7話
食事が終わったので、今の状況を話すことになった。
「改めて自己紹介するな。俺はシグルド・ルーキス。ルーキス王国の第二王子ですっ」
キラっと、ピースをキメる。
「俺はアリソン・イースター。俺もルーキスから来ていて、このバカの護衛を勤めている」
「バカ呼ばわりはひどくない!?」
「バカはバカだろ。目を離した隙に入れ替わりやがって」
「えーん。俺、泣いちゃうー」
「そ、その令嬢の身体で涙を見せるな」
ポンポン気軽に話を進めていく。
(これが私を殺した男…?)
未来のシグルドとノリが違いすぎて、混乱している。
「私はルールー・ビジュー。ここアストラの一介の子爵令嬢です」
「改めてよろしく、ルールー嬢」
「よろしくね、アリソン」
「2人ばかり仲良くなってずるい」
むーっとシグルドは拗ねる。
「俺とも気軽に話してよ、ルーちゃん」
「王子様相手にそんなことできませんよ」
「気にしないでいいぜ。俺以外の従者もシグルドとは砕けた口調で話しているから」
(未来のシグルドと違すぎる)
「それに自分の姿にずっと敬語で話されているのも違和感なんだよなー」
「じゃあ、せめてシグルド様呼びにさせてもらうわね」
納得したところで、話が進んでいく。
「あなたたちは、何で入れ替わりが起きているのか分かっているのよね。アリソンは何も話していないのに、すぐに察したもの」
「ああ、巻き込んですまなかった!」
アリソンはテーブルに打ちつけるくらい頭を下げた。
「ほら、お前も」
シグルドの頭も下げさせる。
「ちょっと痛いんだけど。むしろ俺は人助けした側だよ!」
「だとしても、入れ替わりに巻き込んだ時点で全部台無しだ」
「この身体ルーちゃんのだって分かってる?傷ついたらどうするの?」
「悪い、ルールー嬢」
そう言われ、パッとすぐ手を離す。
シグルドは打ちつけられたところをさする。
「もう雑なことしないでよ。可愛い女の子なんだから、大事に扱ってよね」
「殴りてえ」
きゃぴきゃぴした態度に、アリソンは握った拳を押さえて、怒りを収めている。
「まあ、簡単に言うと俺の呪いのせいなんだよね」
「呪い?」
先ほどもネルトが言っていたし、未来でも呪われた暴君だと呼ばれていた。
「ルーキスの直系王族は皆、15歳になると呪いが発症するんだ。俺の場合は入れ替わりってこと」
「呪いってそんなおとぎ話みたいなものなの?不幸を呼ぶとか周りが死ぬとか、そういう概念的なものじゃなくて?」
シグルド以外の王族も呪われているのは驚きだ。
未来では全滅しているから、あまりよく知らなかった。
「アストラではそんな不穏な噂が出回っているのか?そういや、他の国でも、遠巻きにヒソヒソ噂されていたことがあったが、もしかして…」
「なんだ、呪いの詳細が分かっている訳じゃないんだ。よかった」
「よくない。婚約者探し進まないだろ」
「だから、ここにいるでしょ」
「何も知らないルールー嬢を巻き込むなと言っているだろ」
シグルドとアリソンが仲良く喧嘩する度に、話が止まる。
「それでこの呪いは解けるの?まさか、ずっとこのまま…」
「それはない。時間経過で解けるようになっている」
「それが聞けて安心したわ」
ずっと別人のままだと、せっかく過去に戻ったのに、家族にも会えない。
戦場に出て、安否不明な兄や弟にも会いたいと思っていた。
「シグルド様」
「ん?」
「ありがとうね、助けてくれて」
元に戻ることが分かって安心したことで、気持ちが落ち着いてきた。
「川に落ちた私を上げてくれたことも、面倒な奴らを撒くのを手伝ってくれたことも」
「あのときは俺も話したかったから。でも、よかったの。男の方は知らないけど、リコちゃん?は友達なんでしょ」
「知らないわよ。付き合っている癖に、自分の彼氏を宛がってくる人なんて」
今はどうだか知らないが、将来浮気するんだから、少なからず恋愛感情はあるんだろう。
「元に戻ったら、旅はもう終わりにして、実家に帰るわ。花嫁修業の前に、卒業旅行で1カ月過ごす予定だったのに、台無しだわ」
前の人生では、ネルトに好意を抱いていた頃だったので、花嫁修業も楽しかった。
しかし、結婚に希望がないことを知ってしまったので、憂鬱である。
「まだ期間に余裕はあるの?」
「あるけど、リコの目を避けて、旅行するの面倒だから、家で大変なことがあったって、帰った方が楽なのよ」
「じゃあ、うち来る?」
「うちって、ルーキス?」
「そうそう。まあ、俺の呪いのこと知ったから、一度家族と顔合わせしないといけないんだけどね」
言い触らすつもりはさらさらないが、確かに秘密を知ったものを野放しにする訳にはいかないだろう。
誓約書に書くとかあるのかもしれない。
「行ってみてもいいかもね」
結婚してすぐに戦争が始まったため、ルーキスに行くことは前の人生ではなかった。
どんなところか見てみたい気持ちもある。
「ここからルーキスに行く船あるものね。明日ルーキスに行く用事があるって言えば、このままリコから離れられるもの」
「えー、まだゆっくりしようよ」
「こういう約束事は早くけじめをつけた方がいいの」
「俺、船酔いひどいんだよ」
「それはいつ船乗っても、変わらないじゃない」
明日、ルーキスに行くことが決まったため、そのための支度をし、3人は眠りについた。




