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転生者の異世界旅行記  作者: 豆板醤
第3章 冬の旅と戦
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63話 "五日目"

城壁の上、怒号が飛び交う。

市民兵の投石が無数に壁を越えて平原に落ち、押し寄せるモンスターの頭を砕く。

衛兵のハルバードや即席の木槍が必死に振るわれ、壁をよじ登ろうとするオークを叩き下ろしている。


「ミノタウロスだ、射手隊は優先して狙え!」

「バリスタ急げ!頭を撃て!」


即席のバリスタが絶えず槍のような矢を放つ。

オーガやゴブリンだけでなく、ミノタウロスとオークたちまでもが現れ始めた。

ミノタウロスの大斧やオーガの怪力は城門を破るだけでなく、石造りの城壁を削ってしまう。


何とか近づかれる寸前で倒しきれているが、バリスタの装填が追いつかずに少しずつ城壁に迫られている。


「ガーゴイルが城壁を越えたぞ!」


異様な形をしたガーゴイルがモンスターの死体を乗り越え、城壁を駆けのぼる。

何体かが市内に侵入し、投石していた市民に襲い掛かる。

慌てて魔術師が対応するが、その間に数人が叩き潰されてしまった。


「投石の手を止めるな!ゴブリン達が乗り越えてくるぞ!」


衛兵が叫ぶ。

逃げ惑う市民兵が慌てて投石を再開するが、すでに遅く城壁の上にオークたちが上がり始めた。


冒険者たちが侵入者に対応している間に、今もよじ登ろうとするモンスターたちに油が被せられ焼き払われる。



四日目の昼過ぎ、その時間だけで押し寄せるモンスターの量は二百を超えている。


レイドに分類されるモンスターの規模は十数体ほどから。

百体を越えれば中規模、千を越えれば大規模と呼ばれる。


ボロヴィツを襲うレイドは確認できただけで六百ほどにまで増大し、今なおモンスターが集まり続けている。


異形のガーゴイルが城壁を越えたことで投石が一瞬止まり、その隙にゴブリンやオークたちが死体の山を踏み台に城壁を乗り越え始めている。


徐々に死者が増え始め、防衛設備も少しずつ損耗している。



五日目、最初のほころびは東門で起きた。


「応援を呼べ、急げ!破られるぞ!」

「亀裂を塞げ!」


東門、数体のトレントたちが城門に押し寄せる。

枝や根を突き刺し、亀裂を広げるように、少しずつ城門を破ろうとしている。


ハルバードや長剣が必死に伸びる木を切り落とそうとするが、うまくトレントを止められてはいない。


対応のために魔術師が呼ばれるが、それまでの間にだいぶ亀裂が広げられた。

ゴブリンなら通れるほどにまで。


「トレントをどうにかしろ、このままじゃどんどん穴が広がっちまう!」

「ゴブリンが入ってきたぞ!クソッ、城門を塞げ!」


城門に空いた亀裂からゴブリン達が通り抜けている。

幸い、入り込んだのは数匹程度だったので簡単に対処できたが、それでも少しずつ中に侵入されてきている。


亀裂を通り抜けようとするゴブリンと、それを殺す兵士達。

空いた穴は死体で埋まり、それを押しのけてモンスターは入ろうとしている。

長く続く激しい攻防戦の末、いつの間にか亀裂はオークが通れるほどの大きさに広がってしまっている。


「モンスターが退いていくぞ!あと少し耐えろ、あと少しで終わるぞ!」


日没が近づく。

徐々にモンスターが退き始め、残りは城門に纏わりついている奴らだけになった。

そして最後のトレントが倒され、五日目の戦いは終わった。



「木板を持ってこい!どうにかして塞ぐぞ!」

「こっちに人手をくれ!資材の加工が追いつかないんだ!」

「怪我人はギルドの方に運んでくれ、教会はもう入らない!」


日が落ちた後も街灯が明るく灯され、大量の人があちらこちらを行き交っている。

昼に暴れていたモンスターも、夜になれば活動は低下する。

その間に昼に受けた被害を治さなければならない。


「シスターを呼んでくれ、早く!」

「...これはもうダメだ、足を切るぞ!」


医療所は血の匂いを強く放っていた。

傷を負った者達が集められ、治癒を扱える教会の修道者や医療の心得がある者が休まず治療に当たっている。


たびたびアラクネが仕掛ける闇魔術の攻撃を受け、体の一部が壊死した者もいる。

斧が振るわれ、患部が切断される。


呻き声と嘆きが聞こえる医療所から少し離れると、静かな空間がある。

即席の棺桶に詰められた死者、無言で穴を掘る市民。


この日の死者は十八名、この五日間で最多だ。


城の防衛指揮官たちは確信している。


このレイドは組織的に行われている。

先鋒が終わり、六百のモンスターが集まっている。

破城槌の役目としてミノタウロスやトレントが送られ、城門は確実に損傷した。

そうなれば、明日から本当の攻撃が始まるだろう。



五日目の夜が終わった。

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