その13
披露宴から数日後、家を借りた。マニの提案通り、子供の家の近くだ。忙しくて最近メッセージのみだったけど、ライエは一日おき位にメッセージを送って来ていた。
毎回今日の出来事?的な話で、最後は「お兄ちゃん大好き!」で終わるんだけどね。(笑)
だから、自然な流れで引っ越しの話はライエの知る所となった。最近は彼女の引率で(笑)うちにもたくさんの子供達が遊びに来る。自分の子供ではないけど、皆家族みたいで可愛いのな。
マニとの計画でライエは我が家で引き取ろうと思っているが、それには色々な条件があった。
例えば相性とか、俺達がちゃんと親として躾や叱ることが出来るか、暴力癖はないか、財力や生活能力はあるか、等々。それを子供の家とマニ主導で準備を進めていた。
ライエがうちへ遊びに来て、一緒に生活して帰ってから育母達がそれとなく話を聞きだし、彼女がどう思ったか、感じたかを確認することで、見極めをするらしい。
村長一家だし財力や生活能力では疑われないだろうから、後は俺とマニの人間性だな。
最近数日おきにライエが泊まりに来る。前の日の昼前にマニが迎えに行って、次の日の夕方に俺が送っていく。
昼飯はほとんど毎日ライエと一緒に食べる。
俺は自分で料理もできるがクラフトでも外食並みだし、マニもマルタの仕込みで家事全般で上手だ。
この前はライエが「お兄ちゃんの料理の方がマニ姉様より美味しいよ!」とか言ってしまい、育母のメリパダの前でマニに頬っぺたを左右に引っ張られていたっけ。(笑) でもその後に、
「ライエがそう思っても、このお兄ちゃんは私の料理が大好物なのよ?あなたの口が全てではありません。他の人には、絶対そんなこと言っちゃダメよ?」
と、ライエの目を見ながら諭すようにお説教してたっけ。さすが我妻。(笑)
一昨日は体長8mの蚊が小規模な群で襲撃してきたが、パワーアップしたマニの遊びにもならなかった。
ライエと他数人の子供達を俺の霊波バリアーで保護して後学の為に見学に連れていったが、ものの数十秒で終わってしまった。
相当手加減しても、一回の稲妻発動で複数の虫が落下していった。
マナ経路が大容量になったおかげで電位が上がったため、単体に稲妻が当たるとその近くの違う個体に連鎖して稲妻が飛び火するようになった為だ。パン、パパン!で終わり。(笑)
でも、ライエは目をキラキラ輝かせて、興奮しながら見ていたなあ。
帰ってからの姉様リスペクトが凄かった。「お兄ちゃんは戦わないのね。」とか言われちゃったし。
ええ、マニ姉様がみーんなやっつけちゃうのよお?(笑)
そう言う訳で、ライエはその内俺の娘になれるだろう。一緒に暮らして思うのだが、地頭の良い利発な子で、何だかんだ言ってマニを手本にしようと頑張っている。
なぜか不思議と俺に顔が似ている気がするし、マニにもそう言われた。今までが悲しすぎたのだし、幸せに育ってくれるといいなあ。
霊波とマナ・チャネリングが出来るようになってから忙しくて忘れていたクラフト能力の新ジャンルを確認しようと、サットの助力を頼んだ。
マニに聞いてみたら「もっとあなたの事を知りたいの。」と、参加する気だ。特にサットも反対しなかった。
二人で次元部屋に入る。三者インナーサイト状態なので、何かあった時に無防備になるし、時間短縮の為だ。乗っけからサットに釘を刺されるマニ子。(笑)
「ま、使える権限は私とマサのみだからな。」
「義父様、何故私はダメなのかしら?」
「マニや、君は性格が率直すぎる。思慮深く使える者でなければ、権限を渡した途端、この次元が滅びるだろう。」
「率直?」
「私は人の言葉は容易には信じない。行動で示す必要がある。君はたまに感情に任せてマサに肘打ちしているよね?」
「あ、あれはマサが冷やかしたりするから...。」
「そうだけど、咄嗟に分子分解をマサに使っちゃった?なんて間違いは、取り返しつかないでしょ?」
「そんなことしないわよ!」
「ほら、そうやって暴力的かつ破壊的衝動に訴えようとしているでしょ?私と繋がっているという事は、お互い真意が分かるでしょう?」
「...はーい、義父様...」
「今後絶対なんて言ってないから。君の成長を見て、徐々に解放する事を約束しよう。理性的な所は、マサを見習いなさい。」
「マニさあ、なんでクラフトしたいわけ?なにか目的でもあるのかい?」
「そう言われると、無いわね。」
「必要なら、ここにあなたの召し使いがいるし。これこれを作りなさいで君は済むでしょ?」
「マサをそんな風には思ってないわ。一緒に居てくれれば、私はそれで満足よ。」
「マサ、献身奉仕というのは崇高だが、自分を卑下すると結局エゴになるよ。霊的なことが分かっている立場ほど、言動に注意しないと。」
「うん、反論できないね。俺もまだまだだねえ。」
「そんなに捨てたものでもないさ。口に出すか出さないかだけの違いだね。過去の聖人やリシ達が、皆通ってきた道さ。」
サットは霊的な話にはいつも細やかな性格だ。重要視している。それが、俺の今までの助けにもなっている。
「さて、どこから始めようか?分からないところを説明するよ。」
サットが最近乗り気な感じなのは、やはりこれを成すと霊的成長の進展があるからだろう。こちらも助かる。
「んーじゃあ、やってみたり作ってみた方が早い奴は置いといて、この「超魔兵器クラフト」ってのは、何なの?」
「超魔兵器とは、分子クラフトと魔石クラフトを融合させたようなテクノロジーで、主にギミックや多機能構造物を創造する専科クラフトだね。選択してごらん?」
言われた通り選択すると視界のメニューが切り替わり、専門画面になった。製作できるものが一覧で表示される。ナニナニ、超魔導リアクター?マナシールド発生装置?超魔装甲?etc ...
「それね、マニの村の人用に考案したんだよね。本当はエネルギーレベル的に霊波の方が断然優れているんだけど。」
「義父様、それは村の装備強化と言う事かしら?」
「そうだね。それに、レールキャノンはマデュレ君が使えると思うよ。測定してみたら、彼の目は一級品のAIMが出来るみたいだしね。」
「レールキャノン?なんだその中二な名前の武器は。リストに無いよ?」
「収束式超電磁力加速ライフルのマデュレ専用カスタムさ。あと中二とか言うな。(笑)人が使える武器の最高傑作だと思っているんだぞ。」
「義父様、AIMって何ですの?」
「偏差打ちの事さ。銃の基本テクニックだね。彼は眼力が良いと言う事さ。」
「ええ、マデュレは小さい頃から遠見筒並の視力でしたわ。でも、銃って何ですの?」
「これを見てごらん。」
サットが用意していた動画をビジュアライズした。長い銃身のライフルで、かなりごつい作りになっている。弾を発砲するシーンを録画したらしい。いつの間に。(笑)
50口径の弾丸というより金属の礫が、大した反動もないのにポンポン打ち出されている。
セミオートオンリーだ。対象のサンドテクタイト30cmの壁を軽く貫通している。
赤外線遠距離スコープ、照準レーザーマーカー付きという超親切設計。
「やっぱり、創造するのは楽しいねえ。この動画では写ってないけど、この銃はとっておきの機能もあるんだよな。」
「あのさあ、村人に使わせるなら、もっと危なくない物を作ってよね?」
「こんな破壊的な武器を使わせて、マデュレは大丈夫なのかしら?」
俺とマニで同時に意見が出た。それを、サットは一蹴した。
「君たちがやろうとしている大規模殲滅な、実は私で調査してみたんだが、このままだと危ないぞ?村民の武装強化が最低条件になる。あの生物群相手だと、これくらいでないと太刀打ちできないと思う。レールキャノンは、マデュレの分しか用意しないつもり。彼は、マニより冷静だよ。」
「この凄い威力でか...もしかして、俺達の戦力では足りないのかな?」
「いや戦力は充分なのだが、ああ言った輩は後ろに回り込んだり、少数の群れを小分けに防衛拠点に送り込む場合もあるからね。相手の数が圧倒的だと、後方に手が回らなくなるケースが多いね。」
「義父様、マデュレが私より冷静という根拠は?」
「見ていれば分かるんじゃないかな?君の父上に聞いてみるといいよ。」
「マニ、この意見は多分正しいと俺も思う。」
「何よ、二人して!キーッ!(泣)」
ああー、ふくれちゃった...(笑)フォローするのは俺の役目か。
「マニ、実年齢と精神的な成長は必ずしも比例しないんだよなあ。マデュレが君に手を挙げたこと、今まであったかいな?」
「...無いわよ。」
「反撃が恐いのもあるかもな。でもあの年であの落ち着き様は、普通無いと思う。他の家なら、間違いなく姉弟ゲンカ勃発だよあれ。彼は慈悲の心を持っているんだよ。霊的に高い境地だな。そういう姉弟と同類なんだから、君もそうなる可能性はあると思うんだよな。俺達、各々で自分を高めることを考えないと。」
「...マサ、ありがとう。愛してる。」
「俺も愛してる。」
「コホン、のろけは他所でやってくれたまえ。」
あんたのフォローしたんだけどな、親父。(笑)
「これは、後で訓練させないとね。弾丸や銃の素材も集めないと。えーと、超魔導リアクターってのは、マナの大容量供給源ということかな?」
「流石だね。ご明察。」
何でも、このリアクターを村の防衛機能に繋げることで、半永久的にエアシールドを展開し続ける事が出来る。
おまけでマナ・ジョイントも壊れにくいように強化できるそうだ。これにはマニが喜んだ。
リアクター自体に発動させる魔法を登録できるので、一部破られてもすぐに全体復旧出来るそうだ。
「これで村から離れても安心よ。前は頻繁に故障するから、御父様か私がいないと復旧出来なかったの。」
マニの顔がとても嬉しそう。村の重荷が、軽くなって良かった。結構頻繁に故障するのが難点だったらしい。
「義父様、こんなに考えてくれていたなんて。心から感謝いたしますわ。本当にありがとう。」
「我が娘の為なら。」
短いけど、照れた感じの返事が。俺、サットのこんな態度は初めて見たな。
「あとレイスフォームは使ってみた方が早いね。でもこれはマサしか使えない。霊波バリアーは、使ったから分かるよね?」
「そうだな。あのバリアー、もはや防御壁という概念を超越してるよなあ?そもそもマニの雷撃が触れるかなり手前でひん曲がってたし。当たる前に逸れたり無効化するのか?」
「そうだね。事象改変とは、自然法則をねじ曲げるんだよ。それくらいの制御力と優位性があるのさ。」
最強の防御パワーだ。あれ?新しい攻撃は無いのか...。
「霊波はエネルギー消費が桁違いなんだよ。個人の体表に展開なら数十人位は気にしなくて良いレベルだね。攻撃や面制圧等は、効率化を模索しないとね。」
「...通常通り、複数指定で分子分解の方向で。」
「そうだな。そっちは相当な効率化が図れている。広範囲殲滅なら数百連射できるよ。分子剣も、より長く設定できる。最長で約3kmだな。」
「おお、剣で狙撃出来るな。射程距離3kmとか。横凪ぎすれば半径3km以内が真っ二つか。」
「分子分解って、何?分子剣?」
マニが疑問だらけの表情で質問した。
「君はこの前見てるよ。光と共に消滅するあれだよ。」
「あーあれね。一瞬で消えたわね。」
「そうだねえ。」
「分子剣は、後で見た方が早いね。」
「わかったわ。」
それ以上質問はなかった。彼女の場合、原理や仕組みというより現象と名称を符合させたいんだな。
「レイスフォーム、外で使ってみよう。」
サットの提案で、実際の使用感を確認してみる。教練場まで行き、アクティベートしてみた。一瞬ノイズ音がして、体が淡く発光する半透明な状態になった。
自分の質量感が急に無くなり、物凄く軽い。移動しようとすると、滑らかに音もなく空間を滑るように移動した。
「そのまま、マニと衝突してごらん?」
サットに言われるままにやってみた。
マニが後退りしながら「ちょっと、危ないじゃない!」とか言ってたけど、無視して全力で当たりに行った。そして見事にすり抜ける。
マニが驚いて、「何これ気持ち悪いわ!」と、ドン引きした。サットが笑いながら、説明する。
「あはは、ごめんよマニ。レイスフォームは、分子転送を考案中に発見したテクノロジーなんだ。こっちの方が使い勝手が格段に良いのでね。」
「...これ、どうなっているんだ?」
「普通は分子分解すると、霧散して消えるだろう?あれを、特殊な霊波フィールドで保護すると、霧散しないで状態保存できるのさ。すると霊も何故か保存された分解物と共に残るんだよね。」
サットは得意気に解説している。
「その状態で出来るのは、攻撃の無効化、物体の通り抜け、記憶している場所への瞬間移動、姿の完全な透明化だね。隠密に超最適だよ。因みに移動は空中でも可能だ。」
「あっ本当だ、飛べるなあ。(笑)...ひょっとしてエネルギー攻撃に弱いとかあるのか?」
「霊波フィールド保護って言ったろう?全ての攻撃を無効にするはずだ。100%保証ではないけどね。絶対的能力は神以外存在しないからね。なにがしかの漏れはあるかもしれない。」
「うーん、確かに隠密ならこっちの方が適しているよなあ。」
「マサ、分子剣は?」
マニが目を輝かせながら尋ねた。こういう新技術発表とかが好きなんだろう。
「んー、見るだけな。」
人差し指の先から、細い線が1m半位の長さで現れた。
「長さが伸縮自在なんだよ...これっ!触っちゃイカン!」
マニが指先で触れようとしていたので、急いで解除した。
「そんなに切れる訳?」
「触れたもの全てを両断するから。剣技とかあまり必要ではないのな。」
「...ちょっと試してみてもいい?」
「おいおい、無事じゃすまないよ?間が悪いと胴体切断だよ。」
「私の剣技では不足かしら?」
マニの目付きが鋭くなった。ヤレヤレ、口で言ってもわからんか...。俺は分子剣を50cmの長さにして展開した。
「ま、やるなら覚悟はしてね。」
「分かったわ、行くわよ!」
マニは帯剣していたシミターで上段から袈裟に切り下ろした。が、次の瞬間に金属製の剣は分子剣に当たった部位から真っ二つに両断された。
マニの体に当たらないように、細心の注意を払った。どうやら体は無事のようだ。
「...お気に入りの剣だったのに。」
「ほらあ、触れたら全てを両断って言ったでしょう?」
無惨にも両断された業物を前に、マニはがっかりした。もう、剣が当たりさえすればこちらの勝ちという世界だ。
相手のスピードについていける運動能力があれば、分子剣は無敵だろう。後でマニの剣を修復しないと。
「それと、こんなことも出来る。」
人差し指で20m先の柱を指差した。一瞬光の線が柱を貫き、すぐ消えた。マニが柱に近づいていくと、光の筋が当たった部位が小さく焦げていた。貫通穴は小さすぎて見えない。
「今のは剣が伸びたのかしら?」
「うん、最長3kmだって。」
これまたとんでもないチート武器だ。マニは唖然としていた。分子分解の方が凄いのに。
「ま、解説はこんなところ。色々データを録りたいから、それぞれのカテゴリーを使いこなして貰えれば嬉しいな。」
「わかった、やってみるよ。サット、解説ありがとう。」
「義父様、ありがとうございます。」
「お役にたてたら幸いだね。」
解説は終わったが、肝心の材料が揃わない。
まず弾丸や銃用の金属だね。それからリアクター用の魔石。これは生物から採取らしい。
...と言うことは、一度生物を狩りに行かなくてはな。
この地域にどれくらい生物がいるかは不明だけど、終わってみたら大規模殲滅とか要らなくなってしまうかも。
マニがぴったりとくっついて来た。フィジカルコンタクトで会話する。
「ねえ、金属ならフライビーの針がそれね。魔石は魔物の大きさで違うけど、さっき見た感じなら何回か狩りをすれば足りると思うわ。」
マニが詳しそうだ。まあ現地人なのだし当たり前か。
「マニ、俺は詳しくないから、君が狩りを計画してくれないかな。目的は素材集め、新武装の訓練、俺達の魔法やテクノロジーの確認、出来ればついでに村の食料調達とかも。」
「色々まとめてやるのね?うん、分かったわ。何だかワクワクして来ない?」
「そうだよなあ。俺達がこうなってから、忙しくて試す機会が無かったよなあ。」
「早速御父様に相談してみましょうよ。銃の話をしたら、マデュレも乗ってくるかも。」
「くれぐれも、サットの事は内密にね。行こうか。」
久々に村長宅まで移動する。途中でサヴィネとマデュレが市場で買い物をしているところに出くわした。
あーサヴィネの奴、マニの件が片付いたから本格的に活動し始めたな。本当にサヴィネはイイ奴だなあ。マデュレもあの歳で人格者だから、お似合いのカップルだよ。
「よう、元気かい?」
後ろから二人に声をかけた。昼飯の買い物をしてたみたいだ。
「ああ、義兄さん。しばらくです。」
「こんにちは。二人とも、いつもお揃いね。」
「サヴィネも、一緒にお昼の買い物かしら?マデュレ、教練サボってないでしょうね?」
「姉さん、久しぶりにサヴィネと会っているんだよ!」
マデュレは図星だったのか、珍しく語気が荒い。何だか銃を持たせる説明をするのが申し訳ない気がして...
「邪魔してすまんね。俺達これから親父様とちょっと打ち合わせに行くんだけど、実は二人にも少々関係することなんだ。後で聞いてもらっても良いけど。」
マデュレは少し考えて、「後でお宅に伺います。」と返事した。サヴィネが何か言いたそうだったが、二人とも連れ立って去っていった。あの方向はサヴィネの家だな。
「久々の二人きりなら、そっちを優先してねってサヴィネに言っておいたわ。」
「そうだな。気を効かせたねえ。」
「えへへ、そうでしょ?」
素直なマニが可愛い。まあ俺からすると、どうやっても可愛くみえるんだなあ。
村長宅に着いた。マニから先にマルタへメッセージ入れて貰ってた。ここも数週間ぶりだ。
「いらっしゃい、マサ。お帰りマニ。」
マルタが出迎えてくれた。客間に入ると、既にお茶が用意してあって村長が待っていた。
「親父様、お久しぶりです。」
「おお、本当にな。二人とも元気にしていたかね?」
「御父様、彼はお医者様よ?」
「そうだったな、健康管理位は朝飯前かな。」
「親父様は丈夫だから、それさえ要らなそうです。」
「まだまだ若い者には負けんよ。ワッハッハ。」
豪胆に笑う。この人は、俺の理想の将来なんだよな。あの貫禄と理知的な物言いが出来るリーダーに、俺もなれるだろうか。
「何でも、大規模殲滅の打合せとか?」
マルタが早速切り出してきた。俺が最近考案して試作実験したい物があると、村長に切り出した。
「これが完成すると、訓練次第では非戦闘員も相当な攻撃手段を得られる。そして、エアシールドを魔導具が自動で発動できるようになるんです。」
村長の眼光が鋭くなった。さすが研究者。魔石クラフトでは開発不可能だった訳だし、興味があるのは当然だろう。
「これが概略の設計図。こちらが通称で銃と言い、こっちが超魔導リアクター。試作は俺がやります。クラフターにお任せあれ。」
「そうすると、材料集めだね。」
「ええ、その件についてなのですが、村の物資で足りないものや食料、試作品の素材をまとめて狩りで賄うという手はどうかなと。だから村で必要なものをリストアップして頂けると助かります。」
「戦力が充分なら、一番手っ取り早いだろうね。お前達で行く気なのかな?」
「実は、銃の素材が集まったら一度戻ってきて、マデュレとサヴィネを誘おうかと。」
「なるほど、実戦訓練と試作実験を兼ねるわけだね。合理的だ。」
「銃の扱いが上手くなったら、彼を専門の教官にして村人に指導してもらうつもりです。自信を持ってくれると嬉しいなあ。」
「マサや、そんなにマデュレの事を考えてくれて、感謝しかないよ。燻っていた想いが、きっと良い方向へ向くだろうさ。」
「サヴィネと二人で、地域最強の銃使いを目指して貰おうかなと。」
「はっはっは、マサは中々策士だな。最近は二人ともベッタリでね。お前たちに刺激されたようだね。」
「もう、御父様ったら...」
マニが赤くなってうつ向いた。それをマルタがニコニコしながら見ている。
「マサ、安全第一でお願いね。マデュレはそう言う所よりもっと違う長所があるのだから。自信をつけさせるのは必要でしょうけどね。」
「御母様、分かってますよ。これはマデュレとも後で相談する予定で。以前から悩みも聞いてたし、何とかしてやれたら良いかなと。」
「マサを信じてるわ。よろしくお願いね。」
マルタはちょっと心配そうだ。まずとにかく武器試作だな。そして、二人に使わせてみて適正を観ようかな。
「親父様には留守中の防衛をお願いできれば。出来るだけ早く戻ります。」
「いつから行くのかね?」
「明後日には。出掛ける際には、一報入れます。」
「さあさあ、二人ともご飯を食べて行ってね。折角準備したんだから。」
マルタの料理は絶品だ。俺もマニも大好物。久しぶりに家族で食事を楽しんだ。きっと今頃はマデュレも二人で仲良く食べてるんだろう。
正午過ぎ、自宅に戻った俺達は、ライエを迎えに行った。丁度お泊まりの日なのだ。彼女の事は、家族全員が知っている。
最初は皆驚いていたが、マニが涙ながらに他人事に思えない、彼女は娘だと言い張ったので、今は全員そのつもりで接している。ライエも好意的だ。
子供の家は、自宅から歩いて数分の所にある。既にメリパダがライエと一緒に待っていた。
「メリパダさん、調子はどうですか?」
彼女は俺の患者だった。完治してからも何かと味方をしてくれる。今日も穏やかに笑いながら、ライエを預けてくれた。
「クラフターさんもお元気そうで。マニ様、ライエをお頼み致します。」
「メリパダさん、ライエをいつもありがとう。さあ、行きましょう。」
三人で手を繋いで歩く。ライエは二人に体重を預けて宙ぶらりんになったり、フンフン鼻唄を歌ったりしている。今日もご機嫌だなあ。
帰宅すると、入り口でマデュレとサヴィネが待っていた。皆で家に入る。引っ越し祝い以来で、家族が来訪した。
「ライエね、若様とサヴィネ姉様と座るの。」
マデュレは、村人からは「若様」と呼ばれていた。将来の村長候補だものな。彼はいつもそう呼ばれるとくすぐったそうに下を向く。マニがため息をつきながらそれを見ている。
お茶を皆で飲みながら、例の狩りの話を切り出した。
「マデュレ、俺は君の為にある武器を用意する予定なんだ。後で試作品を見てもらえばすぐ理解できると思う。それを使って、近くなった大規模殲滅戦に戦士として参加してもらいたいんだ。」
「義兄さん、どういった武器なのですか?」
「ええ、私も興味あるわ。」
設計図を出して、概略を説明する。
「正式名称は収束式超電磁力加速ライフルと言うのだが、これは一般人向け。君専用のカスタムがあるのさ。」
「何故私専用なんです?」
「君は目がとても良いとマニから聞いた。そう言う人に、うってつけの機能が盛り込んであるのさ。」
「あーなるほど、ひょっとして遠距離武器ですか?確かに弓以外で遠距離狙撃できる武器なら、試してみる価値はありますね。」
「そう、それだね。一旦俺とマニで狩りに出発して、試作品の材料が集まったら戻ってくる。んで、完成させたら君とサヴィネにテストしてもらって、4人で狩りに出よう。」
サヴィネは喜んだが、マデュレの表情は曇った。
「マサがね、あんたに自信を持って貰いたいって前から言っててね。一回で良いから使ってみて貰えないかしら?」
マニが後押ししてくれた。自信無さそうに、マデュレは頷いた。サヴィネも楽しそうに、
「貴方のクラフトは神レベルですから。私が使える武器なんて、すごく楽しみだわ。」
サヴィネの場合、どちらかと言えば血を見るのに馴れる訓練の方が良いのかも?とか思っていたら、マニがうんうんと頷いていた。
ライエが「私も欲しい!」とか言い出したので、なだめるのが大変だった。
「この武器は、サイズが大人用なんだよ。君の体がもっと大きくなってから、俺が作ってあげるよ。」
「お兄ちゃん、約束だよ!...ライエ、早く大人になりたいの...」
二人で指切りをする。こう言う文化もこっちではあるのな。いやいや、ありすぎではないか?親指立てといい、新婚旅行といい、指切りと来れば誰でもピンと来る。
これって、他の俺と同じ次元の誰かが広めたのでは?そうとしか考えられない。
昔だろうか?それとも今現在で俺以外の同郷出身がこの次元に居るのか?他に根拠が無さすぎるし、今判断は出来ないな。
これが俺に関する試練なら、そのうち彼方からやって来るだろう。それまでは放置かな。
「マサ?どうしたの?」
マニが顔を覗き込んでいた。おっといけない、いけない。
「考え事をしてた。ちょっと気になる事があるのだが、それは後回しにしたよ。」
「そう、それなら良いのだけど。」
「その内まとまったら話すよ。心配かけてごめんな。」
四人でプランを練る。ライエは黙ってそれを見聞きしている。大規模作戦の前哨戦が、既に始まっていた




