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最強クラフトで異次元無双  作者: 御自賛
15/22

その14

今日は狩りに出発する日だ。俺とマニは、中東風の衣装で統一した。これ、案外涼しい上に動きやすい!


それとウェストポーチを装着している。物資の大半は次元倉庫や部屋だし、キャンプ用具も要らない。


次元部屋は、内外の経過時間をコントロール出来る。緊急避難場所としても、野外拠点としても活用でき、利用者に万全の休養を保証できる。


戦闘で死ななければ、この部屋に辿り着きさえすれば、この次元で俺達が死ぬことは無いだろう。敵地では意識があれば霊波バリアーかレイスフォームを展開しっぱなしだし、死角はない。


出掛ける前に、ライエの所と実家に寄った。子供の家には数日空けることと、素材が集まるまでというアバウトな設定なので、帰りが何時とは確実に言えないことを伝えた。


ライエから大まかに聞いていたらしく、ご心配なくと言われた。ライエは全く気にする気配はなく、帰って来たらすぐに迎えに来てねとか。はい、そうさせていただきます。(笑)


実家は最終打合せも兼ねてだった。改めて必要物資の洗い出しをしたリストを預かり、帰ってくるまでに大規模殲滅戦の下準備を進める計画の再確認だ。


この作戦は、虫を大規模殲滅するだけでは終わらない予定だ。色々と備える必要がある。


「せっかく来たんだから、お弁当持っていきなさい。」


マルタは主婦らしい意見で二つの包みを渡してくれた。ありがたく頂戴します。


マニは、「現地材料で私が作るのに」とか言ってたけど、マルタの料理には逆らえない様だ。(笑)



「マニ、準備は良いかな?」


「大丈夫。さあ、狩りの時間よ。」


二人で手を繋ぎながら、市場を抜けて正門の方へ移動する。村へ初めて来たときに崖だった所があったが、あそこの側に配置されていた。


一見すると全くわからないのだが、村長の魔石クラフトの技術で、実は地下に正門があるのだ。


そこに近づくと、壁際にエレベーターの様に昇降する5m四方のプレートがある。


プレートには魔石が付いていて、そこへマニがエアフロウの魔法をかけるとプレートが動き出す。魔石クラフトの技術だ。


音もなく静かに垂直移動し、10mほど降下して停止した。するとそこは、ジオフロントになっていた。



崖側の5m先に正門が見える。門は魔石クラフトで出来ており、あのドーム型の屋根と同じ構造になっている。


トンネルの内側の壁や天井に溝がぐるっと一周掘り込んであり、硬質な素材が埋め込んである。その素材から、エアシールドの魔法が展開されている様だ。壁際の腰の高さくらいに魔石が仕込んである。


魔石にエアシールドをかけると、エネルギーフィールドが扉の代わりに開閉する。扉の数メートル先は、目の前が断崖絶壁の崖になっていた。道理で門が見当たらない訳だな。


その先は、さっきより大きい10m四方のプレートが水平移動で対岸まで往復しており、同じ門がその向こうに見える。


対岸から有人の荷車が正門に搬入され、守衛が荷物の確認と安全を確かめているようで、終ると奥へ向かって進んでいく。


ジオフロント内は主に倉庫になっているそうで、村の2週間分の物資が蓄えられているそうだ。


同じ昇降プレートで地上と繋がっており、市場近辺の倉庫と直結しているらしい。後で探検してみたい。



マニは、正門前で対岸からやって来たプレートに乗り、俺を誘った。


足元の魔石に魔法をかけると、人間の歩行速度位の速さで移動し始めた。


下を見ると相変わらず底が見えず、谷は見える限り果てしなく続いていた。結構スリリングだ。あそこもその内探検したいなあ。


対岸に着くと、同じくゲートがあって体格の大柄な守衛がいた。


「お嬢、珍しいじゃないですかい?」


防具を着て武装してたので誰だか分からなかったが、冑の隙間から見える顔はハンコック氏だった。


「ハンコックさん、この前はどうも。」


「ダンナ、まさか防壁の外でデートするんですかい?」


「そんな訳ないでしょ?ハンコックったらいつも冗談ばかり...」


マニが突っ込みを入れた。彼は豪快に笑いながら、


「がっはっは、まんざらでもねえ顔してますぜ、お嬢。何でも狩りに行くとかで。御二人とも気を付けてくだせえ。」


と言いつつエアシールドを唱えた。俺はこちらへ来てから初めて、崖の向こう側を体験することになった。「グレイターエッジ」と呼ばれる崖の向こう側を。



対岸の地下を進み、100m位進むと例の昇降プレートがあり、上に登れた。


何か大きな洞窟の中のような構造だ。プレートの停止先に守衛がもう一人いて、「出口はこっちです。」と、案内してくれた。


マニもこの構造は初めてらしく、こんな風に変更されたんだあとか言ってた。


自然の洞窟かと思ったが、人工物のようだ。サンドテクタイトを魔石クラフトで成形し、数年かけて完成させたらしい。大軍の襲撃に持ちこたえられそうではある。


外に出ると、起伏の険しい地形に出た。出口にも守衛が居て、「あちらが街道です。」と教えてくれた。


今は風がなく焦熱の太陽が陽炎を作り、熱砂が容赦なく生物を炙り、乾燥が喉や鼻腔の粘膜を貼り付かせた。


俺は早速レイスフォーム、マニには霊波バリアーで保護した。環境変化や攻撃まで、あらゆるダメージと状態異常を起こす要素をカットする、万能防護バリアーなのだ。


一応、不可抗力でマニが囮役、俺が隠密で周辺警護役になる。マニは透明化の魔法は習得していない。立場上、隠密をする機会が無かったのだろう。


「マサ、このバリアー最高ね!全然暑くないし渇きもしない。光さえ抑えられているわ。」


「状態異常の原因を全てカットだからね。サット様々だよな。」


「こんなに狩りが快適なら、もっと活用するべきね。いつもは素材集めとか食料確保は死活問題なのよ。」


「この環境じゃあなあ。おまけに虫だろ?しかもサイズが大きいわ、群単位だわ、空飛ぶわで、普通人間が敵う相手ではないなあ。」


「ねえ、マサがその状態だと、触れないし寂しいわ。折角野外で二人きりになれたのに。」


「これこれ、目的を忘れちゃイカンな。今は一応警戒中。」


「分かってるわよ。愛してる。」


「俺も。休憩時間が楽しみだなあ。」


などと二人で余裕の会話しながら進む。マニの話だと、村の出口から十数キロ先に虫が生息している区域があるらしい。何でも嫌と言うほど数が居るそうだ。


「そう言えば食料な、どうやって見つければ良いんだい?まともな獲物が獲れそうに無いのだが。」


「うーん、説明するより見つけたら教えるわよ...ほら、あそことか。」


砂山を指差して、マニが走り出した。俺も透明化して追従する。


マニは腰のシミターを抜くと、エアフロウの呪文で飛んだ。すると、アルマジロの様な生物が突然砂の中から現れて逃走を始めた。


砂山を下りながらジャンプして手足を目一杯開くと、ムササビのように滑空した。かなり速い!


マニがシミターをやや上空から狙って獲物に投げつける。見事に命中して、アルマジロは砂漠に転がる。


「お見事。」


「これはね、サンドラットという奴ね。ああいう性質上、砂山とか高い所に居ることが多いのよ。呼吸のために、砂から鼻頭が出ているから、比較的見つけやすいわ。」


「う、うまいのかあ?」


「何言ってるのよ、御母様の料理をたっぷり食べていたじゃない。」


「あーそうなのね...ちなみにどの料理?」


「貴重なタンパク源なのよ。全ての料理で使われる。一昨日食べていたフリッターがこれの肉よ。」


ああ、あの食感かあ。油の乗った、鶏肉のような味だった。あんなウマイのがこれかあ...。(笑)


「こんなのは序の口だわ。虫だって種類によっては食べられる。都からの輸入に頼っているから今は必要なくなったけど、その昔は狩りで大勢が命を失ったわ。」


「都は地域に貢献しているわけだ。そう言えば、税とかは何を支払っているわけ?」


「さっき言った食用の虫ね、実はスパイスになるのよ。そのうち出くわすと思うわ。それが都では大人気なの。」


「そう言えば、クラフトで虫素材の料理が作れたけど、たぶんそれかな。」


「スパイスは辛くて独特の風味があるわ。あとは岩塩とかね。都の方では塩の産出が少ないのよ。ほら、これ。」


マニが砂の小山みたいな所を持参の小シャベルで掘り起こすと、紫と白が混ざった色の岩肌が見えた。


「...何これ、結構でかいね。」


マニと一緒に一部シャベルで掘り起こすと、4m位の塊の様だ。これ全部岩塩なのか?


「この紫の部分は毒なのよね。白い部分を精製しないと。」


「この塊から、どれくらいの量が採れるの?」


「そうね、この感じだと、1/3位が塩かな?」


つまり含有率が一定ではないのか。まあそれが自然だよな。


「サット、分子分解。」


「了解」


ロックを解除し、岩塩を分解する。一瞬光った後に、消滅した。そして塩と不純物に分子を選り分けて、保存する。


ふと横を見ると、マニがツルハシを出す最中の格好で固まっていた。(笑)


「何で消滅させちゃったの?折角ツルハシを出したのに。」


「ああごめん、分子分解はね、消滅というより分解収集なんだ。実は溶かして次元倉庫に保管してあるんだよ。」


「溶かしちゃってどうするのよ!使えないじゃない。」


「ちょっと待ってね、これをこうして...」


皮袋をポーチから取り出す。2リットル位入るやつ。そして、


「塩精製。皮袋分。」


袋の中にパンパンになる位の塩が粉状になって現れた。マニは小躍りして喜んだ。


「何これ凄い!精製された塩がすぐに手に入るのねっ!」


「あはは、そう言う事。んでこっちが毒。」


紫色の塊が空中に現れ、ドサッと落ちた。


「分解してしまい込んで作り替える。これってすばらしい仕組みだわ。」


マニよ、テレビ通販の外人姉ちゃんみたいな喋りになってるぞ。(笑)


「何よ、言いたいことがあるわけ?」


マニがふくれる。この怒った顔がまた可愛いの何の。(笑)


「いえいえ、何でもないよん。」


マニは不満そうにしていたが、すぐに気分転換したようだ。おおー、何か成長してるな。



塩を収納して再び歩き始めた。1時間位移動した時、何処からか唸る音が聞こえてくる。これは...虫の羽音だ!


「早速お出ましよ。どうやって嗅ぎ付けて来るんだか...。」


隠密のまま待つ。マニはあえて離れたところで、囮になる。数十秒後、後方の砂山の影から、無数の不快な羽音と共に巨大なゴキブリ?が数十体ほど目の前に飛んできた。


パッと見で触覚抜きなら、ざっと8m位の体長だ。正直グロい。(笑)


次の瞬間、マニが全力で逃げ出した。エアフロウで最大速度を出そうとして、恐らく音速を超えるスピードが瞬時に出たらしく、200m先の砂山にドーン!という轟音と共に激突した。バリアーの保護で、多分怪我はないだろうが...。


「おーい、大丈夫かあ?」


メッセージに返事がない。とりあえず、巨大ゴキを分解。


「複数指定。分子分解。」


一瞬でゴキは消えた。緑色に光る粒子が、霧散して消える。マニが突っ込んだ現場まで行き、声をかける。


「マニ、虫は消滅したぞー。」


モソモソと砂が動いて、マニが出てきた。半べそかきながら。(笑)


「エッ...エーン」


小声で泣く意味が分からんが、弱々しく小刻みに震えていた。まあ、あんなんが至近距離に飛んできたら、そりゃあ引くだろうよ!俺も内心びびった。


「もう、居ない?周りを確かめてください...」


「何故に敬語?(笑)マニさあ、そんなんでこの先大丈夫?あの様子では、あんなの五万と居るでしょ?」


「五万とかいうなあ!あれはダメ。生理的に。他は大丈夫だけど、あれはマサが退治して!」


ええ...俺だってあれは嫌なんですがそれは。というか不意討ちで近接されたらどうするのこの人...。


「因みにあれって、素材とか魔石とかになるの?」


「全く。魔石が取れても、小さいのしか確認されてないわ。食料にするにも、寄生虫が多いから無理よ。」


クラフト画面で確認する。ナニナニ、ゴキングとかいう名前らしい。誰のセンスだよ。(笑)


「ゴキングって言うんだなあれ。」


「ひいいいいい、名前を出すなあ!」


俺達、砂漠のど真ん中で夫婦コントやってるみたいだぞ。ギャラリーがいたらウケたに違いない。


「マニ、今度は姿を確認してから殲滅しような。それまでは隠れて様子見で。」


「そ、そうね。あの羽音がしたら全力で隠れるわ。」


「それはそうと、さっきエアフロウの制御、出来てなかったでしょう?」


「あんなに速度が出たのは初めてなのよ。でも、激突して埋もれても全然衝撃はなかったし、砂の中にバリアーの形通りの空間が出来ていたので呼吸も出来たし、中から出て来るのは楽だったわ。」


「今度からは冷静に行動しないとね。次にマデュレ達と来たときに、笑われるぞ。」


「返す言葉もないわ...」


マニがガッカリしたところで、気をとり直して移動を続けた。


そろそろお昼時だが、休憩する場所を探すかな...一応次元部屋ではあるけど、場所を選ばずに入って出たら、虫と鉢合わせとか洒落にならないし。


砂丘の影になっている所を見つけて、次元部屋を展開した。流石に動き回ったので全身汗だく。マニには先にシャワーを使ってもらい、俺は昼飯をマルタの弁当+クラフトメニューで。


今日はあのゴキング後に岩塩塊を3個見つけたので、当分塩には困らない。スパイスも、倉庫にたっぷり。こりゃあイイな。


お陰で豪華に味付けできた。虫素材で作ったサーロイン・ステーキ風タンパク塊の和風おろしがけもどきを二人前。


弁当は薄い生地で食材を包んで揚げた砂漠風春巻きだった。結構時間が経っているのにパリパリでうまそう。


付け合わせはポテトにニンジン、ブロッコリー、サヤインゲンのグリル。ライスもつけた。いつも思うが、この鮮やかな色合いと本物食感をどうやって合成してるのか?


マニが無防備に裸で風呂場から出てきた。髪をタオルで拭きながら、清潔な下着を着ようとする。


「マニ、ちょっとそのタオル貸して。」


背中と脇腹が拭き取れていない。小麦色の肌を拭いて、マニと目を合わせると物欲しそうな顔をする。


「マサ、今日はもう移動は止めにしない?何だか一緒に居たいの。」


「君、お腹空かないの?」


「食事も食べたいけど、一緒に居たいわ。」


「どっちを先にする?もう作っちゃったけど。」


「これ、食事を選んだらあなたに失礼?」


「どっちも俺が作り込んでるよ。」


ふふっとマニは笑った。リラックスしてくれているみたいで良かった。


やっぱりマニには幸せそうな、満足そうな、気持ち良さそうな顔をして貰わないと。それが俺の幸せなのかなと、結婚してから良く思う。


一緒に食事をして、それからマニの気持ち良さそうな顔を堪能した。


俺も彼女も、そういう事は大好だ。いや、相手がマニだからか。相性は実に絶妙で、お互いが一緒に心行くまで、果てるタイミングまでピッタリだった。


あらゆる体の凹凸が驚くほどマッチし、心臓が共鳴するのを相手の鼓動で感じ、お互いの唾液が、涙が、汗が、舌先に触れる全てが快く、止め時を忘れさせる。


いつもこんな感じだが、何故か全くお互いに飽きが来ないのが不思議だ。どちらかが求めれば、結局果てる回数が全部の指を足した数以上になってしまう。


前次元で既婚だった当時は、ここまでの関係ではなかった。何故かすれ違い、飽きに飽き、最後は必要とされなくなり別れた。


比べても仕方がないのは分かっている。今それを考えるのもナンセンスだろう。ふと何かのタイミングでそれを瞬間的に思い浮かべてしまう。早くマニに集中しないと。ああほら、もうすぐお互いイイ顔が見れそうだ...。



何十回目だったか、お互いが落ち着いてベッドに横になり、相手の満足そうな吐息をお互いが吸い込んで額を合わせる。マニは笑み崩れていた。この、幸せそうな表情が俺の最高の幸せだ。


しばらくするとマニが、無言で優しく俺の顔を胸の谷間にうずめながら、頭を撫で始めた。何だか、子供をあやすような掌の感触。ああ、やっぱり見えてしまっているんだな。


「マサ、わたしの事を考えてくれるから言わないのだろうけど、そして思い出してしまうのはあなたが悪いわけではないのだろうけど、最近こうやって一緒になっていると過去が見えてしまうわ。」


「...何かごめんな。」


「これから子供も出来るでしょう?ライエも多分私達と同じになると思うし。あの子達には悲しい思いはさせたくないの。だからね、話してスッキリできる事なら何時でも聞くわ。」


「黙っているのはな、それもあるんだが思い出したくない事なんだよ。でも、君が言った通り不意に思い出すときがあるんだ。でもこれが俺の人生で、修行になるとサットは言ってた。あいつはそういう事で嘘は言ったことない。」


「ごめんなさい、私にはあなたの苦しみをどうする事も出来ないのが悲しいのよ。こんなに幸せで、こんなに愛してるのにね。」


「言葉では言い尽くせないし、ままならないのが人間だよな。今更だけど、こんな俺で本当に申し訳ない。」


「あなたが居なくなったら、私は死ぬわ。あなたは私、私はあなたよ。マサ、私をあなたの中に居させて。もしそれが苦痛なら、私を殺して。いつでもいいから。」


「俺の幸せはね、君の喜びだけさ。それしか俺にはないんだ。無いんだよ。」


愛しているから、お互いが離れがたいから、乗り越えなければならない事があるものだ。俺はマニと強く抱き合っていた。お互いの体が融合してしまうほどに。



次元部屋の時間設定を忘れていた。部屋ではまるっと二十四時間が過ぎていたが、外はまだ2時間が経過しただけだ。マニは変わらず俺にピッタリ体を寄せてくる。


こうやっていてもきりがないので、移動を続けることにした。砂漠の強行軍のはずが、二人のピクニックみたいになりつつあった。いや、ピクニックならもっと真面目にやったのだが。(笑)


夕暮れが迫ってきた。マニも俺もあれだけ運動したのに全然元気なので、夜間も強行軍することにした。数時間歩いて、もうすぐ小規模な虫の生息域だ。


虫は夜行性で元来危険なのだが、俺達二人なら全く問題にならない。途中で地虫とかに襲われたが、魔法を使うまでもなくマニの剣技で切り伏せられていく。


死骸は全て分解して次元倉庫行き、必要物資のリストに乗っ取って蓄え、不要物は棄てた。


「これではらちが明かないわね。」


マニが少し苛立っている。まどろっこしいのが嫌いな性格だものね。こちらをキッと睨むと、


「マサはそう思ってないみたいね?」


「あーうん、だってマニがこういう生活楽しそうだしなと。長引かせたいのか、早く終わらせたいのか。」


「村の事を考えれば後者ね。私の楽しみ優先なら狩りなんてしないわ。」


「次元部屋の中なら時間を気にせずに、ゆっくり出来るからねえ。狩りは急いで行い、部屋で楽しむ事ができるね。」


「そういう事も出来るわね...これがサヴィネ達と一緒だと、ゆっくり出来なくなるわね...。」


「あの二人は、試験運用と訓練が終わったら村の防衛を主任務でやってもらう計画なんだよ。」


「あー後方で村の防衛組なのね。それが良いわね。」


「うん、そうすれば君も将来は気兼ね無く都へ行けるだろうし、親父様も楽になるだろう?マデュレも自信がつくだろうしね。」


「そんな事考えていたのね。うまく行けば良いのだけど。」


「行くさ。俺はそう予測する。」


「あなたの得意分野だものね。未来予測。」


「より多くの人の為になる事ほど、使う労力とエネルギーが足りていれば成就する。」


「何だか宗教みたいね。」


「...宗教なんてこっちにもあるのかな?ああ、ライブラリーからか。」


「そうそう、義父様に観せてもらってるから。前の世界の事とか。」


「宗教とは人の役に立つことだ。各々がそう動けば良いだけで、団体や教義なんてわざわざ要らないんだよ。あるのは「真理」だけさ。」


「そう、それ。なんで人の役に立つことをわざわざ組織でやろうとするの?たまたま同じ目的で集団になるのなら分かるけど。」


「大人数が必要だとしても、あの文化レベルだと組織運営する必要性が薄いよな...何だろう、君とこういう会話をするとは夢にも思わなかったなあ。」


「マサの事に興味があるの。嫌かしら?」


「嫌と言うか、前の世界は一種の毒みたいなものでね。あまり君の心が穢れて欲しくないなあ。」


「義父様に、全部は観せられないと言われたわ。きっと大丈夫よ。」


まあそれなら良いかな。サットがちゃんと管理してくれるなら、信用できるだろう。


「話を戻すけど、そう言う訳で大規模殲滅戦は村の精鋭と親父様、それと俺達で行く手筈さ。都にも連絡は入れてあるようなので、そっちからも猛者が来るかもね。」


「気合いが入るわね。早く始まると良いわ。」


さすがマニ、勇気はあるんだよなあ、この子。




俺達の実力を警戒してか、ここ一時間くらい虫の気配や殺気がない。マニの提案で、まとまった量をおびき寄せることにした。


マニがエアフロウで空中へ浮遊し、ヌーンライトを唱える事にした。


ヌーンライトは、1km周辺が昼間のように明るくなり、それに虫が大量に寄ってくる魔法だ。昔は大規模な狩りの時は、これでまとめて虫を狩っていたらしい。


「マニ、準備は?」


「万全よ!」


マニは両手を上げ、掌を上に向けた。呪文を唱え始める。


「全知なる神の加護をわが頭上に現したまへ!闇を祓う光源は今ここに召喚された!!」


正に呪文通り、彼女の上空に直径5m位の光の玉が現れた。そして30m位の高さまで素早く移動すると、強烈な光を発した。周囲が昼間のように明るくなる。


すると、早速複数の違った羽音や足音があちらこちらから聞こえてきた。


大きさ1m位の縞蚊を巨大にした奴、フライビー、8mの蠍の巨大な奴、5mのハエとアブの合の子、20mの蜘蛛型の奴、ゴキング、2mのカゲロウの毒々しい色の奴、etc ...


全てが各々数十体の群を成して、一点目掛けて向かってくる!


マニ、ゴキング大丈夫なのか?でもこれだけ大量だと全部気持ち悪いからどうでも良くなるな。



マニが再び呪文を唱え出す。俺はバリアーと残敵フォローに回るつもりだ。


地響きで周辺の砂が踊り始めた。巨大な地走り達が、羽虫の大群が、お互い喰い合いながら迫ってくる!


「雷神よ、青き光の奔流を示せ!全てを貫く稲妻は今ここに召喚された!!」


ヴーン。パン!パパン!バチバチバチッ!ズズズズーン!!


青い閃光が渦を巻きながら球状の塊を成し、超広範囲に雷槍の雨を降らせた。雷撃が雷撃を呼び、連鎖してマニを中心に不規則な蜘蛛の巣のような形状で走り回る!


周辺の空間全体が、稲妻の嵐のように光狂い、再び静寂の世界が訪れた。


焦げた生物の臭い、燻る青い炎、いまだに僅にこだまする轟音、マニを中心に大量の死骸の山。


稲妻の残滓が死骸や砂の大地を毒蛇のように這いずり回っている。


「あーまたやっちまったなあ...ていうか、この前の実験はあれでも相当避雷針で吸収されてたんだなあ。」


マニが降りてきた。どんなもんだい!という顔をしながら。


「この前の実験では、こうならなくて良かったわ。マサ、これって中々のものでしょう?」


「うん、中々とか言うレベルじゃないぜこれ。凄過ぎて、引かれるレベルだな。」


「えー、そうかしら...」


「え、判らんのかい!これは、正直ヤバイ。人間のレベルじゃないと判断される。下手をすると恐れをなした支配者層とかに敵視されかねないな。君は全く悪くないけど。」


「えっそんなに?これ位有りかと思ってたわ...。」


「これね、次回の殲滅は半分の力でやってみよう。それでも俺は充分だと思うよ。マナの残量とかはどうかな?」


「うーん、1/5消費って所ね。まだ余裕よ。」


「俺達、想像の上を行く化物性能なんだな。いつか都に行ったときは、セーブするんだよ。そうでないと、確実に危険人物として目をつけられるな。」


「...分かったわ。気を付けます。」


うーん、とりあえずこの死骸の山を全部分解しますかね...。


「サット、分子分解。」


一瞬まばゆく光った後、あれだけ大量にあった骸が一片も残らず消滅した。サットが俺だけに意思伝達してきた。


「えーと、あまり素材に適さないものは、捨てちゃっても良いかな?」


「あーうん、マニに知られない方が良いね。ゴキングとかゴキングとか。村長のリストに準拠で。」


「了解。」


さて、素材や魔石はどれくらい集まったかな...おお、銃とリアクター分丁度ピッタリあるな。魔石に至っては余剰ぎみだろう。


「マニ、素材が集まったから、一度村へ帰ろう。」


「まあ、これだけ倒せば当然でしょうね。」


「うん、マデュレ達の訓練もあるから。早めに戻らないと、大規模殲滅に間に合わなくなってしまう。」


「うん、分かった...じゃあ、帰ったら次元部屋使って夫婦水入らずね。」


「結局しっかりと楽しんじゃう訳ね。(笑)」


マニを次元部屋に入れて、レイスフォームの瞬間移動を使ってみる。一度行った場所なら、何処へでも瞬時に移動できる。


次元部屋は、仕組みはわからないが俺の体に関連付けてあるので、部屋内に存在するものは一緒に運べる。


辺りの風景が白く霞んで、ヴン!という音と共に霞んでいた景色が見え始めた。思った通り自宅の部屋の中だ。


「マニ、着いたよ。」


「えっ、もう着いたの?」


扉から出た彼女は、目を丸くした。因みに次元部屋の時間は通常に戻してある。




まだ時間は深夜過ぎだ。全然眠くないので、マニには悪いが新クラフトを開始する。まずは超魔導リアクターからだ。


次元部屋のカテゴリーで「工房」というのがあるので早速アクティベート。するとサットが、


「工房はここでは展開できない。入り口の扉のサイズがとても大きいからね。」


「じゃあ、教練場とかならokかな?」


「あそこは人目につくな...まあ、今時間なら大丈夫かな。」


マニを誘って教練場まで移動する。もう一度アクティベートすると、高さ5mで幅が10mの大きな扉が出現した。


「おー、でかいなこれ。何でこんなに?」


「そりゃあ、製作するものが大きいと、部屋から出せないからだね。これが最小サイズさ。」


「...と言うことは、もっとでかい構造物も作れるんだな?」


「うん、そうだね。それはもうちょっと素材が集まってからだね...。」


オイオイ、いったい何を作らせようってのかな?巨大兵器とかかな?それとも軍事拠点でも作って運んで設置とか...?


まあ、材料がないとね。今先にやれる事をやっちゃいましょうかね。


室内に入ると、これまた巨大な部屋だ。見た感じで高さ20m、幅50m、奥行き200m位あるぞ?大工場並みだ。部屋の奥には大型ハンガーがある。


構造物とかを組み立てる為だろう。鉄柱が組んであり、クレーンとか道具箱や工具も完備している。


「凄いわね。義父様、こんなに広いスペースなら、まとまった人数をここに入れて移動できそうね。」


「そう、実は集団用の安全地帯でもある。マニも解ってきたね。」


「えへへ。ほめられちゃった。」


「なるほど、これなら瞬間移動して、すぐに一個中隊くらいは展開できるな。このスペースでキャンプも出来そうだ。」


工房の中央は開けていて、何も置いてない。サットの話だと、ここで超魔兵器クラフトを展開する設定らしい。早速試してみよう。


「サット、オペレーターを頼む。」


「了解。」


目の前の空中に、5m立方体の透明なガラスケースのようなオブジェが現れた。


「素材分子充填。分子プリンティング開始...終了。精密形成開始...終了。魔導回路プリンティング開始...終了。強化コーティング開始...終了。」


3Dプリンターの様に、透明な箱の中でオブジェが形成されて行く。それも猛スピードだ。五分位で50cm四方×厚さ5cmの、装飾の凝ったオブジェが完成した。


中央に大きな翡翠のような色の石がはめ込んであり、近付いて覗くと半透明で、中に精密な回路らしき模様がプリントされている。


「義父様、これがリアクターかしら?」


「そうだね。例えるなら、考えるマナ・ジョイントという感じかな。」


「考えるって、これ生物とかなの?」


「生物とは違うが、かなり似ている部分はある。人間の脳を模しているのさ。これをごらん。」


お馴染み解説動画だ。マニの何が凄いって、こういうコンテンツについて行けている事だ。こういう環境の人間だと、見たことない物は恐れるか拒絶する方が普通かと思うんだけどな。


「私、賢いでしょ?エヘヘ。」


マニが照れる。賢いかは分からんが可愛い。(笑)


一通り説明が終わると、管理者という話になった。まあ村長かマデュレかな。後で相談に行こう。マナ・ジョイントの強化もしなくては。


さてお次はレールキャノンだな。これは3分位で出来上がった。普通バージョンの方は2分だ。弾丸は通常のクラフトで作れた。とりあえず1000発分確保。後はサンドテクタイト製の射撃練習用ターゲット、試し切り用の等身大かかし。


「...案外長いわね。1.5m位ね。あら?サヴィネ用の銃には先端に大きな刃物が付いているわね。」


「ああ、それは銃剣っていうのさ。近接になったら槍のようにして使うんだよ。」


「...これ、私も欲しくなっちゃった。(笑)」


「分かった。もう材料がないから、次の狩りの後ね。大規模殲滅には間に合うから。」


「ええ、それでいいわ。ありがとうマサ。」


「明日、親父様達に相談しに行こう。朝になったら実家とサヴィネにメッセージを入れてもらえるかな?」


「ええ、分かったわ。」


流石に疲れた気がする。クラフトはエネルギーを消費するからな。瞑想するとしよう...。




軽く瞑想したら、疲れは取れたようだ。今は午前10時だ。マニが朝食の準備&各々へメッセージしてくれてた。


「おはよう、結構疲れ取れた。」


「おはよう。マサ、顔を洗ってきて。朝食にしましょう。」


「おー、うまそうじゃないか。今洗ってくる。」


二人でゆっくり飯を食べて、少しイチャイチャして、実家に向かった。大事な夫婦のコミュニケーション。(笑)


実家では、家族全員とサヴィネがお茶を飲みながら待っていた。


「ただいま親父様。」


「お帰り。昨日の今日でもう集まったのかい?」


「ええ、昨夜マニの魔法で相当数を一網打尽に。」


「御父様、ヌーンライトを使いました。余裕で撃破よ。」


「...何だか恐ろしい話を聞いたな。一体何体狩ったのかな?」


「間違いなく200体は越えていますね。お陰で例のものが出来ました。マデュレとサヴィネ用の武器も昨夜作りました。」


「リアクターとかいうやつかな?早いね。」


「義兄さん、大変だったでしょう?疲れていませんか?」


「大丈夫、これから渡すよ。その前に、何処か弓の射的場はないかな?」


「それなら教練場の奥にあるわ。」


サヴィネが案内してくれるそうだ。案外二人とも乗り気だな。


「親父様、村中のマナ・ジョイントの強化をしたいのだけど、集められます?」


「ほう、強化だって?」


「ええ、およそ10分で終わります。」


「そんな強化で何か違いが出るのかね?」


「恐らく10年位は交換しなくて済むのではと。」


「何と!そんな事が出来るのかね?それは凄いな...」


「御父様、これを見て。」


俺がリアクターを背負ってきていたので、マニが荷をほどいてテーブルに置いた。


「...これはどうやって作ったのかな?この魔石の中に刻まれているのは魔導回路だね?都にもここまで大きくて緻密な魔石クラフトの構造物は無い。それにこの装飾自体が、空気中のマナを取り込む儀式用の様式になっている。」


村長は冷や汗をかきながらリアクターを注意深く観察している。


「親父様、それをちょっと貸してください。せーの、ほりゃあああああああ!」


俺は、外の踊り場まで両手でリアクターを運ぶと、地面に向かって投げつけた。ガシャーンと音がして、地面にめり込んでいる。


「マサ、何て事を!せっかくの傑作が台無しではないか!」


村長は追いかけてきて、唖然としている。俺はリアクターの上に飛び乗り、ガンガン両足で踏みつけまくった。


「ああああああああああああうりゃああああっっっっっっ!」


最後に正拳突きで一撃。ゴキン!と良い音がした。(笑)マニ以外の皆が呆然としていた。俺は、リアクターを回収し、砂や埃を落として階段を上った。


「親父様、失礼しました。これは検証です。」


「検証?ああ、強度の検証かな?」


「ええ、それをこれからお見せしようかと。中に入りましょう。」


テーブルに、リアクターを置いた。傷ひとつ入ってない、装飾さえあれだけ踏んだのに何処も破損してない。少し汚れているが、巨大魔石も同じく。村長は感嘆の声をあげた。


「本当だ、この時点でマナ・ジョイントなら破壊されているな。どんな強度をしているのか?」


そして、イグニッションワードを村長に唱えて貰った。これを唱えたものが、リアクターに管理者として網膜&声紋認識される。ついでに回路が衝撃で切断してないことも証明できる。


「管理者として承認せよ。認識開始。」


村長が魔石に顔を近付けて命令する。これがトリガーとなって管理者認定される仕組みだ。


「アクセプト。認識&オートドライブ開始。」


「何だ、魔石が喋ったぞ!?」


「親父様、そのまま魔石を見つめていてください。」


魔石から光の帯が村長の眼球に照射された。上から下に読み取りをする。数秒で完了した。


「声紋、網膜パターン認識。管理者登録完了。充填モードへ移行。」


ヴーンという音が鳴り響く。魔石が輝き始め、自動で周囲のマナを取り込み、蓄積を始めた。村長は感涙しながら俺を熱くハグした。


「素晴らしい!マサよ、お前は魔石クラフトの天才だ!都でもお前の技術に匹敵するものは居ないであろう!」


「恐縮です。それとこれは魔石クラフトではありません。私が秘密と言っていた技術で、超魔兵器クラフトと言います。」


「何と!そのような技術は聞いたことないぞ。他にもあのようなクラフトが出来るのかな?」


「材料がないので、今は無理です。これだけの物なので大量の素材を必要とします。が、一回作るとこの村の使用頻度なら百年は持つと思う。」


「うーん、是非私にも教授して貰えないだろうか?これは技術革新だぞ。」


「考えておきます。何しろ色々掟があるので。安易に秘密漏洩できないのですよ。」


「是非検討してほしい。これだけの技術には滅多にお目にかかれないだろう。秘密にされるのも分かる。」


「それで、マナ・ジョイント強化は許して貰えますか?」


「勿論だとも。今外して来る。哨戒の連中にドームが一時消えることを注意してこないと。」


村長は早速出かけて行った。帰りは20分後位らしい。その間にマデュレとサヴィネに銃を渡して機能説明をする。


「まず、これを渡すので確かめてくれ。」


「私のとサヴィネのでは、少々形状が違いますね。」


「本当ね、私のは先に槍の穂先みたいな刃が付いている。」


「あーあ、この筒みたいなのは遠見筒ですね。覗くと十字模様が付いてる。義兄さん、これはかなり遠くが見えそうですよ。」


「えー、どれどれ?うわー、目が回りそうね。」


サヴィネが興奮しながら見比べている。オモチャを貰った子供みたいな感じ。(笑)


「マデュレ、ちょっと貸して。まず、ここの突起を押すと、ここがスライドする。」


銃身上面のカバーがスライドする。すると左側面に隠れていた楕円形の穴が現れる。そこへ弾丸を入れるところを見せた。


「この武器は、金属の弾丸(礫)をこの先端の穴から発射させ、遠距離の敵を殲滅する武器だ。その礫がこれで、隠れていたこの穴に詰める。こんな風に。」


ガシャ、ガシャ、ガシャ...実際弾丸セットして見せる。大容量マガジンで、50口径用の弾が30発入る。


「セットできる弾丸は30発分。この引き金を引くと、この筒の先端から発射される。射ち終わったら再度繰り返し。以上だ。」


二人は懸命に、マガジンに弾を込め始めた。終わった頃に、村長が帰ってきた。数個のマナ・ジョイントを持ってきている。


「マサや、手早くやっておくれ。虫が何時来るか判らない。」


「すぐ終わりますよ。」


手に持ってクラフトで分解。再構成。強化コーティング終了。


「これで終わりました。次は登録です。」


「登録とは?」


「さっきのリアクターに認識させます。すると登録状態になり、このマナ・ジョイントが魔法を自動で発動します。」


「おおー、それで故障したときだけ手を加えれば、後は放置で良い訳か。労働力軽減だな。」


「これからは親父様も自由が効くようになるかなと。」


そう言いながら、リアクターに登録させる。村長にマナ・ジョイントをリアクターの魔石に近付けてもらい「魔石登録」と発言する。


「管理者確認...完了。魔石登録開始。対象分析...完了。マナ・ジョイント1を登録完了。」


リアクターは認識した。他のも村長に登録してもらう。


「これで良いのかな?」


「ええ、大丈夫です。次は管理者権限で魔法を登録してください。そして発動条件を口頭で指示すれば、全部完了です。」


「どうやれば?」


「ここへ立ってみて。それで、魔法登録と言ってみて。」


「ここかい?...魔法登録。」


「管理者確認...完了。魔石に向かって魔法を発動して下さい。」


男性の声で、指示が出る。マニは自分もやりたそうに見ている。村長がエアシールドを唱えると、魔法が魔石に吸い込まれた様に見えた。


「魔法解析...完了。エアシールド登録完了。何番のマナ・ジョイントに登録しますか?」


「では1、2、3番で頼む。」


「完了。まだ登録するものはありますか?」


「魔法登録。」


「了解。魔石に向かって...」



少し手間取ったが、全ての魔石に魔法を登録し終った。次いで発動条件を登録した。これで、ドームは魔法解除後に即発動、正門とかはマナ・ジョイントに物理的接触で発動&解除する様に設定した。


「これで完了です。後は問題にならない程度に弄くり回してみて下さい。マデュレを副管理者にしておくと、良いかもね。」


「に、義兄さん、私は嬉しいですよ!少しでも村に貢献出来るなら、何でもやりますよ!」


マデュレが、生き生きしている。それをサヴィネが嬉しそうに横から見つめている。


「マデュレ、まだ銃もあるわ。今日から、私達が村の為に主役で活躍できる日が来るのよ!」


マデュレは興奮で震えていた。よほど嬉しかったのだろう、今までで一番輝いて見える。




「サヴィネ、案内して貰えるかな?」


「ええ、こっちよ。」


家族全員とサヴィネで、教練場へ向かう。射撃場は、この前マニが雷撃実験したエリアの奥にひっそりとあった。地味な感じは否めない。


それには、理由がある。あの巨大な虫相手に人間の弓なんて、大したダメージを入れられないということだ。


それにあのスピードで飛び回られては、相当な腕の狙撃手でもないと当てられもしないと言う訳だ。たまにそういう達人が居るので、マイノリティの為に射撃場が存在している。


しかし、それも今日から変わる。職員がいぶかしげな目でこちらを見ているが、そのうち変わるだろう。


持ってきた人型のかかしを射撃場の端に設置し、その胸部にターゲットを取り付けた。最初は20m位の位置からかな。


「マデュレ、レールキャノンを持ってそこに立ってごらん。」


「こうですか?」


「そうそう、ちょっとそれ貸して。こう構えて、この引き金を引くんだ。まず、スコープを覗かないで撃ってごらん?」


「義兄さん、こうですか?」


「衝撃がやや大きいから腰を入れて、撃った瞬間に銃口が上へ跳ね上がろうとするから、上から銃身を抑えるんだ。こうね。」


「ふむふむ、こうですね!」


「そうそう。で、先に突起が出ているでしょう?それの色が付いている部分をターゲットの中央に合わせるのさ。後は体感で覚えるしかない。」


「分かりました。い、行きますよ...」


マデュレは慎重に自分のフォームや銃の狙いを定めながら、トリガーを引いた。


「パアアアアーン!」


結構派手な音がして、サンドテクタイト製のターゲットに穴が空いた。マデュレは不馴れなせいか、跳ね上がった銃身を抑えようとして、結構よろけた。


「おおおーっ!結構反動が来ますねこれ。」


でも、マデュレは手応えを感じたらしく、嬉しそうに目を輝かせる。ターゲットの穴は、ど真ん中の少し下寄りに空いていた。初めてにしては上出来すぎる結果だ。


他のギャラリーは当然どよめいた。サンドテクタイトはダイヤモンドより硬質な素材なのに、それに穴を開ける性能とは誰も想像できなかっただろう。


厚みも20cmはあるが余裕で貫通しており、かかし胸部の強化セラミックの支柱を砕いてめり込んでいた。


女性職員の一人が近寄ってきて尋ねた。


「大変凄いものを...これは何という武器でしょう?」


「まだ試作段階なので、都には内緒にしていただけますか?」


「そういうことなら大丈夫です。完成したら是非、都に報告させてください。これは害虫駆除に新たな戦術が加わることになりそうですよ!」


「そのつもりでこれを作りました。非戦闘員でも、戦えるようになります。後は勇気だけです。」


「素晴らしい。歴史が変わります。この事で、どれだけの人命が助かることか...」


職員は感動している。過去に色々あったのだろうか。


「俗称ですが、「銃」と私の居た地域では呼ばれていました。遠近両用の射撃武器です。」


「なるほど!サヴィネさんのは先端に刃物が付いてますね?」


「まあ、興味があったら見ていてください。まだ試験中ですので。」


「分かりました。お邪魔はしません。」


職員は仲間の元に戻っていき、皆で何やら話し込んでいる。へへっ、実はこれも狙いの内なんだよな。


「マデュレ、今度はこっち。」


ターゲットから100m離れた所へ移動した。今度はスコープの出番だ。


「義兄さん、ちょっと離れすぎでは?」


「マデュレ、今度はそのスコープを除いてごらん?」


「なるほど!こういうシーンで使うんですね!あっ凄い、的が目の前にある!」


マデュレはメチャクチャ楽しんでいる。サヴィネは羨ましそうだ。


「サヴィネ、君には違った戦い方を教えたいんだ。待ってて。」


「分かったわ。楽しみよ!」


「マデュレ、今度は反動を計算に入れて体軸を固定し、狙いを定めて。」


「はい、義兄さん!」


マデュレはスコープを覗きながら腰を入れて、前屈みで狙いをつける。そして射撃。


「義兄さん、今度はど真ん中ですよ!」


見事に中央に穴が空いた。この衝撃で、かかしは真ん中から折れてしまった。村長がターゲットに近づいて、確認する。


「...驚いた。これの硬度を軽々と貫通するばかりか、あの遠距離からこれだけの精度が出せるわけか。確かに訓練すれば戦力になりそうだ。」


マルタも、心配ながらも安心した風だ。


「...そうね、こんな感じならマデュレでも戦えそうねえ。でもこれ、敵が接近してきたらどうするのかしら?」


「そう、さすが御母様。そこでサヴィネの出番なのですよ。」


「まあ。サヴィネに近くの敵を対処してもらうわけね。それなら安心だわ。」


「サヴィネ、おいで。マデュレは、新しいターゲットにスコープを使わないで後50射撃して。体を慣れさせる訓練だから。」


「分かりました義兄さん。終わったら報告しますね。」


サヴィネを新しく設置したかかしまで連れていく。マニと村長も一緒についてきた。


「サヴィネ、君にはマデュレの護衛兼戦闘員として、シューティングアーツという格闘術を教えよう。」


「聞いたことありませんわ。どうやるのです?」


「君は格闘がハイ・マスタークラスなので、基本は省略する。新たに覚えてもらうのは、銃剣に関する扱いと動きだ。えーと、まずは射撃から。」


マデュレと同じ工程で射撃をしてもらう。予想通り筋が良く、ほとんどよろめかずに発砲の衝撃を逃がしている。


「...この威力なのに、この程度の反動とかあり得ませんわね。凄い武器だわ...」


「射撃は慣れると、固定物は50m位の距離までなら余裕で当たるようになる。問題は動いている相手に当てる偏差射ち(AIM)だね。それは、狩りの時に練習しよう。」


「分かったわ。」


「次は銃剣だね。実はここからが本番だ。」


サヴィネの銃は、ストックが大きくなっていて近接攻撃がやり易くなっている。かかしを相手に、色々な形を見せる。


「まずは銃身で相手の近接攻撃を受け流す。貸してごらん。」


銃を受け取り、防御の構えを見せる。職員に練習用の木刀を持ってきてもらう。


「マニ、俺に剣で攻撃してみて。」


マニが嬉しそうに了承して、剣を構える。


「キエー!」


下段から逆袈裟に切り上げる。それを銃身で受け流す。次の瞬間には俺が鋭い銃剣の突きを入れる。マニは体さばきでかわして斬撃を上段から叩き込む。


銃身で上手く左へ流し、ストックを下から突き上げる。マニは見切ってそのまま後に飛んで、後方宙返りする。そこで落下硬直を狙って発砲する音を口で出す。


「パーン!これで、マニに風穴が空いたね。」


「そうね。と言うかこの格闘技、ズルいわね。動きが止まった瞬間を狙われて一瞬で終わりですものね。」


「サヴィネ、見てたかい?」


「...これで金属剣とかこん棒を受けられるのかしら?」


「大丈夫だろう。心配なら、マニに付き合ってもらうといい。相当頑丈に出来ているはずだよ。」


「動きは大体分かったわ。凄く面白くて強い格闘技ね。この銃という武器の特性を生かしきっている感じね。」


「シューティングアーツって言うんだ。サヴィネがこの地域では初のマスターになって貰いたい。マニと訓練すれば、良い練習相手になってくれるだろう。」


「あなた、私だけ剣とか酷くない?」


「何を言う、いくら銃でも弾が切れた瞬間に広範囲魔法かけられたら、格闘どころではないだろう?それに新しい戦術が出来たと言うことは、新しい対処法も研究しなくては、と言うことだよ。」


「あっそうかあ、私はこのスタンスで避けるとか対処方法を考えれば良いのね。まあでも、あなたが居ればバリアーで通じないでしょうけどね。」


「いない場合だってあるかも知れない。子供達を守らないとだろう?」


「...そうねえ、常に新たなシーンを考えて、対処法を見つけないとね。でもある意味これが出来れば死なないものね。」


「そうそう。無駄はないと思うよ。お互いに研鑽するのさ。」


「マサさん、さすがね。マニがあんなに素直に人の言うことを聞いているなんて。」


「サヴィネ。」


「はいはい、横槍失礼しました。(笑)」


マデュレが試し撃ちを終えたらしく、こちらに近付いてきた。かなり満足しているらしく、汗を拭きながら笑みがこぼれた。


「義兄さんのお陰です。これなら、何とか戦えそうな気がします。後は慣れ次第ですね。」


「えーと、マデュレの場合、もうひとつ講習を受る必要があるんだが、二人ともこれから短時間の狩りに行こうか。」


「こ、これからですか?でも準備とかが...」


「そこはね、この人の能力があれば問題ないのよ。ね?あなた。」


「まあそうだね。二人とも、暗くなる前には帰ってこれるから、行こう。」


やや不安な顔をしながら、二人とも了承した。ここでは目立つので、一番近い自宅まで移動することにした。実家とは逆方向なので、村長とマルタはここで別れた。




自宅に到着した。庭で次元部屋を展開する。空間からドアが現れたのを見て、マデュレとサヴィネは驚く。


「こ、これは何でしょう?扉みたいですが...」


「いきなりでビックリしたわ。扉の後ろには何もないのに...あれ?後ろから見ると扉が消えるわ。」


マニがうんうんと頷く。


「私もね、最初はビックリしたわ...」


「これはね、空間を制御する魔法だと思ってほしい。魔法で異次元に部屋を確保した訳だ。中に入って。」


「ここで靴を脱ぐのよ。」


マニが自慢そうに案内する。素人二人は、現代日本風の内装と設備をあちこち見回している。


「これは、浴場ですかね。部屋に水場があるなんて...トイレも綺麗だ。」


「さあ、二人ともこっちで座って。移動は一瞬で済むわ。」


「?」


「じゃ、始めるよ。」


扉を閉める。レイスフォームをアクティベート。そのまま上空へ浮き上がる。


「瞬間移動。」


周辺が白く霞む。ヴン!という音と共に、一瞬光って消えた。




白いもやが晴れると、砂漠に到着していた。地面がまだ焦げている部分がくっきり見える。昨日戦場だった場所だ。


次元部屋を開く。扉から、三人がマニの先導で出てきた。案の定、二人はキョロキョロ周囲を見回している。


「義兄さん、ここは何処ですか?」


「昨日、虫を大量に狩った話をしたろう?ここがそうさ。」


「確かに地面が焦げているわね。何かが焼けた臭いもするし。でも確か...」


「そう、村から十数キロ先まで瞬間移動したのさ。」


素人二人は顔を見合わせた。さすがに見覚えがある様だ。村の近くの街道だし、当たり前だな。


「全員に霊波バリアー。」


三人の体表が、淡く光る。サヴィネがすぐに気付いた。


「あれ?暑くない。いきなり快適になったわ。」


「本当だ。これはなんです?」


マニが得意気に説明する。俺への質問なんだけどな...ま、いっか。(笑)


「霊波バリアーよ。あらゆる攻撃と状態異常を発生させるエネルギーを遮断するわ。どんな攻撃も、よ。」


マニはいきなり剣を抜くと、マデュレに斬りかかった。


「姉さん待って...」


ザッ!と音をたてて、剣筋が曲がり砂地に突き立ててしまった。サヴィネも呆然としている。


「マニ、乱暴は止めなさい。二人とも驚いているじゃないか?」


「これが霊波バリアー...今あり得ない方向に曲がったわよね?」


さすがサヴィネ、良く見えてる。


「全ての攻撃で、こうなるのさ。今のは当たれば致命的だろう?」


サヴィネは頷いた。マデュレはホッと胸をなでおろす。


「さて、素材集めついでに狩りをしよう。二時間位でいいだろう?」


プランの確認を含めて、話をマニに振ってみる。少し考えてから返事が返ってきた。


「そうね、早く大生息地へ近づかなければね。出来るだけ歩かなくては。」


「ここいら辺のは、夕べ大方やっつけちゃったからなあ。」


「ひょっとして、姉さんが?」


マデュレが俺にこっそり聞いてきた。俺は無言で頷いた。彼は「やっぱり」という顔になった。


四人でしばらく歩くと、早速地虫が出てきた。比較的動きが遅いので、サヴィネやマデュレの格好の的だった。それを俺が分解して集める。


近づきすぎた敵はマニが剣で対応した。ついでに岩塩とか食材も確保した。


サヴィネは、赤色の血でなければ大丈夫だということが分かった。聞いてみたら、血を見ると意識が遠くなるそうだ。ワインとかダメそうじゃんか。(笑)


まあ、虫相手なら問題ないだろう。誰かが怪我で出血したら...その時に考えよう。(笑)




一時間くらい経った。街道を歩いていると、目視できるギリギリの距離の上空に虫の集団が飛んでいるのが見えた。距離はざっと1000m弱という所か。


しばらく観察していると、特定種が複数の小集団で頻繁に往来している。ちょっと多すぎないかこれ?ハエと虻の合の子みたいな奴だ。「ハエアブ」という名前らしい。誰だよこのネーミングセンス...。


どうも、遠くに見えるひときわ小高い砂山の天辺付近が巣になっているようだ。盛んに複数の羽虫が出入りしているのが見える。


マデュレに注意を促して、遠距離狙撃の練習をすることにした。


いよいよこの「レールキャノン」というネーミング通りの能力を試すときが来た。マデュレに使い方を説明する。


「まず、モード切り替えからだ。銃に触れた状態で''モードチェンジ''と発言すると、その言葉がトリガーとなり、オーナー登録される。やってごらん。」


マデュレは登録を行った。ボイスナビゲーションが「登録完了。キャノンモードに切り替えます。」と回答した。


「これで、自分以外は銃を使えなくなったよ。マデュレ、単独で飛んでいる奴をスコープで狙ってごらん。赤い光が虫に当たっているのが見えるかな?」


「はい、見えます。もしかして、あそこに当たる仕組みなんですか?」


「ご名答。レーザーマーカーと言って、あの光が当たっている所付近が命中ポイントだ。相手が動き回る場合は、実際は着弾点がズレる。それを先読みしてマーカーを相手の進行方向へややずらし、誤差修正するんだ。この動作をAIMと言うのさ。サヴィネの方も、遠距離ができないだけで同じだね。」


二人は顔を見合わせた。サヴィネが首をかしげた後に、


「マデュレのは理解したけど、私のはどういう意味があるのかしら。近距離なら先端の突起で狙えるわ。」


「そうだね、まずは見てもらった方が早いだろう。マデュレ、単独で飛んでいる虫を見つけて、狙撃してみて。今度のモードは、引き金を引きっぱなしでチャージが始まるので、離すタイミングはボイスナビゲーションが教えてくれる。」


「分かりました。では行きますよ!」


狙いを定め引き金に指をかけると、ナビゲーションから指示が出た。


「引き金を引いた状態で固定して下さい。チャージ開始します。」


マデュレはそれに従い、引き金を引いたまま3秒位待った。銃身から微かにヴーンといううなり音が聞こえる。


「完了。トリガーを離すと射撃します。」


と、声がした。スコープを覗き、赤いマーカーが外れないように追いかけながら、マデュレはトリガーを離した。すると「ヴン!」と低い音がして、次の瞬間狙っていた虫が消えた。


「命中しました。誤差補正5%です。」


補正とは、レーザーが照射されているターゲットに対して自動で射角を調整する機能で、全方位に10度まで修正が効く。


つまりドヘタクソでない限り当たるのだが、マデュレは遠距離射撃なので素人にしてはかなり上出来だろう。これからもAIM練習は必要だろうが。


「何だこれ、虫が消滅したように見えましたよ!」


マデュレは驚いている。俺は他の虫に気付かれていないか、暫く周囲を警戒した。どうやら隠密狙撃は成功したようだ。


「そう、これがこのレールキャノンの真骨頂だよ。名付けて「分子加速砲」というのさ。金属の弾を分子分解して高圧で圧縮した粒子弾をほぼ無音で超高速発射するんだ。」


「でも、声が出るから近くの敵には気付かれるんじゃない?」


マニがもっともな意見をした。


「それはね、後でボイス無しに出来るんだ。ナビゲーションは初心者用。マデュレが銃にボイスオフと命令すれば、音声が出なくなるのさ。解除はボイスオンと命令ね。スコープ内のランプが緑になったらチャージ完了だ。今のはサヴィネも見ていたよね?」


「ええ、ずっと見てたわ。」


「今度は君の番だよ。使い方は同じで、比較的近くの虫を狙ってみようか。」


しばらく物陰に隠れて待っていると、上空を飛んでくるハエアブがいた。サヴィネは狙いを定めようとする。俺は小声で、


「サヴィネ、突起を見ないで直接銃を虫に向けてレーザーマーカーを当ててごらん。」


サヴィネは頷いて、腰だめで銃を構え、マーカーを飛んでいるハエアブに合わせた。次の瞬間、サイレンサーの「ボリッ」という小さな発砲音と同時に虫が落下した。


「意味が分かったわ。私はこっちの方が狙いやすくて好きよ。」


「君の銃は、比較的短距離用で広い視野を保ったまま攻撃できる。今の射撃距離だとほぼAIMなしで当たるし、連射が効くんだ。」


「...つまり、狙撃中のマデュレに近寄ってきた虫を、俯瞰的に状況を見ながら連続処理できる訳ね。」


「その通りだよ。近接格闘の機能も、そういう理由で備わっている訳さ。護衛向きな機能でまとめてみました。」


「なるほどねー!すごい便利ですわ。」


サヴィネは喜んでいる。マデュレはボイスオフにして、ナビゲーションなしで確かめている。


弾を電磁加速するのにエネルギーが必要になる。実は小型のリアクターが内蔵されているんだよねこれ。


「マデュレ、村の壁の高さより下でこのモードを使った射撃訓練は禁止ね。銃の威力は村を囲っている壁に軽く穴が開く威力だからね?」


「...恐いですね。よく注意します。」


「本当ね、強い代わりにリスクがあるという訳ですね。」


「ああ、注意して欲しい。戦況を見極めて、周囲をよく観察して、味方に被害が出ないような使用方法を考えてくれ。」


「理解しました。道理で村では訓練できない訳ですね。」


「そうね、間違ったときを想像したくないわ。」


この二人なら大丈夫だろう、と俺は確信した。ここまで見ていて、各々が慎重に行動していたのを確認できた。若いのに得難い素質だと感心した。


「義兄さん、何回か私達を狩りに誘っては貰えないでしょうか?もっと色々考察したり練習したいです。」


「マサさん、私も一緒にお願いしますね。」


「そうだな。今度は素材集めも終わらせるつもりで、キャンプを予定しようかね。」


「そうね、4人で分担すれば、効率が良いものね。マサが居れば、バリアーで安心だしね。」


マニが笑いながら同意した。そろそろ夕方だ。皆で瞬間移動して村に帰った。

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