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転生者の異世界旅行記  作者: 豆板醤
第3章 冬の旅と戦
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59話 "開戦"

ボロヴィツ市、西門城壁。

壁の上には兵士や徴兵された市民が並び、大工が内側から壁を補強している。

城壁の高さは5,6mほど、大体のモンスターは登れないし攻撃を防げるが、オーガやミノタウロスのような怪力がぶつかると危ういだろう。


「来たぞ、先鋒集団だ!」


誰かが叫ぶ。

遥か先、薄っすらと黒い点のようなものが近づいてくる

いくつかの集団がまばらに平原を進んでいる。


一気に騒然とする城壁。

矢の準備に装具の点検、祈りをささげる者もいる。

ゆっくりと近づいてくる集団、少しずつその姿が見えてくる。


「オーガとゴブリンと...、あの後ろにいるのはなんだ?」

「貸してくれ」


一人の冒険者が哨戒から望遠鏡を借りる。

覗き込み、驚きの声を上げる。


「あれは、ガーゴイル...?どっから来たんだ?!」

「ガーゴイルだと?!クソッ、魔術師とエンチャントを使える弓兵に伝えろ、ガーゴイルを最優先に、その次がオーガだ!」

「あいつらはどこを狙えばいいんだ?」

「胴体!どこが胴かわからなかったらとりあえず当てろ!」


ガーゴイル、生きる石像。

ただの弓矢じゃ壊せず、手足を壊しても動き続ける。

石像の形状によっては頭がないので、胴体を破壊することが推奨される。


「全員、空の注意を怠るな!飛ぶガーゴイルが来るかもしれん」

「城の本部へガーゴイルのことを伝えろ!」

「なんでガーゴイルがレイドにいるんだ?!」


冒険者たちが騒然とする。

市民兵はそれを見て不安を感じとり、瞬く間に広がっていく。

そんなことは一切知らず、モンスターの先鋒集団は迫る。


「射手隊、指示があるまで撃つな!矢は限りがあるからな!」

「槍隊、城壁に張り付いたやつは叩き潰せ!おいそこのやつ、大工たちに下がるように伝えろ!」


ざわめく城壁が少しずつ静まり、弓兵たちは矢を手に持つ。

少しずつ鮮明になるモンスターたちの姿。


向こうも城壁に立つ人々を捉えたらしく、地面を蹴って駆け出してきた。


「まだ撃つな!十分に引き付けないと当たらない!」


200m


地響きのような音を立てて近づくモンスター。

恐怖にとらわれる群衆、ベテランの冒険者が落ち着きを取り戻させ、弓兵たちは射撃の合図を待つ。


100m


オーガの咆哮が響き渡る。

恐ろしいその顔が鮮明に見えてくる。


50m



「撃てぇええ!」


衛兵隊長の号令。

放たれた矢がモンスターを貫くが、獰猛な群れはそれでも止まらない。

大鐘楼の鐘がなる。

開戦の合図だ。


「魔術師、ガーゴイルを破壊しろ!投石隊は片っ端から石を投げろ!」

「登られるぞ!槍兵は叩き落せ!」

「オーガを城門に近づけさせるな、破られるぞ!」

「油桶を持ってこい!下にぶちまけろ!」


怒号が飛び交う。

魔術師の放つ火球や水刃がガーゴイルを打ち崩し、飛んできた石に当たりゴブリンが倒れていく。


城壁にたどり着いたゴブリンが槍兵の長槍で突き殺され、それを足場に壁をよじ登ろうとしてハルバードで頭をかち割られる。

死体の山を登る群れが油を頭からかぶった。

すぐに火がつけられ、城壁の下は炎に包まれる。


「あのオーガを止めろ!」

「誰か投槍を持ってこい、破られるぞ!」


広い城壁に弓兵は二十人ほど。

頑丈なオーガを止めるには集中的に火力を投射するしかないが、この数ではそれが間に合わなくなる。


迫るオーガに次々と矢が突き刺さるが、一切止まらない。

城門まであと一歩まで迫ったところでようやく倒れた。


「投石隊に伝えろ、もっと投げまくれ!」




「鐘が鳴ったね、始まったらしい」 

「となると、こちらもそろそろですね」


南門、城門脇の塔。

『裏鱗』と商人の護衛剣士が話している。


「魔術師はそちらの一人しかいませんが、大丈夫でしょうか?」

「実力はあるが、あまり大量に来られると間に合わないかもね」

「短弓を拝借してきましたので、少しは助けになるでしょう」


護衛剣士が弓を構える。

剣だけでなく一通りの武具は扱えるようだ。


「...来たね」


オーガが率いるゴブリンの集団。

数は二十体ほどだろうか、ガーゴイルも数体見える。


「オプティム・マジックミサイル」


魔術師が唱える。

高度に圧縮された魔力が円筒を形成し、青い軌跡を残して消えた。

着弾と共に破裂する魔力、ガーゴイルの胴体を一撃で砕く。


「クラス4の...、凄いですね」

「だが連射はできない。脅威度が高いのは魔術で、他はこっちでやるしかない」

「なら、あれはどうします?」


集団の後方、異形が佇む。

オーガより一回り小さい体躯だが、脅威度は遥かに上回る。


「アラクネ。あれはまずいね、こっちで仕留めるしかない」

「衛兵、市民兵に伝達してください。子蜘蛛を近づけないように」


アラクネが跳ぶ。

容易に城壁を飛び越え、市内へと降り立った。

槍使いと護衛剣士がそれを囲む。



悲鳴を上げる市民をよそに、激戦が始まる。

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