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転生者の異世界旅行記  作者: 豆板醤
第3章 冬の旅と戦
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61話 "初戦"

ボロヴィツ南東、未完成部。

開戦の合図である城の大鐘が鳴った。


森の奥からも足音のようなのが少しずつ聞こえてくる。

すぐにオーガやゴブリンが姿を現した。


「全員、私の後ろに」


オストルフィさんが前に立つ。

咆哮するオーガに動じず、祈祷を唱える。


祈祷に応え、聖なる魔力が現れた。

モンスターからすれば、腹立たしい悪臭のようなものだ。

一気にすべての敵意がオストルフィさんへと向いた。


「アイスランス!」


全ての敵意を向けて他に一切気を払わないオーガ。

その顔面に氷の槍を叩きつける。


「ラサックとロン、前へ。私とサーシャ君が打ち漏らしたのを倒してくれ。シュウ君は脅威度の高い敵を、衛兵と共に侵入を防いでくれ」


冷静な指示。

サーシャとオストルフィさんが並び、武器を構える。



最初の一撃はゴブリンだ。

粗雑な棍棒をもってオストルフィさんに殴りかかる。


カイトシールドで簡単に弾かれ、メイスで胸部を砕かれる。

ゴブリンが投げる石は全身を包むプレートアーマーで防がれる。

祝福を受けた板金鎧、生半可な攻撃は一切通らない。


「ガーゴイルだ、サーシャ君引きなさい!」

「了解、シュウ!」


石造りの怪獣、剣もメイスも一撃で砕くには少し足りない。


「マジックミサイル!」


最初の射撃後、追加でもう一度放つ。

全弾命中。初撃で胴にヒビを入れ、追撃で砕く。


一撃で破壊したいが、火力は足りない。

これでも前よりは威力が上がったはずだ、あいつがかなり硬いらしい。


サーシャは軽快な動きでゴブリンを斬り伏せている。

オストルフィさんがほとんどのモンスターの注意を引いているため、その隙に横から斬り、横に跳ねて別のゴブリンを斬る。


二人をすり抜けたモンスターは衛兵が倒し、俺はオーガやガーゴイルが近づく前に魔術を撃ち込み、足止めと撃破を行う。



「とりあえず、第一波は終わったみたいだね」


日が暮れ、少しずつ薄暗くなる森。

オストルフィさんが兜のバイザーを上げ、額の汗をぬぐう。

数にしてオーガ3体、ガーゴイル2体、ゴブリン27体の計32体。

微かに聞こえる音から判断すると、他の場所はまだ戦いが続いているらしい。


「この場所に気づいたのがこれだけってことですかね?」

「恐らくね。...なぜガーゴイルが紛れているんだろう」


ガーゴイルの残骸に近づき、岩をいじくっている。

さっきまで生き物のように動いていたのに、今はただの石塊だ。


ガーゴイルというと、羽の生えた怪物をよくイメージする。

吐水口に使われた石像に魔力が宿り動き出したものを意味していたが、今では魔力で動く石像のモンスターを意味するようになった。


心臓はなく、頭や胴体を壊すことでしか無力化できない。

強度は岩、軽くぶつかっただけで打撲を負う。


小さな塊を拾い、そこらへんに打ち付けてみる。


「シュウ君、どうしたんだい?」

「一回で壊しきれなかったので、どれくらい硬いのかなと思って」

「ふむ...」


少し考えた後、オストルフィさんがメイスを残骸に打ち付けた。

ガンッ。岩が二つに割れ、破片が舞った。


「少し強めに叩いたが、粉々にはならない。硬い石材を使っているようだね」

「頭は小さいから当てにくいし、二度撃つしかなさそうですね」

「...本当だ。確かに頭が小さく当てずらい、硬い胴体を破壊するしかない」


驚いた表情で残骸を見つめている。

何に驚いたのかがよくわからず、少し離れてサーシャの方へ行く。


「怪我はない?」

「うん、大丈夫だよ!」


元気な答え。

いつも避ける返り血も、今回は避けきれなかったようだ。

鎧や服に血がついている。


「モンスターも気づかなさそうな場所なのにこれだけ来るなんて、他の場所大丈夫なのかな...」

「全部で数百体いるらしいし、西側は百体以上は来てるんだろうね」

「城壁が崩壊してたらこっちにも連絡が来るだろうし、大丈夫ってことかな」


心配そうに振り返るサーシャ。

俺も一緒に市内の方を振り返る。すると、一人の兵士が走ってくるのが見えた。


「伝令、伝令です!平原で第一波との交戦が終了、初日はおそらく終わりました」

「他の場所はどうなった?」

「東門はほとんど交戦がありませんでした。南門はアラクネが城壁を飛び越えましたが、『裏鱗』が討伐し守備しました」

「全体での被害は?」

「十名ほどが負傷、重傷は数人です」


一日で数人が重傷、これはいい方なんだろうか。


「交代の哨兵が来るので、市内に入って近くの民家で休んでください」

「わかった、ありがとう」


市内から何人かの兵士が来る。

彼らが交代の哨兵らしく、簡単に引継ぎを済ませて俺らは市内に戻った。


用意された民家に入る。

普通の民家、住人は避難所に逃げているらしい。


「みんな、食事はできるだけ詰め込んで早く寝た方がいい。夜に襲撃が来ればすぐに向かわないといけないからな」


そういうと、オストルフィさんは黒パンと干し肉を齧り、装備の点検を始めた。


俺とサーシャも黒パンを口に詰め込み、装備の血を拭う。

拭い終わると、疲れていたのもあってすぐ寝てしまった。



ボロヴィツの初日が終わった。

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