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最強クラフトで異次元無双  作者: 御自賛
16/22

その15

瞬間移動で自宅に到着した。マデュレとサヴィネは自宅に帰ると言って、二人で手を繋いで歩き去った。仲がいいなあ、あの二人。


マニが寄り添ってきて体を密着させてきた。フィジカルコンタクトで喋りかけてきた。


「マサ、これからどうするの?お腹が空いていたらご飯作るわ。」


「そうだね、夕飯にしようかな。ありがとうマニ。」


この短い触れ合いの間でも、お互いの愛が会話の何十倍も伝わるので、俺達の間にうわべだけの会話は要らないのだ。愛し愛される、何よりそれがありがたく、幸せなのだ。



マニと庭のテーブルで食事をしていると、夜半なのにこちらへ走ってくる足音が聞こえる。マデュレが慌てて走ってきた。


「ハアハア、に、義兄さん実家まで来てください。姉さんも一緒に。」


「どうしたマデュレ、何かあったのか?」


マニはカップに水を入れてマデュレに差し出した。水を飲みながら一息つく。


「今都からの使者が早足で見えてます。親父様と実家で相談をしていたのですが、是非にも二人に会いたいと仰せで。」


マニの表情が不安そうになる。俺の目を見ると、気乗りしなさそうな表情をした。おいおいマニ子よ、解り易すぎだぞお前。(笑)


「分かった。もうすぐ食事が終わるから、待っててくれ...それにしても、いつ到着したかはわからんが、こんな夜中に呼びつけるとは常識を疑うな。緊急事態なのかな?」


「...多分、違うわよ。マデュレ、韋駄天よね?」


「その通りです、姉さん。」


「...おい、行く必要はなくなったぞ、マデュレ。ほれそこに。」


門の影に隠れていた小さな人影を指差した。マデュレはぎょっとした顔で後ろを振り向く。


元気よく躍動的に飛び出てきたのは、身長140cm位のネコ顔をした人型だった。それを見た瞬間、マニの表情が明らかに苦虫百匹の表情になった。それは明るいところまで近付いてきた。


よく見ると、愛くるしい顔の女性猫人だ。人間の顔の周辺パーツが猫で、頭に耳が付いている。


白黒の斑で、目は人間、鼻と口は猫という構成だ。立派に猫髭も生えている。鼻がピンク色なのが可愛い。(笑)


額にハチ金を付け、服装も忍者みたいな格好だ。マニとうって変わって、満面の笑みで目をキラキラさせながらマニに飛び付いた。


「ふぉおおおおおおお、すごい久しぶりだマニいいいいいいいいい!」


がっしりと抱きつくと、顔をマニの胸元にうずめてスリスリしてる。何かちょっとエロい。(笑)


当のマニは、もうどうにでもしてという表情でなすがままにされていた。正直俺は爆笑した。


「わかった、わかったからあ!ちょっと離れなさいよ!」


「うっうっ、にゃんであたしに黙って田舎へ帰ったのかにゃああああああああ!ひどいにゃあああああああっ(泣)」


今度は泣き出した。猫耳がリアスポイラーの様に下がっていて可愛くなっている。(笑)近所の人が何事かと窓から顔を覗かせて様子を見ている。さすがに迷惑そうなので、家の中に入れることにした。


「えーと、都の使者さんですね?ここでは近所迷惑になりますので、どうぞこちらに。」


「お前は誰にゃ?見たことない人種だにゃ。マニの召し使いかにゃ?」


半べそかきながらそんなことを言われましても。


「その様な者ですが、それが何か?」


「ご飯を出すにゃあ!マニと会ったら嬉しくてお腹が空いたにゃあ!」


何だこいつ、スゲエ図々しい奴だな。しかしここまで突き抜けていると、嫌味がないから何か怒れないな。(笑)


「この人は私の旦那様よっ!何よアンタ、まったく変わってないじゃないのよ。一体今まで先生の元で何を学んできたのよ!」


あはは、面白いぞこれ。マニがこういう反応をするのは、初めて見たな。何か困ったような、諦めてるような、苦笑してるような。(笑)


「ええっ、マニが結婚したとか嘘にゃあああああっ!出来るわけないにゃああああ!」


「失礼しちゃうわね!アンタと違うのよ。ああもう五月蝿いわね!」


マデュレが生きた心地のしない顔で周囲を気にしていた。そうだよなあ、彼の繊細さだと、あれはないよなあ、あれは。(笑)道理で焦ってたわけだな。


「ま、まあ食事は出しますから、とにかく中へ。後は夜中なので皆眠ってますからお静かに。」


韋駄天?を家に迎え、マデュレにはこっちで何とかするからと言うと、ホッとした顔をしながら帰っていった。面倒を押し付けられた訳だが、何分マニが目的なのでは仕方がない。


「ええと、それであなたはどちら様?」


椅子に座らせると、韋駄天はさっきとコロッと変わって無邪気に笑った。


「マニと魔法学園で同じクラスだったプルートゥにゃ。親友だにゃ。お腹も空いたにゃあ。」


「あいよっ!ハンバーグ一丁お待ちっ!」


「えええめっちゃ早いにゃん!ぶったまげたにゃん!」


「マサ、あなたねえ...」


速攻で食い物が出てきたので、驚いたらしい。もちろん素材は虫クラフトなんだがそんなことわからないと思う。(笑)


「ムシャムシャ、速攻で出てきた割りにうまいにゃあ...」


静かになった。こいつ、飯食わせておけば黙るクチだな。(笑) マニの肩にそっと手を置いて、フィジカルコンタクトする。


「こいつ、何で韋駄天なの?隠密はそれなりのレベルだったけど。」


「ああ、それね。とにかく色々スピードが早い子なのよ。元々魔導研究所出身でね、どうやったかは知らないけど身体に加速術式を常にかけっぱなしの状態なのよ。」


「じゃあ、代償で消費カロリーとかも倍になるとか?」


「いえ、この食欲は都から走ってきたからじゃないかしら。」


「...たしか3週間とか言ってなかったっけ?」


「この子の足なら、3日で着くのよ。何で今頃来たんだか。」


「親友(笑)ではないのかい?」


「うーん、長い付き合いだった、とは言えるけど。親友というより....」


「ああ、それは何かわかるよ。腐れ縁っぽいやつかな?」


「そう言えなくもないわね。この子、これで都の緊急連絡係を兼ねているのよね。各地方に一週間かからず往復できるスピードなので、韋駄天のあだ名なのよ。」


「なるほど。」


ふっとプルートゥの方を見ると、既に眠たそうな様子だ。本人はまだ喋り足りなそうだが、体が言うことを聞かないみたいだ。


「プルートゥさん、眠ければこちらにベッドもありますから。今夜はお休みになって下さい。」


まだ色々話が...とか言ってた割りに、すぐ寝てしまった。やっと静かになった。(笑)


「今夜は俺のベッドが塞がったな。次元部屋で寝ようかね。」


「あたしのベッドで一緒に寝ましょ。たまにはいいじゃない。」


「そうするかね。それもこの子のお陰かな。」


「ふふっ、マサは前向きねえ。というかよくプルと初対面で普通に接していられるわね。」


「こういう奴も前は居たんだなあ、これが。」


「どれだけ経験豊富なのよ旦那様。懐が大きすぎやしないかしら?」


「そんなこと言われたことないなあ。まあ、そこは馴れかな。」


「馴れたくないわ...もう寝ましょ。」


二人でベッドに入ってすぐに寝てしまった。マニも流石に客人がいるので、今晩は大人しくするつもりらしい。すやすやと寝息をたてている妻の顔を手で撫でて、額にキスをして眠った。




次の朝、マニは早くから朝食を作っていた。プルートゥも早起きだった。学生時代は、こういうサイクルだったらしく、二人とも自然に起きてしまったらしい。


とりあえず客間に足を運ぶと、二人とも既に盛り上がっていた。マニの機嫌がよろしくない方向で...。


「いや、何で深夜に...」


「だから説明したにゃあ!とにかく会いたかっただけにゃ。」


「近所の迷惑を...」


「それは謝ったにゃ!」


あーこれは歯止めが無い奴だ。五月蝿いなあ。(笑)


「はいはい、外から人がこちらを見てるよ。二人とも早朝なんだから静かに。」


「旦那さん、おはようさんだにゃ。」


「あなた、おはよう。」


「プルートゥさんは朝早いですね。とりあえず朝飯にしましょう。」


「賛成にゃ!」


「もう、まったくブツブツブツ...」


お小言を言いながらプリプリ怒っているマニが超カワイイ。


「そう言えば、プルートゥさんの様な人種は初めて見たんですが、何という種族なんですか?」


運ばれてきた食事を速攻でかっ込みながら、彼女は返事した。


「プルと呼んでいいにゃあ。ガツガツ。人猫族というにゃ。ムシャムシャ。都には結構居るにゃ。」


「お行儀が悪い!」


マニがキレた。食うの止めれば怒られないのにな...ああ、そう言えば。


「ところで、こちらにはどんなご用で?」


そう言った瞬間、プルの耳がビイイイン!と痙攣しながら立った。


「そ、そうにゃ!アズ様がこちらに向かっているんにゃあ!忘れてたにゃあ!」


「ええっ、先生が?なんでアンタはそれ早く言わないのよもう!」


マニが眉をひきつらせながら外出の支度をし始めた。プルは食べ物を口にかっこんで頬張ると、むにゃむにゃ動かしながら支度を始めた。2人共どうするつもりだろう?砂漠にでも迎えにでも行くのだろうか?


「あなた、来てもらえるかしら?」


「お、おう。」


「アズ様は予定ならもう到着しているにゃあ。すっかり忘れてたにゃあ。」


プルはリアスポイラー耳で、本当に申し訳なさそうな顔をした。案外根は悪くない奴だな。多分超マイペースなんだろう。


三人で歩きながら教練場へ向かう道中、アズ様の話を聞いた。アズナイル卿と言って、何でも都の魔導研究所の所長であり、魔法学園の理事長でもある人だとか。


何て言うか、訪問の理由がわかった気がするが...。


教練宿舎は、射撃場の先にある。大型の施設で、多数の職員や教官が寝泊まりしている。都からの来客も、ここで宿泊するのが一般だ。プルよ、何故うちに泊まったし...。


グランドに到着すると、朝っぱらから人だかりが出来ていた。割って入ると、二十代後半位で目が覚めるような赤髪の美女が村長と素手で対峙していた。


短い髪をカチューシャで纏めて、モンゴロイド風で均整のとれた顔をしている。耳に琥珀?のイヤリングがアクセントで、今まで会った人物では素朴だけど中々お洒落な感じだ。これからやり合う所らしい。


ゆったりめの服を着ているのでよくわからないが、女性はどうも構えがいかつい。剛の者だな。村長が、気合いを入れて掌を女性に向けて突き出す。


「イヤアアッ!」


ボッ!と音がして、女性が体さばきでかわす。すると背後の壁がドーンという轟音と共に振動する。あれはソニックブームだな。


「あの人がアズ様よ。」


マニがメッセージを送ってきた。振り向くと、二人は目立たないようにしているらしい。ギャラリーの輪の外に居た。そんなに怖い人なのかなあ?


アズ様は前蹴りを放った。スピードもあるがパワーが物凄いらしく、空を蹴っただけでもヴォ!という音が鳴り響く。


村長は繰り出す技すべてに何がしかの副次効果がついている。手刀は鎌鼬、掌打や蹴りはソニックブームが発生するようだ。


しかし、女性が動く度にその拳圧で圧されて、村長は体制を崩したりよろける。お互い技を受けると、タン!タン!と肉同士のぶつかり合いでは出ない音が響く。


空手と中国拳法をミックスしたような動きだな、と思った。目鼻立ちのはっきりした、整った美形の口元が楽しそうに笑っている。拳法家であることは間違いないだろう。


「ハイ!ハイハイハイハイハイ!」


アズ様が連続で蹴りや突きを出すと、村長がだんだん受けきれなくなって来た。重くて早い打撃で、避けるのに精一杯なのが見て取れた。


んー、あれは只者じゃあないな。覇気は超達人だし、あの拳圧とスピードでは打ち負けるだろうし、体さばきを利用した他角度の拳筋からは中々逃げられないだろうし、やり合いたくない手合いだ。


ボッ!喉元に手刀が寸止めで入った。村長は「参りました!」と膝をついた。ギャラリーが拍手喝采する。職員も一同で喜んでいる。キャーとか黄色い声援も。(笑)


「アズ様、連れてきたにゃあ!」


「先生、お久しぶりです!」


マニとプルが後ろからかけ寄る。彼女は破顔一笑すると、マニを抱擁した。


「やあ、マニさん元気でしたか?」


何か、カッコイイ女性だ!歌劇団の男役みたいな、爽やかで優しい感じの人柄に見える。さっきの試合の時とは大違いだ。


「もう、先生ったら、事前に連絡をいただければ歓迎会を致しましたのに。」


「いやあ、君達に迷惑がかかるかなと思ってね。噂は聞いてるよ。最近大活躍だってね。」


「師匠、マニは測定が出来ない程に魔法が成長しました!」


村長が嬉しそうに近づいてきた。あれ?村長の師匠?それでマニの先生?この人一体何歳なんだろう?


「そうともさ、その話を聞いて飛んで来たのよ。測定不可能など、研究所の有史以来無かったからね。是非にも確認をしに来たという訳。」


男勝りな喋りが、痺れる。周りの女子が、うっとりしながらアズ様に見惚れている。こりゃ相当なカリスマの持ち主だな。これで魔法が使えてとか、もう完璧じゃないか。


「そちらの君がマニさんの旦那さんかな?私はアズナイルという者です。」


アズ様はこちらを向いて、そう問いかけてきた。何言ってるのかなこの人、さっき村長と闘っている時から俺と闘気で攻めぎ合っている癖に。


「はじめまして。クラフターとお呼びください。」


「それは偽名かしら?なにかしら理由があるのだろうけど。初対面でこんなことを言うのも何だけど、あなたからは戦慄を覚えるわ。」


「いえいえ、アズ様は御冗談がお好きなようで。ここへ来た時から、私もそういう気分ですよ。」


彼女は俺の顔を見ると、ニッコリ笑った。プレッシャーが無くなった。


「マニさんの旦那様がどういう人か、何となく解った。あなた、凄い人をつかまえたわね。心からお祝いしますわ。」


先生は、矛を納めてくれた様だ。村長が少しがっかりした顔をしたが、勘弁してくれ。こんな人と戦わされると、その後色々面倒があるだろうに。純粋に格闘家として試合を見たかったのだろうけど。


「プル、今まで一体何処へ行ってたのかな?私は探してしまったよ...」


「ご、ごめんにゃあ。マニの家にお泊まりしてたにゃあ。」


「...そこへ座りなさい。正座。」


アズ様は顔は優しいけど目が怒っていた。プルは言われた通り正座した。ちょっ、正座まであるんだなこの世界。(笑)


「あなた、あろう事か深夜に新婚夫妻の家に押し掛けるなんて、非常識にも程がありますよ。」


プルが全身でビクッと反応した。静かで淡々とした口調だが、腹に据えかねた感を強く感じる。


「結婚祝いとか持って行ったのでしょうね?まさか食事を要求とかしていませんね?」


「うっ...」


「呆れましたね。もしかして両方やらかしたと言う事ですか?」


アズ様はマニの方を振り替えった。困った顔をしながら、頷いている。


「こっこれは、マニに会いたかったからつい忘れて...」


「あなた、何歳になるんでしょうか?百数十年生きてきて、そんな事も学ばないとは、情けないですね。」


空気が悪くなったので仲裁に入ることにした。まあ俺としてはそんなに嫌いなキャラではないんだよなあ。


「まあまあ、マニはともかく俺は怒ってないですから。悪意はないし、言って判る人ならとっくに改善してますよ。こういう人だと思えば。あはは。」


「お気遣いありがとう。プルはそう言う所が色々評判が悪いので、いい加減に正さないと使者の役目が勤まらなくなりますので。」


「まあ、私はあなたが良いと言うなら文句は言わないわ。」


マニの顔が納得行かないと言ってるんですがそれは。ま、俺は面白いやつが好きだからいいけどね。


「今回は、どうぞ許してあげてくださいな。次のために魔石契約でもして、ペナルティ課すとかでもされては?」


「仕方ないですね、そういう事にしましょうか。クラフターさんもそう言ってますしね。」


プルはホッとした顔を。これ止めてなかったら、どうなっていたかは興味があるけどね。(笑)


マデュレとサヴィネがやって来た。二人ともアズ様に挨拶をする。どうやら以前にも会っていたようだ。


「義兄さん、昨夜はすみませんでした。」


「いんや、君は悪くないじゃないか。」


「止めようにも話が通じなくて...」


アズ様がジロッとプルを睨む。針のむしろだなあ、プル子よ。正座のまま小さくなって行く。(笑)


サヴィネが俺とアズ様を見比べながら、


「もう戦いましたか?アズ様とクラフターさんの試合、見たかったのに...」


「いや、やってませんね。あなたは私か彼が死ぬところを見たいのですか?」


「先生でもクラフターさんとはいい勝負と言うことですか?」


サヴィネよ、ストレート過ぎだぞ。(笑) 変なフラグを立てないでくれよ。


「いえいえ、もしかすると数段格上かもしれないです。今の段階では底が見えませんね。」


「ええ...先生より数段上とか、人間なのでしょうか?」


「じゃあ、俺は悪魔か何かと言う事ですかね?(笑)」


「クラフターさんからは、そう言う邪気は感じませんね。私はそういうのには敏感な方ですので。むしろ神とか、自然霊に近い方かなと思いますけどね。」


「自分の事になると、勘が鈍いもので。良くわかりませんが、人畜無害で居られるように努力します。」


アズ様はニッコリ笑うと、ご謙遜を、と言ったまま話題を変えた。


「マニさん、あなたの魔法を測定できる様な魔道具を持ってきましたけど、午後から実験をしませんか?」


「先生、一休みされないのですか?都から、わざわざその為に?」


「色々ですよ。大規模殲滅戦にも参加したいですしね。あなた達にはこれを。」


巻物のような物を渡されて、俺とマニは顔を見合わせた。紐解いてみると、真っ赤なタペストリーだった。中央に金文字が一字刻まれている。


「結婚祝い!しかも先生直筆の!」


マニは俺からタペストリーを受けとると、胸に抱き締めて喜んだ。アズ様とハグをして、何やら感謝を述べたようだ。周囲の雰囲気が華やいで和んだ。


プルは既に復活していて、ぴょんぴょん宙返りをしながら喜んでいる。愛玩動物系だなこいつ。


「お気遣いありがとうございます。今後とも、どうぞ俺達をよろしくお願い致します。」


「師匠、娘の為にわざわざありがとうございます。」


俺と村長が続けてアズ様に御礼を述べた。彼女は口元に静な笑みをうかべていた。そして、俺の方を向くと、


「クラフターさんには、この後お時間を頂ければ幸いです。マニの事もありますし、打合せ等をしたいのです。」


そら来た、狙い通りの展開だ。新技術をちらつかせ、都から人員を呼んで俺のプランに参加してもらう。


地域の他の村との連携や都との交通を改善したり、いち速く兵鐔(へいたん)を構築出来るようにする為の計画だ。まさか、大物らしい人が釣れるとは思わなかったけどね。


「はい、了解しました。」


マニが割り込んできた。手を繋いで来て、フィジカルコンタクトを。


「へーえ、マサはそんなこと考えていたのね。道理で簡単に秘密を漏らすなと思っていたら。」


「うん。新戦術、強力な魔法、大規模殲滅をイベント代わりにして人を集める。全てはこの事に尽きるんだ。」


「私にちょっとは教えてくれてもいいのに。」


「ごめんね、色々考えることがあって気が回らなかったんだ。それに本音が漏れると足元を見られるからね。」


「私はそんなに軽くないわ。失礼ね。」


「後で埋め合わせするから。もっとお互いゆっくり知り合おう。長い人生になるんだしね。」


「はいはい、わかってますよ旦那様。これも御父様や村の為だってことは、判っているつもりだわ。」


「そう言ってもらえるとありがたいよ、わが妻よ。」


アズ様は、俺達の様子を見て目を細めた。


「仲が良いわね、当たり前なんだけど。あなた達のオーラが、ハート型になっているわよ。」


クスッとアズ様は笑った。マニは恥ずかしそうに下を向いた。可愛いのう。(笑)




都組と俺達家族とサヴィネは、実家で一緒に昼食を食べた。マルタが御馳走を作って待っていた。アズ様はマルタとハグをすると、


「あなたの料理がまた食べられるなんて、とても嬉しいわ。会うのも久しぶりだものね。」


「先生、そんなに喜んで頂けて嬉しいですわ。主人も昨夜から興奮しっぱなしで。」


「アルは、一番弟子だからね。弟子に好かれるのは、いつもくすぐったい気分ね。」


「マニのお母ちゃん、ご飯が美味しいにゃあ!すごく楽しみにしてたにゃ。」


俺は苦笑した。空気読めねえ奴だなこいつ。だが、お前はそれでいい。(笑)


「プル、飯の事しか考えてないよな。」


「ほ、他の事も色々考えているにゃ!」


「そうなんだ。例えば?」


「アズ様が戦わないクラフターさんて、都にとっては注目の人物になるという事だにゃ。あちらに居ては分からないことでも、一緒にご飯を食べればわかるにゃ。」


ほーお、結構感心した。そうかこいつ、懐に入り込んで探ってるのかもな。今の会話では大した事は言ってないけど、使者やってる理由は案外これかもな。


「あはは、プルらしいや。よし、御母様のウマイ飯を食おうな!」


俺はこいつが気に入った。全くのアホなら流しておけばいいが、こういう奴なら意味ある関係が出来そうだ。まあ気をつけるのに越したことはないが。



食事後にする予定の打合せは、重要会議となってしまった。超魔導リアクターを見たアズ様が、目の色を変えて色々質問攻めを始めた事がきっかけだった。


「クラフターさんがこれを?信じられない精密さと魔力集積量です!それに人間以外で魔法を発動させる機能、それも複数を登録するとか、今の魔導研究より数世代先を行ってますね!」


アズ様は興奮しながら、リアクターをあちこちの角度から調べている。プルに何かを言いつけて、宿泊施設まで何かを取りに行かせた。


「どうやってこれを作ったのですか?この世の技術とは到底思えません。あなたは本当に神の使いですか?」


「すみません、俺の一族の掟で、秘密を漏らすことは禁じられています。貴女なら、これが世に普及したらどうなるか位は想像できますよね?」


「...そうね、ごめんなさい。仰る通りだわ。都にも、邪な輩が居ますからね。この素晴らしい技術を悪用される方が、悲しいわ。」


「アズ様が叡智の持ち主で、安心いたしました。材料が大量に必要になるので、量産は困難です。しかしながら、この豊富なマナを利用して地域の為にやれることがあると俺は確信しています。」


「素晴らしい!公共の為にこれを御造りになったと?これは魔導研究所長として、私にも是非協力させていただきたいです。」


「地域の繁栄のために。民草の幸せのために。神の思し召しのままに。」


プルが息を切らしながら魔道具を持ってきた。ん?まだ3分位しか経ってないと思うんだが。あいつメッチャ足が速いな。さすが韋駄天と呼ばれるだけある。


アズ様は、リアクターに魔道具を近付けた。そして頭を掻きむしって叫んだ。


「参りましたね!マナ測定の上限を軽く越えていますね。一体どれだけのエナジーを蓄積しているのでしょうね!」


多分この次元では比較する対象がない。前次元で言うなら核融合炉相当ではないだろうか?


アズ様はこちらを向くと、胸に手を当てて正式な御辞儀をした。


「今日、私は人を得ました。貴方のような人物がこの世に居たとは、何と自分の見識が狭かった事か!一体どれだけの発展が望めるのか、想像できなくて喜びが湧き出てきます!」


村長が感涙にむせびながら、俺にハグを求めた。力強く感動が伝わってきた。


「我が息子が、師匠にこんなに喜んでいただけるとは名誉の極みです。息子よ、お前は一族の誇りだ。」


さて、ここからが正念場だ。都からどれだけの協力を引き出せるかが、プランの鍵だ。


「皆さん、この世界に素晴らしい文化を創りあげる計画は、今ここから始まります。まだこれだけしか成し得てません。滅んでしまった故郷の二の舞を踏まないように、慎重に確実に、お互い手を取り合って成し遂げようではありませんか。」


俺はアズ様を見込んで、ここぞとばかり熱くアピールした。大好きな村長とマニが、自由に旅行とか生活が出来るように、システムを考えないと。


「正に、その通りですね。クラフターさん、今私に出来ることは何かありますか?」


「そうですね、まずは素材の確保です。その為の大規模殲滅作戦という側面もあります。お互い出会ったばかりなので、信用と実績を築きたい。俺達と貴女で大きな結果を出せば、他にも賛同してくれる人が現れるかもしれません。」


「ええ、そうですわね。都としても色々協力がしやすくなりますね。地域からも助力が得られるでしょう。」


「まずは、第一歩からです。この虫との戦いに参加したメンバーが、中心人物となって計画を遂行する権利があると俺は思っています。都側の人選を、アズ様に一任したいです。魔導研究所の地域的名声も飛躍するかもです。その為の核になる人選を、貴方に。」


「なるほど、重要ですね!喜んで引き受けましょう。人員や必要な機材は、私アズナイル・レ・ドラクレシュティの名に於て出来る限りの支援を約束します。」


よっしゃ!と俺は心の中でガッツポーズを決めた。恐らく都のキーマンを取り込めた訳だ。これはきっと大事(おおごと)だ。どれくらい時間がかかるか不明だが、勢いが乗ったのは確かだろう。


その後は、マニの魔法実験の打合せになった。午後からのスケジュールを確認して、明日の会議の時間を決めて、終了。俺達は教練場に場所を移した。




正午過ぎ、教練場のグラウンドでは新たな避雷針の設置がされていた。面白い形をしていて、金属製の枝が天辺付近から生えているみたいだ。


そして避雷針の目の高さの位置に、マナ測定器が取り付けてある。以前はこういった仕組みではなかった。術中の電位差でも確認するつもりなのだろうか。


「マニさん、準備は宜しいか?」


アズ様の良く通る声が響く。マニは既に準備できている。自信ありげに頷くと、エアフロウで宙に浮き上がった。


俺は事前にギャラリー全員に霊波バリアーで保護しておいた。アズ様やプルはすぐに気付いたらしく、俺の方でメッセージを送っておいた。


アズ様は近付いてくると、例によって色々訪ねまくった。


「これは...魔法とは違いますね。マナがエネルギー源でも無さそうな感じです。」


「はい、あまり詳しくは言えませんが霊波というエネルギーで、マナの上位エネルギーですね。」


「これも初めての経験です。貴方と居ると、そんな事だらけですね。今朝から何枚の鱗が目から落ちたことか。」


「恐らく最強の防御です。こちらの効果も、ご覧になると良いですね。」


「この避雷針でも、完全に吸収できないと?」


「恐らくは。」


「...もしかすると測定できないかもしれない...。」


「そう言う時は、マニの等級とかはどうなるんでしょう?」


「普通はあり得ませんが、私が特Aを出せばそうなりますね。実際見てからの判断ですが。」


「なるほど。」


以前と同じで、ギャラリーに建物の中や影に避難するように指示を出した。皆わらわらと避難して行く。


マニは空中で待機している。安全確認後、アズ様の合図で、詠唱を始めた。


「雷神よ、青き光の奔流を示せ!全てを貫く稲妻は今ここに召喚された!!」


ヴーン!パン!パパン!バチバチバチ!ズズズズーン!!


閃光と轟音が、嵐のように荒れ狂う。避雷針は、中々効果を出しているみたいだ。しかし、非情にもマデュレとプルの頭上に雷撃は降り注いだ。


次の瞬間、体に触れるかなり手前で折れ曲がり、近くの地面に吸収される。アズ様はしばらく放心状態になっていた。プルは、近くの家の軒下でプルプル(笑)震えている。


えー、なんか魔道具から煙が出ているんですがそれは。俺はアズ様に近寄ると、肩をポンと叩いた。


「終わりました。結果はどうですか?」


ハッと我に帰り、ちょっと赤面するアズ様。普段かくしゃくとしているだけに、ギャップで萌える。(笑)


「まさかこれ程とは...確かに、特Aなのは間違い無いわ。」


マニが降りてきた。煙の出ている魔道具を見て、やはりという顔をする。アズ様は測定結果を確認しようとして目を疑った。


「壊れているわねこれ...。」


「ご免なさい。実はこれでも手加減したのです。高価な魔道具を壊してしまいました。」


マニは半べそかいている。俺はよしよしと、ハグをして背中を優しくポンポンと叩いた。


アズ様は、最初プルプルと震えていたが、振り向いたら目がキラキラ輝いていた。(笑)


「何ということ!研究所始まって以来で計測不可能!」


頭を抱え、魔道具の周りをぐるぐる回りながら何かブツブツ言ったり叫んでいる。ちょっとネジが弛んだか?(笑)


「アズ様、とりあえず実験は終了で宜しいでしょうか?」


教練場の職員に確認されて、またもやハッとした顔を。


「そ、そうね。今日はこれで終いにしましょう。皆さんお疲れ様です。」


と、解散を宣言した。ギャラリーは散り、俺達は教練場の宿泊施設へ行き、会議室に落ち着いた。


「...とにかく、このレベルの魔法を特Aにしない訳には行かないわ。所長、マニさんの申請を私宛に出しておいて。」


どうやら特Aになれたらしい。マニは申し訳なさそうにアズ様に感謝を述べた。


「色々面倒をおかけします。でも、やっと認定してもらって嬉しいです。」


「マニさん、しばらく都に滞在できないかしら。あなたが何故こうなったか、検査をして調べたいのです。B+だった人が、いきなり特Aになる事は滅多に無いわ。」


ま、多分検査したところで、解らんだろうな。そもそもマニは人間とは言えなくなっているんですが。アズ様の寿命が何年かは知らないけど、あと30年もしたら異常に気付くのでは?


「すみません、今は虫の強襲が盛んなので、それが落ち着かないと無理です。」


マニは残念そうに返事した。お互いガッカリしている風だったので、俺はフォローを入れることにした。


「大規模殲滅戦であらかた倒せば、心配なくなりますよ。マニもこの調子だし。私もついています。」


「...そうですね、焦っても仕方ないですね。どれ位やれるかは分からないけど、私も精一杯戦うね。」


「プルもフルスピードで敵を撹乱するにゃあ!囮と撹乱は十八番だにゃ!」




さて、今日のスケジュールは終了かな?ゆっくり出来るな。


「そう言えば、明日の会議って何が議題なのかにゃあ?」


おっとプル子が珍しく真面目な質問を。(笑)


「職員の方々にお願いして都には黙っていたのですが、新しい戦術の披露と狩りの効率化について、ですね。」


「戦術?戦闘用の魔道具を開発とかですか?」


「非戦闘員の戦力増強ですね。勿論戦闘員の戦術追加にもなります。それは、明日のお楽しみで。」


「貴方には本当に驚かされっぱなしだわね。何が出てくるか想像もつかない。」


「アズ様、明日は軽く会議をしてから狩りに出かけませんか?マデュレとサヴィネ、あなたとプル、マニと俺の6人です。」


「ああ、素材集めもあるのかしらね。新戦術も実戦を見た方が早いものね。」


「その通りです。実戦に勝るものはありませんからね。それに虫が減るのでその分は平和になります。」


「確かに。では、皆さんまた明日ね。」


「先生、ありがとうございました。」


「お疲れ様です。」


俺達家族とサヴィネは、実家に向かった。明日の会議と遠征の準備を手伝う為だ。プレゼンテーションの見直し、狩りの段取り、食事の下ごしらえ等。暗くなるまで作業は続いた。


実家からの帰り道、遅くなったがライエを迎えに行った。実は彼女から盛んにメッセージを貰っていたのだが、忙しかったので余裕がなかった。


とは言え、この程度位はこなせないと実際子育てなど叶わないだろう。ライエは既に眠たそうな顔をしていた。俺がおんぶして自宅まで連れて帰った。


「...お兄ちゃん、ライエね、寂しかったの。姉様も一緒にお布団で寝るの...。」


半寝しながらニクイ事を言うじゃねえか。うんうん、一緒に寝ような。マニはよしよしと言う感じでライエの頭を撫でている。


三人でベッドに川の字になって寝た。俺は、夢を見た。ライエと子供位の大きさの光る人型が二人と俺とマニが、大きな森林の中を歩き回り河原のほとりで遊んでいる夢だ。


夢なのだが、夢のような光景だった。将来俺は三人の子供に恵まれると言うことか?マニと俺で二人の子供をおんぶして、ライエと手を繋いで歩いている俺達の姿が白い靄の中に消えていった。


目が覚めると横にぐっすり眠っているライエとマニが居る。まだ暗い時間だ。でも眠れそうにない。二人のために御馳走でも作ろうかな。


異次元部屋でシャワーを浴び、入浴し、さっぱりしてから自宅のキッチンで料理を始めた。


今日は中華風饅頭のピロシキ風と小籠包、餃子と(パオ)物で飲茶式モーニングと行こうかな。まだクラフトメニューに無いんだよな。


虫の粉末が小麦粉の代わりになるので、以前から試してみたかった料理だ。


本物の小麦粉が欲しいところだが、この世界にあるのだろうか...これだけ共通点が多いと、絶対俺と同郷の者が絡んでいると見た。多分ありそうな気がするので探してみよう。


肉と野菜の原形をクラフトして、自作の手動ミキサーで細かくして、スパイスを入れてゴマ風油で中華風に炒め、水溶き片栗粉風を入れて餡状にして煮凝り代わりにする。調味料は全部虫だ。(笑)


小麦粉と重曹と水を混ぜて生地を作り、練り上げる。ダマが残らないようにしっかり溶いて、そば打ちのように練る。この動作が気の練功にもなる。


麺棒で丸く伸ばして、各々の生地を作る。それにスパイスで味を変えた、冷えた煮凝りを入れて包む。後は朝イチで蒸すだけだね。


実はタイマー式でマナ動力の専用蒸し器を作っちゃったんだな。蒸籠もクラフト品。


お茶は味を思い出して高級烏龍茶をクラフトしてみた。お湯を入れると花が開く奴だ。サットが乗り気で、クラフトの食品部門に包類とお茶類が完備した。


早朝になって、マニとライエが起きてきた。キッチンにうず高く積まれている蒸籠と蒸し器を見て驚く。この反応を見たかったんだよなあ。(笑)


同時にダイヤル式のタイマーをセットする。すぐに湯気が上がった。水餃子の準備で、鍋にだし入りスープを沸かす。


「マサ、朝っぱらから何作っているの?」


「お兄ちゃん、これ何?」


「へへん、これはね、蒸籠と言うんだ。まあ、座ってよ。今日の朝御飯はこれだから。」


「この中に何か入っているのね?」


「何か、良い匂いがする!美味しそうな匂い!」


ライエがしきりに蒸籠の中を覗きたがる。俺はライエに「顔を火傷するよ。湯気が熱いから離れていなさい。」と忠告する。彼女は素直に椅子に座った。


「スープが沸いたわよ。このクネクネしたのを入れれば良いの?」


マニは初めての(パオ)に戸惑っている。俺は直接手で入れて見せた。


「ゆっくりしててくれれば俺がやるのに。」


「新しい料理を見て、黙って居られるわけないでしょう?」


「はいはい、それじゃあ全部投入して。包みを崩さないように、こうやって入れる。」


「ライエも手伝う!」


「よし、それじゃあね、このお皿を人数分並べて、この容器の中に入っている黒い水をお皿に入れてね。こぼれない位でお願いね。」


「お兄ちゃん、これくらい?」


「そうそう、イイネ!」


親指を立てる。ライエも嬉しそうに真似をする。


「マサ、そろそろ良いんじゃない?」


「そうだね、それじゃあこのおたまを使って、スープごとこう盛り付ける。他をやってみて。」


「分かったわ。」


「お兄ちゃん、できたー。」


突然タイマーが切れて、チーン!と音がした。二人ともビクッと飛び上がった。(笑) 蒸し器が良い塩梅になった。これは熱いので、箸を使える俺担当。


二人には是非使い方を覚えて貰いたい。衛生的で手先の器用度に関係する。珍しそうに箸を使って盛り付けて行く様子を見ている。


「あなた、器用ねえ。それ何て言う道具?」


「箸と言うのさ。万が一手が汚れていても、これを使えれば衛生的でスプーンとかより使いやすくなる。だけど覚えるのが大変だけど。」


「確かに、この熱いのはスプーンで取り出すのに片手では難しそうね。」


「お兄ちゃん、教えてー。」


「あとで教えるよ。ほら、熱いうちに食べないと美味しさ半減だよ。息を吹きかけて、フーッ、フーッってしながら食べてごらん?」


俺は烏龍茶をみんなのカップに注いだ。まだ饅頭は熱いので、水餃子から食べる。暖かい出汁の効いたスープに浮かんでいる餃子が、思ったより旨い。


二人も真似をして餃子から食べ始めた。手で持てるくらいに冷めた饅頭をかじって、肉汁が溢れ出るのをこぼさないように息で冷ましながら食べる。そして烏龍茶。んー最高!


「お兄ちゃん、美味しいね!ライエ初めて食べたの。お代わり!」


「なるほどねー、食物の風味と熱をこの生地で閉じ込めているわけね。とても美味しいわ。このお茶もあっさり爽やかで、口直しに最高ね。」


二人とも、うまそうにお代わりする。まだいっぱいあるから、大丈夫。


プルがアズ様と一緒に通り向こうから歩いて来るのが見えた。あいつ、どうも飯が目的だろう。アズ様は何用だろう?


「マニ、アズ様とプルの分も皿とカップを出してー。」


「えっ、二人とも来るの?」


「あれを見るがいい。」


「あープルが手を振ってるわね。了解。」


思いもかけず、人数が増えた。まあ大量に作ったから、丁度良かったのだけどね。


「クラフターさん、おはようございます。実は、プルがあなたのご飯が最高だとベタ誉めしてましてね。一緒について来てみたのです。」


「そうにゃ!旦那さんの料理は都のシェフよりうまいにゃあ!アズ様も一緒に食べるにゃあ!」


二人とも朝食難民だった件。(笑)アズ様、そんなに施設の飯が不味かったのかな?


「あれ?施設の朝食はどうされたのですか?」


俺は若干意地悪めに聞いてみた。プルは即答で、


「あれは餌にゃん!」


と答え、アズ様が拳骨でプルを懲らしめていた件。(笑)頭を抱えてふおおおおおおとか痛がっているプル子をみて皆で笑ってしまった。


「うーん、先日もプルが失礼しましたが、私達の口に合わないんですよね。職員も料理が出来る者は、現地調達で自前調理すると言う体たらくですね...」


アズ様の目がフッと遠くなる。そ、そんなに不味かったとはね...。マニの方を見ると、困った顔でうんうんと頷いている。それまじか...


「偶然、俺の郷土料理(?)を作ったところです。宜しかったら、食べて行ってくださいよ。ちょっと多く作ってしまったし。」


ワーイとか言いながらプルは饅頭にむしゃぶりついた。アズ様は小籠包と水餃子を美味しそうに食べていた。


「こっこの饅頭とか言うの、生地の香ばしさと具の組合せが、ぜつみょおおだにゃ。猫舌を忘れて食べてしまうにゃあ。ハフハフ。」


「フーッ、フーッ、熱いけど美味しいわ!唇を火傷しちゃうのに食べたくなる。お茶も最高です。」


食客5人が、そのうち無言でふーふー、ズズー、ムームシャムシャ、アチチと言いながら食べるのに夢中になる時間となった。


食後、烏龍茶を皆ですすりながら雑談になった。マニは俺にフィジカルコンタクトで懇願してきた。


「マサ、お願いなんだけどプルとアズ様、それともう一人にはあなたの本名を教えてあげたいのよ。それに私達の素性もね。」


「その理由は?」


彼女は少しためらったが、やがて重大な秘密を教えてくれた。


「アズ様は魔導研究所の所長だと言うのは言ったわよね?」


「うん。」


「魔導研究所っていう所はね、その研究目的の中に長寿化というのがあってね。」


「ああ、寿命操作だね。俺の前次元でもあったから。」


「えっそうなのね。それで、アズ様は元々そういう血筋の方なの。この世界にあなたの世界のような王とか皇帝とか、そういうのは居ないのだけど、畏怖される血筋というのがあってね。強い遺伝性を有しているのよ。」


「ほお、つまりその血筋が入っていれば皆長生きになると?」


「そうなのよ。だから、何か言わなくてもその内ばれることになるわ。ちなみにアズ様は400歳と言われているわ。正確には誰も知らないけど。」


「そう言う訳か。なるほど。」


「プルともう一人の同期生はね、アズ様の実験体の被験者なのよ。輸血による延命が可能かと言うね。それで検体に人間と亜人がそれぞれ選ばれたんだけど、私は田舎の村長の娘だったのでお断りしたのよ。」


「君は立場的に色々事情があるんだろうね。それはいつの話?」


「もう5年前よ。実は、二人ともその当時はヨボヨボのお年寄りだったの。つまり、ナルキスは長年仕えていたアズ様付きの従者で、プルは当時最高齢の亜人学者だったのよ。二人とも故あって、私の同期生だったわ。」


「ふーん、何か色々あったんだなあ。んじゃあ、そのナルキスって子とプルとアズ様だけと言うことね?」


「はい。今回の大規模殲滅戦には、必ずナルは呼ばれるわ。いつもはアズ様が外出中は学園の副理事をやっているから。おそらく数百年のお付き合いになると思う。」


「そう言う理由があるなら、わかったよ。君の思うままに。」


「マサ、愛してる。」


ここまでの会話で0.5秒。フィジカルコンタクトは処理速度の効率化が図られるので、即理解できるのだ。俺は改まって二人に話を切り出した。


「アズ様、休憩中に申し訳ないですが、話を聞いていただける時間を少しくださいませんか?」


「何を水臭い。これから固く結束しなければならない人の話です。遠慮なく。」


「ありがとう。実は、実家もこの事は知らないのですが、秘密にして頂けると幸いです。俺は本名をマサと言います。これは実家も知っていますが、問題はここから。」


プルが聞き耳を全開にしている。アズ様はうーんと唸り、


「プルも居ますけど、それでもいいですか?」


「はい、プルともう一人のナルキスという方にも、長いお付き合いになると言うマニの強い希望ですから。」


「...もしかして、血統の関係とか?」


「直接は関係ないですが、長寿化に関する事です。実は、俺の里の掟で詳細は言えないですが、マニは結婚を期に恐らく1000年位の寿命になったのです。俺も同じ位の寿命です。」


アズ様とプルは驚いたようだった。まあそりゃそうだろう。自分の血統になることを拒んだ弟子が、違う血統になっていると勘違いするだろうから。


「誤解があるといけませんので前置きしますと、俺の長寿化は血統ではないです。マニも同じです。」


今度はアズ様が身を乗り出してきた。目が異様な輝きを増して来る。


「あなたはご自分が何を言ってらっしゃるか解ってますか?世界で長寿化が叶うのは我々の血統のみと言うのがここ数千年の常識です。それ以外はあり得ないはずですのに...」


「確かに、あなた達の世界ではそうでしょう。では、違う世界では?」


「...嘘はついてないわね。あなたは今、自分が異世界の人間だと言っているわね?」


「はい、俺は違う次元から波動シフトしてこちらに来た人間です。マニは、結婚するときに我が父にあたる人が、ギフトとして今の体にしました。だから、恐らく貴女が考えているような事では無いと思います。」


「それでは、真祖様と同じと言う事ですわね...」


この言葉を聞いて、俺も驚愕した。やっぱり!と納得して府に落ちた。


「やはり、俺以前にもこの世界に来た者が居たんですね。道理で、同じ文化が根付いている訳ですね。」


「では、マニさんは真祖の妻と言う事に。これは大変な事態だわ...。」


「もしかして権力争いとかになりますか?」


「都の序列が変わるわ。一位でも変わると、色々な面で雲泥の差が出ますね。あなたは恐らく、そのトップに君臨することになる。」


「ちなみに、真祖様はまだご存命なのですか?」


「言の葉に登らせるのも憚ることながら、30年前に崩御されました。今は二位様がトップです。1300歳以上とか。」


おー、すげえ長生きじゃない。(笑)この言葉使いと言い、真祖は皇族とかの関係者なのかな。


「俺は故あってこの次元にシフトしてきましたが、長く留まらないかも知れません。だから、この世界の成り立ちを混乱させたくないのです。自分から名乗り出る気はないです。ただ、アズ様と仲間の人達だけとは、その時まで長いお付き合いを。」


彼女はまたうーんと唸り、パッと表情を戻した。


「まあ、ばれてしまった時はその時で。成るようにしか成りませんからね。」


「俺が使っている技術はその父から授かりましたが、これが秘密にしなくてはなのです。この世に不釣り合いなテクノロジーを安易に流行らせるわけにはいかない。前次元の様に想像を絶する多くの人が死滅します。」


「分かったわ。大体事情は把握できたと思う。そもそも魔法は、その真祖様がこの世に伝来したそうですからね。今の状態になるまで、沢山の犠牲があったと聞くわ。そうさせない為ですね。」


アズ様は一応納得したらしい。ん?魔法は異次元から...いやいや、今は突っ込まない方が良いな。


「マニ、アズ様にも本名を伝えた件、実家に連絡を入れておいて貰えるかな?」


「はい。マサ、感謝してる。」


マニはアズ様の前に出ると、頭を下げた。


「元々アズ様の申し出は、父に懇願されてお断りしました。マサとは、マデュレの命の恩人としての付き合いから、私の意思で結婚しました。義父様は私とマサの将来を考えて、半ば強引にこういう風にしてくださったのです。」


マニは心の葛藤を彼女に吐露した。気にしていたんだな。


「ごめんなさい、私は結果、長寿化してしまったの。折角先生に心を砕いて頂いたのに...。」


「気にすることないにゃあ!」


プルが立ち上がった。マニの手を取り、上下にぶんぶん振り回す。


「プルとマニは親友にゃあ。アズ様は先生にゃあ。何も今までと変わらないにゃあ。気分だけで関係は変わらないにゃあ!」


俺は感心した。プル、良いこと言うじゃねえか!アズ様も、大きく頷いた。俺は、ガシッとプルを羽交い締めにして頭を拳骨でゴリゴリ撫でた。


「あなた達となら、このまま行けるでしょう。マサさんは民草のために、と仰有っていたものね。」


アズ様は結論を出せたみたいだ。問題なし。しかしプルは今ここで起きている問題が。


「い、痛いにゃあ!離すにゃああああっっ!」


「プル、お前良い奴だな。俺は気に入ったぜ。お前は俺のダチだ。マニ共々、宜しくな。ゴリゴリゴリ!」


「いてえええええええにゃあああああああああ!シャアアアアアアアアアッ!」


涙目になっているプルをゴリゴリペンペンしながら、俺はこいつを認めた。だから友情を楽しんでいた。(笑)次の日からしばらく、プルは近寄って来なかった件。(笑) 皆が大爆笑していた。ライエはドン引きしていた。(笑)



それから小一時間休んで、実家に行った。会議を再開するためだ。サヴィネは既に到着していて、マデュレとニャンニャンしてた。(笑) 二人とも銃を持参しており、アズ様とプルはそれに視線が釘付けになっていた。ライエも含めて家族全員(候補も)が揃っていた。


「今日は、そこにある新武器に関する発表と、これから行う狩りのフォーメーション等の内容を決めます。」


「マサや、私は狩りに同行してはいけないかの?」


村長が珍しく同行を申し出て来た。最近めっきり虫の襲撃が減っている。恐らく先日の大量殲滅が効いているのだろう。


「マデュレに聞いたが、一瞬でここへ戻れると言うではないか。いざと言う時は、そうすれば良くないか?な?」


「親父様が良いと言うなら、俺は同意です。」


「私も構わない。アルと狩りなんて何年ぶりかしら。」


アズ様は懐かしそうにしている。プルは、早く銃を触りたくてウズウズしているらしい。マルタがライエをそっと抱きしめて、


「ライエはね、おばあゃんとここへ残るのよ。お留守番。」


「えー、マニ姉様のかっこいい所が見たかったの...」


マニはライエを膝だっこすると頭を撫でて、とんでもないことを言った。


「次は、必ず連れていくからね。今日はお留守番しててね。ライエ、賢いものね。」


「...姉様、約束だよ!」


指切りしちゃってるよこの人。次って大規模殲滅戦本番じゃない...。


「マニさん、今のはちょーっと問題なのでは?」


「メリパダは、私が説得するわよ。あなたのバリアーなら、問題ないでしょ?」


「まあそうなんだけどさあ。小さい子に見せても、精神衛生とかさあ...」


「小さい頃からの教育で馴れさせておけば問題ないにゃあ!地方を生きるには必要にゃ!」


プルから真っ当な意見が。最近すごいぞお前。(笑)


「そうかあ、んじゃプルの意見を信じてみるかな。お前、良いこと言うな?」


「プルはいつだって良いこと言うにゃあ!」


「嘘おっしゃい。」


短いが致命的なアズ様の一言でプルは撃沈した。全員が笑った。


まずは銃の説明。動きを見てもらうために、射撃場まで。プルは盛んに銃を欲しがったので、考えとくと言っておいた。


それから宿泊施設の会議室でフォーメーションの打ち合わせ。マルタとライエを除いて戦闘準備をした。


瞬間移動には、人数が村長を入れても7人なので、次元部屋の個室を使うことにした。


俺の自宅の部屋のど真ん中に扉が現れた時には、アズ様以下の初心者はビックリしたらしい。プルは扉の後ろを見てぐるぐる回っていた。(?笑)


「これが次元部屋...」


アズ様は感慨深く内装を見回していた。村長は唖然としていて、


「どうなっているのだこれは?」


と、質問してきた。俺はお約束の説明を、以下省略。(笑)


「マニ、扉を閉めるよ。」


「はーい、宜しく。」


再び瞬間移動を始める。今日は虫の大量生息地のすぐ手前まで戦いながら移動する。その次は、いよいよ大規模殲滅戦だ。

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