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マッチング!  作者: sanagi
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9/9

8話

 翌朝、ルールーは起き上がる。

そして、支度のために鏡を見た。

「まだ元に戻ってないの?」

鏡に映る姿はシグルドのままだった。

お忍びとはいえ、一国の王子なので、シグルドは形式ばった衣服を纏う。

着るのに複雑なため、アリソンに手伝ってもらう。

「時間経過って言ってたけど、寝たらとか数時間後に戻るとかじゃないの?まさか、数日間このまま…」

「さあ、どうかな?」

悟らせないように、ニヤリと笑う。

シグルドはルールーが着替えさせられているのを

眺めていた。

「ルーちゃん、俺はどんな服着たらいい?」

「普段使いのワンピースでいいわ。背中止めるのは手伝ってあげる」

「目隠しに使えそうなの貸そうか?」

「別にお互い裸も見合った訳だし、いいわよ」

アリソンはシグルドに視線を向けた。

「こういうところあるんだよね」

「そうか。ルールー嬢は躊躇いがないんだな」

「昨日はいつ戻れるか分からないから、早めに慣れた方がいいと思ったのよね。シグルド様も必要以上に見たり触ったりする人じゃないって分かったから、そんなに警戒しなくてもいいかなって」

ルールーが着替え終わると、アリソンに部屋を出てもらい、シグルドの着替えをする。

目隠しはしなかったが、しっかり目をつむっていた。

着替えるとき危ないから、目を開けてもいいと言ったが、見えているときと同じように器用にこなしていた。

慣れていないブラや、届かない背中を止めるのに、ルールーの手を借りたくらいであった。

全ての支度が終わり、宿を出る。

外は雲1つない晴天。

日差しも強く差し込み、令嬢であるルールーの身体には帽子も欠かせない。

船の停留所は、宿から歩いてすぐのところにあった。

「本当に友達に挨拶しないでいいの?」

従者に、ルールーがルーキスに行く急用ができたことは伝えてある。

「いいのよ。顔を見なくてせいせいするわ」

「ルーちゃんが気にしないなら、いいけれど」

「今日は絶好の船旅日和。行くわよ、ルーキス」

しかし、ルールーが元気なのは最初のうちだった。

「気持ち悪い」

1時間もしないうちにルールーは、ベッドで横たわっていた。

彼らが乗っている船は、日帰り用で個室は備えられていない。

救護所のベッドで休んでいた。

「ルーちゃん、大丈夫?」

強い日差しで火照った身体をシグルドは扇子で仰ぐ。

「俺、船酔いひどいって言ったでしょ」

船酔いしやすいのは、シグルドの身体。

したがって、シグルドの身体のルールーが具合が悪くなるのは当然のことだった。

気持ち悪さがつらくて、うーうーうなり声を上げている。

「シグルドは、大丈夫なのか?」

「うん、元気元気。行きはダウンしていて、楽しむ余裕なかったから、快適に過ごせてよかった」

「お前は呑気なことを」

アリソンは大きなため息をついた。

ルールーも恨みをこめてにらみつけるが、怨み言を言う気力もない。

「海風浴びてみたいから、甲板上がってくるね」

「行ってこい。お前のテンションの高さで、余計にルールー嬢を疲弊させる訳にはいかないからな」

シグルドは部屋を飛び出すと、カンカンと陽気に階段を駆け上がる音が聞こえた。

「悪かったな。あいつが毎度船酔いで辛そうにしているのは見てきたが、今日はルールー嬢が被害に遭うってことは気づいてなかった」

心の底から申し訳なさそうに頭を下げる。

「アリソンが謝らないでよ。私が恨んでいるのは、私に身体を押しつけて、これ幸いとばかりに船旅を楽しんでいるシグルド様なんだから」

「先ほど酔い止めを飲んでもらっただろ。次第に眠気がくるはずだ。いつもだと、昼頃に目を覚ましたとき、いくらかましになるはずだ」

「じゃあ、ゆっくりさせてもらうわね」

昨日色んなことが起こりすぎた混乱で、なかなか寝付くことができなかった。

この船酔いの要因の1つに、睡眠不足もあるのかもしれない。

あと夜遅くだというのに、単純に料理が美味しかったのと、これからどうなるか分からない不安で、食べ過ぎてしまったことも否めない。

「呪いって、いつも起きているものなの?」

「いや。あいつだって、本当は無関係の他人を巻き込むことをよしとは思っていない。だから、出かけるときは人一倍注意している。恋愛関係に発展しそうなときだって、用心して必要以上に触れないようにしているんだ」

では、ルールーに起きたことはイレギュラーだったのだろう。

そもそもこの入れ替わりが起きる条件はあるのだろうか。

シグルドの顔を鏡越しではなく、直接見たのは、溺れたときに後から追いかけて助けに来てくれた手紙が最後だった。

それから、目覚めるまでの間に起きたことが入れ替わりが起きる条件だったのだろう。

「しかし、接触してこないことが不満で、すぐにフラれることが多い。今も自国にわだかまりを残している恋人は、俺が知る限りいないはずだ。だから、安心してくれ」

何故かアリソンは釈明してくる。

しかし、触れることに臆病になっているのなら、入れ替わりの条件は身体接触なのだろう。

頭をぶつける?

手をつなぐ?

後は…。

色々考えているうちに、薬の効果の眠気がやってきて、ルールーは眠りについた。

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