」


村長は、銃座の内部に入って確かめている。


「マサや、この壁は厚みが足りないのではないかね?針を飛ばしてくる連中は20cm位なら軽く貫通させてしまうぞ。」


「親父様、大丈夫です。ここからでは見辛いので、こちらへ。」


傘の内側に付いている金具を回すと、ハッチが空いて傘の上によじ登れる。俺はレイスモード、村長はエアフロウで飛んで、銃座の外壁を確認した。


「この、白くて薄い板が強度を出しているのかね?」


「はい、硬化セラミックと言います。サンドテクタイトの十数倍の硬度を有していますが、弾性に優れてもいます。マニ、こっちへ銃を持って来れるかな?」


マニが新品を持って飛んできた。


「銃座の壁に向かって、撃ってみて。」


「分かったわ。いくわよ!」


パパーン!2発をほぼ同時発射で、同じ箇所へ正確に当ててきた。外壁は少し傷がついた程度で、びくともしなかった。


「確か、この前の射撃練習の時は20cmの的を貫通していたな。見た目よりもかなりの強度があるんだね。」


「貫通力は、35口径を使用してますからマデュレの物より高いです。先端の鋭い針でも弾道がぶれていたり回転している物では、恐らく貫通しないでしょう。刺さったとしても勢いを削がれていますから、サンドテクタイトの層で食い止められます。」


「なるほど。これなら安心かな。見張り台代わりになるだろうし、有能な機能が増えたのはありがたい事だよ。」


「後は実際襲撃されてみてから問題の洗い出しですかね。マデュレや見張りの人には申し訳ないけど。」


「いやいや、実際問題は戦闘でしか確認できないからね。お前はよくやってくれたと思う。」


「親父様にそう言って貰えると、俺は嬉しいです。何か気付いた事があったら、すぐに飛んできますので。」


村長は満足そうに上空からの眺めを楽しんでいた。アズ様もハッチから飛んできて、マニと四人で昼過ぎの村の上空に並んだ。


何だか見た目が教会やモスクの様になってしまったなと俺は思った。その後、マニとサヴィネは射撃場に行ってしまった。アズ様は何かメッセージを受信したらしく、同じく教練宿泊所へ帰った。


村長に誘われて、俺は実家へ昼飯をご馳走して貰いに行った。相変わらずマルタの料理は最高だった。




ライエは、まだ俺たちの事をパパとかママとか呼ぶ気が無いらしい。彼女の不幸は、物心ついてから両親が死んだことだ。


元々ハンターだったらしく、村の外で狩りをしていて何らかの事故に遭ったようだ。本人達の装備品は見つかったが、死体は見つかっていない。それが2年前だとメリパダが教えてくれた。


だから、俺やマニを敬ってくれてはいても両親とは思えないと言うところが本音なのだろう。いつもお泊まりに来ても、年の違った姉弟のように接している。


そして俺達も当然だが無理強いはしない。そう言う関係が続いている。たまに家で一人考え事をしていると、それがフッと浮かんでくる。


久々の個人の時間だし楽しみたいのだが、そんなアイディアがふと頭をよぎった。不器用なもので、こういう感情をポジティブにコントロールする訓練だと思わないとな。前妻の件もだが。


考えても仕方ないことは置いといて、大規模殲滅の事を考えよう。すべてはそこから始まるのだから。現地用の仮置倉庫兼避難所の設定を考えることにした。


収容人数が百人規模だという事と、仮置きする素材が大量だという事で、大型のビルを建築するニュアンスになる。階数も最低3階まで作る予定だ。上の階は倉庫、下は避難所兼治療室と行こうかな。


倉庫は、各必要材料を貯めておける大型の容器を大量に用意しないと。種類別に色分けして、それぞれが1容器当たり1トン程度の容量にする予定だ。


すべての素材は粉状にして、なるべく大量収納できるようにする。工房で使う素材は、直接工房内の貯蔵庫に入れる様にした。


村に役立つ素材は、倉庫に仮置きして俺が村まで何往復かして、輸送する羽目になるだろう。通常の量では無いからな。


うーん、そうすると相当な規模の建築になる。精密加工ではないので工房は使わないだけましだな。少なく見積もっても100m四方になるんだろうな。先に出向いて作っておかないとね。


つらつらとそんな事を考えていて、ふと気づいたらもう夕方になっていた。そろそろマニが帰って来るかな。夕飯でも作っておくかな...。



ここ2日程、プルの姿が見えない。銃を受け取ってから、何処かへ行ってしまったらしい。守衛のハンコックの話だと、一昨日ゲートを抜けて砂漠へ走っていったらしい。


もしかするとナルキスを迎えに行ったのかも。メッセージを入れたら、放っておけと返信が返ってきた。ま、あいつの事だから大丈夫か。


アズ様は、相変わらず食事をうちに食べに来る。プルと違って、ちゃんと食材やドリンクを買って来てくれるので、助かる。弟子の家なのに、律儀な人だなあと感心した。


そう言う訳で、今日もアズ様と庭で昼食をしていると、通り向こうから誰かがこちらに向かってくる。一人はプルで、もう一人はローブのような外套を着た長身の人だ。暑くないのだろうか?(笑)


「おいマニ、椅子を二つ用意してくれ。」


奥に向かって声をかける。マニが椅子を持ってくると同時に、二人が庭に入ってきた。アズ様はちょっと驚いた様子で、立ち上がった。


「ナルキス、連絡をしろと言ったのに何故無視するの?」


「...これ。」


フードの女性は想像通りナルキスらしい。外見は黒長髪のエルフと言う感じだ。


前髪は左右に自然に分けられていて、顔が小さく、色白で超絶美形だ。身長が170cm以上はあり、マニより少し大きい感じ。何より尖った小さい耳が特徴的だ。


ローブは日焼け止めなのか分からないが、フードを目深に被ったまま会話している。アズ様に何かを突き出した。小さい黒色の虫の死骸の様だ。


「ああ、撹乱虫か...」


アズ様は一目で納得した様だ。後で聞いたら、フェロモンの材料になるが精霊の力を阻害する羽音を出す虫らしい。ナルキスはマニを見るや、小走りで抱きついた。


「...マニ。」


しっかりと抱きついているナルキスを、マニは懐かしそうに優しくハグした。頭をなでなでしている。まるで妹みたいだな。プルとは全然対応が違うぞ。(笑)


当のプルは、既に椅子に座って食事待ちのようだ。こいつ人の家に食べる目的で来てるんだろう?マニの方を物欲しそうに見ている。(笑)


仕方がないので俺がキッチンから食事を二人分運んだ。今日は食物繊維で加工したサラダと、味噌汁、ひよこ豆と鶏肉風タンパクのカレーライスだ。


ライスはアズ様に紹介してもらって教練場から分けてもらった。前次元の物よりパサついているが、油や汁物とは相性が良い。


カレー粉は自作だ。例によって虫の粉で作ってみた。中々コクがあって旨い。


ナルキスは結構長い間マニと抱き合っていたが、促されてアズ様の隣に座った。ふと横を見るとプルがもうカレーをがっついていた。(笑)


「マサさん、この子がナルキスです。ちょっと言葉が足らないのは癖なので勘弁してあげてね。悪気はないの。」


アズ様がフォローを入れる。ナルキスは俺の目を直視すると、ポツリと発言した。


「...誰?」


「ナル、この人は私の旦那様よ。本名はマサと言うんだけど、公にはクラフターと呼んでね。」


「分かった。」


「ナルキスさん、こんにちは。マサと言います。本名を知っているのはここの面子とマニの家族だけなので、公ではどうか内密に。」


「何故?」


「私が異世界出身で、君たちで言う真祖だからだね。マニはある方法で私と同じ寿命になった。輸血とかではないのだが、私の事も含めて掟で秘密にしなければならないのだよ。」


ナルキスの目が大きく見開かれた。相当驚いているようだ。あまり表情を出さない性格のようだし。


「...長寿化?」


「いいえ。この方は隠れた真祖なので、最初からの寿命ね。長寿化は後天的な能力を指すので。」


アズ様がナルキスに説明してくれた。彼女は頭を傾げてから、


「真祖様?偉い人?」


と呟くように言った。メチャクチャ可愛いのに、コミュニケーション能力が壊滅的に残念だな。(笑)


「偉いかどうかは君が決めていいよ。とにかくそう言う状態なので、長くお付き合いすることになるかも。これから宜しくお願いします。」


ナルキスはローブを脱いで小さく頷いた。腰まで伸びた黒髪がそよ風にたなびいて、フードで見えなかった宝石入りの銀の髪止めが、夜明けの金星の如く煌めいて見える。


瞳はターコイズで、ライトブルーの輝きが黒髪とのコントラストを際立たせている。前次元なら、誰でも振り向かせる容姿だ。珍しく公家が着るようなゆったりとした和服風を着ている。


人形みたいで、生物にしか出せない艶やかさと清潔感のある香りが、周囲を彩りのある風景に変貌させる。これだけ恵まれた容姿にして、天は二物を与えないという典型だなと俺は思った。


目の前に出されたカレーを、ナルキスは顔を近付けて観察している。匂いを嗅いで、スプーンを手に取り、真向かいで無言でがっついているプルをちらと見ながら口に運ぶ。


きれいな目元がほころび、表情も美味しそうに食べ始めた。表情が言葉より雄弁なタイプ。騙し合いは無理だな。


「...おいしい。」


「食事の感想なんて珍しい。ナル、それマサが作ったのよ。」


マニがフォローした。料理上手な旦那自慢かあ?カレーなんて誰でも旨く出来るし。


ナルキスは俺に向かってニッコリ笑うとグッと親指を立てた。結構面白い奴だ。(笑)


「この子ねえ、このままなら良い子なんだけど...」


アズ様がため息をついた。まあ、何か前から聞いていますので把握してます。(笑)


それにしても結構辛めなのに、よく食べるな。プルなんて到着してから一言も喋ってないぞ。(笑)


「ふおううううう、食ったにゃあ。2日ほど何も食べてなかったんにゃあ。旨かったにゃあ。」


...凄い腹が出ているなプルよ。ゲップして椅子に背もたれている。マニが無言で頭をペンペンした。お行儀が悪いのが許せないらしい。


俺やアズ様やマニは食べ終わってお茶を飲んでいた。ナルキスもお茶を飲んで、美味しかったのか頷いている。プルは昇天しかけている。(笑)


俺はプルの出っ張った腹を擦りながら(笑)、ナルキスに質問した。


「ナルキスさんは、フェロモン使いとか伺いましたが。」


彼女は頷いた。俺は続けてプルの腹を擦りながら、太鼓の様にポコポコ音をたてた。既にプルの意識はなかった。(笑)


「虫の殲滅の時に、一時的にでも注意を引き付けておくことは出来ますか?」


「大丈夫。」


「どれくらいの時間引き付けられますか?」


「ナルでいい。敬語いらない。」


ナルはちょっと考えて、短く答えた。


「ん、2日。」


マニとアズ様が、顔を見合わせた。


「ナル、すごく長くなってない?前は30分程度だったじゃない?」


マニが質問すると、ナルはんーっと唸って、


「頑張った。」


と答えた。何て言うか...(笑)


「それじゃあお言葉に甘えて、ナルは他にも魔法は使えるのかな?」


「爆発。」


「へえー、どれくらい吹き飛ばせるのかな?」


「いっぱい。」


ダメだこりゃ。子供の会話だな。(笑)


「通常エクスプロージョンは、この家くらいなら簡単に破壊できる。後はマナ次第ね。」


アズ様が苦笑いしながら説明してくれた。ナルは旨そうにお茶をすすっている。


「と言うことは、生物をフェロモンで寄せて爆破するんだよね?スゲエ効率的だなあ。」


「む。」


こちらを向いてニッとナルが笑った。マニが呆れたようにそれを見ている。


「何かおかしいかな?」


「いえいえ、あなたは全然。ナルはこんなに笑ったりしないのよ。まともにコミュニケーション出来てるし。」


ええ...これでかよ。普段の無反応ぶりが痛々しそうだなこいつ。


「マサさん、ナルはね、気に入った相手にしかこういう風にはならないのよ。嫌われなくて良かったわ。」


アズ様、嫌われていたらどうなっていたんでしょうか?(笑) ちょっと恐い...。


マニが複雑な顔をしている。後でフォローしとかんとなあ。ナルは満足したのか、立ち上がるとポケットから小包を取り出した。


「...お祝い。」


「え?私たちに?」


マニが驚いて聞き返した。ナルは頷いた。


「ナル、ありがとう。なんだ、知っていたのね。」


「ん、聞いた。」


アズ様を見てからそう答えた。メッセージで聞いていたらしい。


「開けてもいい?」


ナルはこっくり頷く。開けると、ナルの髪止めと同じ、ダイヤモンドの様な輝石の原石だ。5cm位はある。


しかしよく見てみると、削ぎ落とさなくてはならない部分は表面だけらしい。


「これは人工物だね。こんな原石は存在しない。」


サットが割り込んできた。


「それもかなりの時間がかかってる。結晶が高密度に結合しているので硬度もそれなりだ。10年弱位はかかったのでは?」


「ありがとう、さすがだな。」


こういうシーンに割り込んでくるとか珍しい。もっぱら霊的進化がらみなんだけどな。


「ナル、これ作るのに何年かかった?」


「!」


ナルは驚いた。マニも驚いている。アズ様はやっぱりねと言う顔をした。


「まあ、あなたの事で驚いていたら、きりがないわね。そうよ、まだ公にして無いのだけど、ナルの研究の集大成のひとつよ。」


「これは魔石ですか?しかし全く色がない。」


通常魔石は僅かに色がついている。強力な生物ほど濃い色になる傾向がある。


「魔石を一度、秘法でエネルギー体に融解させる事ができるのよ。だから貴方がリアクターの巨大な魔石を見せてくれたときには、正直秘密が漏れたかと思ってね。」


アズ様が、ふうとため息をついた。秘法というのが分子分解を指すのかは判らない。しかし、同じような技術が生まれつつあるのかも知れない。


「巨大?」


ナルがアズ様に振り向いた。まあ研究対象だろうからな。


「今度紹介するよ。実は銃の中にも小型のが入っているんだな。」


「銃?」


「これにゃあ。」


突然ガバッとプルが起きて、腰の銃盾を外して渡した。お前聞いてたのかよ...ナルは手にとって色々な角度から眺めている。


「ナルが早く着いたので、フェロモンの効果を大規模殲滅前に見ることが出来るな。一緒に狩りに来てみるかい?」


「...危ない」


「ナル、旦那様に任せておけば大丈夫。」


「マサさんの鉄壁のディフェンスがあるから大丈夫だよ。」


アズ様とマニから太鼓判を押されてちょっと嬉しい。ナルは二人の顔を見比べて、頷いた。


「さっき虫の巣の中央でナルを見つけたから、ついでにマナシールドを試したにゃ。完璧だったにゃ。」


「ああ、虫の巣に居たんだ...」


流石に呆れた。ナルは隠密もレベルが高いのか?


「気を引く。」


ナルが俺の表情を見て答えた。いや、メッセージかな?


「ああ、フェロモンってそう言う使い方が出来るのかあ。凄いな。」


「うん。」


ナルは微笑している。理解されることが嬉しいのだろうか?


ん?と言うことは...。


「プル、どうやってナルをここまで連れてきたんだ?虫の気を逸らしたのかな?」


「違うにゃあ、あいつは夢中になると何も聞こえないんにゃ。だから襟首掴んで走り抜けたにゃあ。」


おいおい、乱暴だなあ。と言うかコイツのスピードで引きずられて、よく大丈夫だったな。


「快適。」


ナルがプルの頭をなでなでして誉めている。案外認め合っているらしい。プルの加速は、フィールド式なのか?自分と接触している人も同様に加速するのか?


そもそも女性とはいえ、それなりに身長があるのでコイツを引き摺って?行くのは骨が折れるだろうな。


アズ様はコホンと咳払いすると、マニに気を効かせてくれた。


「射撃場でプルの銃の試し撃ちを見学しましょう。ナル、興味あるでしょ?」


「うん。」


4人は立ち上がった。俺はこのタイミングでマニをキッチンに引き込んだ。フィジカルコンタクトする。


「マニ、俺に何か言いたいことでも?」


「ん、そう言う事ではないのよ。あなたはこうすればお互い解るじゃない。」


「んー、ひょっとしてナルの押しが強いとか?」


「平たく言うとそうね。あの子、自分が気に入ると既婚者でも関係ないのよ。誰でもと言うわけではないんだけどね。」


「うーん、俺の対応、不味かったかな?」


「いえ、普通だったわ。寧ろプルの時の方がやきもきしたわ。まああの子とあなたは本当に友人としか思ってないみたいだけど。」


「まあ、こうやっていれば分かるよな。あっちはよくわからんけど、プルの性格ならああいう態度は普通だと思うけどな。」


「そうそう。そっちは寧ろナルの方がね。マイペースと言うか。」


「自分の欲望に勝てない奴なの?」


「んー、場合によるけどね。研究や恋愛なら、掛け値なしの本気なのよ。あなた、目をつけられているわね。」


「俺が何をしたと...」


「そうよねえ...彼女の性格上、これはもう仕方がないのよ。嫌われる方が被害が大きいから。私も腹を決めないとね。」


「え?腹って...」


「最悪ねじ込まれるわね。あなたがねじ込む羽目になるかもだけど。」


「あっはっは、まじか。そんな強引な方法は趣味でないなあ。」


「やだー嘘つき。(棒)」


「お前!(笑)」


「この世界は一夫多妻が認められているのよね。夫にちゃんと経済的に養える実力があれば、一番割に合わないのが第一夫人ね。」


「俺、マニだけで充分だよ...。」


「嬉しい。あなたのその気持ちだけで幸せよ。でもね、あなたがどういう理由にしろナルを迎えることになったら、ちゃんと愛してあげてね。私の大事な友人なんだから。」


「血のイニシエーションはどうするんだろう。」


「大丈夫。君たちとは違う方法で更なる長寿化が出来るから。マニだって、血筋は変わってないんだよ?」


例によってサットが割り込んできた。


「義父様、そうなんですね?」


「細胞を活性化させて、遺伝子を強化しているだけだから。」


「今知った驚愕の事実!もしかしてそれって、分子クラフトではなく原子の世界では?」


「うん、実はね。でも原子を弄るのはほんの一部だけさ。色々問題がある。」


「分かった。とにかくアズ様に迷惑がかかったり問題がなければ、断る理由は薄くなるよな。人間が少ないと人口を増やすことも義務の内か。」


「マサは頭がかたいよ。もっと柔軟に生きないと。」


「義父様、私の気持ちもあるんですが。」


「ライエを受け入れられて、他の妻や子供を否定するのかい?」


「...お父様はずるいわ。」


「俺もたまにそう思う。」


「割りきれるかどうかだな。自分の価値を押し付けるか、あるがままを受け入れるか、だね。」


俺もマニも納得はしていなかった。でも、そうなったら何も言えなくなるだろうなあ。


「とにかく、決まるのは事がはっきりしてからだな。」


マニもサットも頷いた。この間1秒!(笑)


マニは銃をホルスターに入れた。これもクラフト品だ。赤い革製で、マニのお気に入り。


二人で表に出ると、皆待っていてくれた。射撃場に歩いて移動する。その後は実家だ。そしたらマルタの飯を御馳走になって、会議かな。



ナルは、はしゃいでいた。プルとマニの2丁拳銃での射撃を見て、皆と同様に驚き、同時にはしゃぎ、俺のすぐ隣で「おお」とか「ん」とか「わあ」とか抑揚のない声をあげていた。


声に感情が籠ってないだけで、表情や態度はエキサイトしていると言う。何だか面白いやつだな。


アズ様は、何だか申し訳なさそうだ。俺はアズ様に近付き、そっと囁いた。


「ナルは、嫌われるよりこの方が被害の少ない選択なんでしょう?」


「...あの子がプロジェクトに居るのと居ないのでは、天と地の差があるわ。優秀な研究員であることに間違いはないの。それに地域に対しての志は恐らく一番よ。」


「分かっていますとも。貴女がミスマッチするはずはないですからね。これでも本気で信じていますよ。」


「その言葉が、とても嬉しいわ。」


「この先どうなるにしても、ナルとは善き関係であり続けようとは努力します。そこは、マニも腹を決めたらしいので。」


アズ様は頷いた。何だかそう言う流れになってきているのか。ライエには何て話そう。大人のいざござに巻き込むのは気の毒だ。マニとよく相談しないとね。


「アズ様は、俺にとってもマニにとってもかけがえのない友人です。我が家はあなたの家ですよ。気がねなくこれからも使ってください。」


「本当に助かるわ。今まで地方で、これだけ充実した生活は経験したことないもの。」


「そう言って頂けると幸いですよ。」


アズ様は俺の目を見て頷いた。多分信じて貰えたと思う。


ナルは、ある意味振り回すのが上手い奴だ。あの容姿と性格で、今迄も縦横無尽にやらかして来たのだろう。


万が一俺の身内になったとして、サットの監視に一番順応できなさそうなのが彼女だと思う。そこは義父(?)としての資質が問われるのだろう。


まあ、スパルタでやれるなんて思ってないだろうが。俺の時はそうだったが。


「こっち。」


ナルが呼んでいる。気付いたら、いつの間にか服の裾を掴まれている。結構綺麗な子だから、ドキドキするな。これはもう、既婚者としてあるまじきだな。


彼女の気に障らないようにスッと抜けると追って来ないが、独りで居るといつの間にか横にいる。うーん、こう言うの実は好みなんだよなあ。(笑) イカンイカン。



射撃を見たナルは、マニに銃を借りて試し撃ちをした。大分気に入ったらしく、物欲しそうに眺めている。プルはハイハイという感じで自分の練習に没頭してた。テンプレなのだろう。


そのままマニの銃を俺の所に持ってきた。マニも後ろから追いかけてきた。ずいっと銃を突き出すと、


「作って。」


と一言。お願いしますとか言えんのかい。マニは、プルと同じでヤレヤレという顔だ。うーん、姉妹とはかくも悩ましいものなのかな...。


「ナル、君の事は何となく分かったような気がするけど、人として何か言葉が足りなくないかえ?」


俺は、あくまで「人として」どうするつもりか聞いてみた。


「...お願い。」


おお!と言う顔をマニがした。お願いすること自体、珍しいのかな。こういうのは、先の事も考えてきっちりして貰わないと。


「分かった。これと同じのがいいの?」


「長いのがいい。」


「実家にこれから行くけど、そこに長い奴も作ってあるよ。他の人のだけど、形を見たり触ることはできる。それを見てからにしようかね?」


ナルは頷いた。そして長身を生かした銃の動きを試し始めた。なるほど、初めてにしては考えられてる動きだな。


グラウンドの障害物を使って、身を隠しながら銃を使う動きだ。教えてないのに、基本中の基本を最初から難なくやれてる所にインテリジェンスの高さを感じる。


俺やアズ様やマニ達が格闘BKなので、この子は珍しく普通に見えるな。というか本来対人シューティングはこうやるものなのだが。


射撃が終わって、実家へ移動した。村長とマルタが何時もの如く出迎えてくれた。マデュレとサヴィネも居る。メッセージで呼んでおいたんだが。


ナルと家族は結構お互い知っているらしく、マデュレとは旧知の仲らしい。何でも以前都でたまたま意気投合したとか。サヴィネの眉がかなり引き釣っているのに気付かないのだろうか?


そんなサヴィネに、両手を合わせてスマンと拝んでおいた。彼女は近寄ってくるとこっそり、


「マニから連絡を受けてたので知ってるわ。でも、実物を見ると妬けるわね。」


と、耳打ちされた。こういう正直な子は、嫌いではない。マデュレの彼女でなかったら、俺が手を出していたかも。(笑)


まあお節介焼きだが、ナルにマデュレの銃を見せて貰うように言うと、彼が奥から持ってきた。


何時ものお約束が始まり、色々弄くり回したりして、こんな感じが良いとか言い出した。うーん、折角だしナル専用カスタムを作ってみるかな。それにはもうちょっと彼女の事を知らないと。


その後は、村長を交えてマルタの料理を皆で食べながらナルの能力を戦略、戦術に組み込んだシュミレーションを検討した。


彼女は格闘が強くない分、魔法の扱いにとても長けている。アズ様とは違った使い方だ。明日以降で確認して、大規模殲滅戦に望もう。明後日には都から人員が到着する。


人と物は揃った。いよいよ地域改革の第一歩を踏み出せる。勿論成功すればだが、この布陣で失敗は考えられない。入念に打合せをしながら、夜は更けて行った。

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