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転生者の異世界旅行記  作者: 豆板醤
第3章 冬の旅と戦
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53話 "小さな街、ボロヴィツ"

「走れ走れぇ!」


日が沈み始めた街道、俺とサーシャは全力で道を走っている。

サーシャは俺をずんずんと引き離し、俺もそれに何とかついていこうと身体強化を使い全力疾走する。


城門にたどり着いたサーシャが市内に入った。

鐘がなり、ゆっくりと門が閉まっていく。

まずい、このままじゃ閉まる。


「間に合えぇ!!」


姿勢を低くして地面を蹴り、閉まる門と地面の間に滑り込む。

頭からスライディングをするように飛び込み、1mほどの間をすり抜ける。

間一髪、閉門までに市内に入り込めた。



ルヴニツァから一週間ほど。厳しい寒さの旅を乗り越え、ボロヴィツに到着した。

道中でオークとの遭遇などがあったため、予定よりも進みが遅くなった。

そのせいで余裕を持った到着が遅れ、閉門ギリギリの滑り込みになったのだった。


ボロヴィツはグロズスキ領にある小さい街だ。

スクライラスと同等かそれより小さいが、城壁はしっかり整っている。

宿は三軒、この街で冬を越えようとしている冒険者や旅人が集まっているらしく、二軒はすでにいっぱいだった。


「結構人集まってるんだね。でも、冒険者はそんなにいなさそうな感じ」

「モンスターはあまり来ないらしいからね。依頼も少ないから、出てるの見たら受けて稼いでおきたいな」


貯金はあるが、三月頃まではさすがに持たない。

定期的に依頼を受け、資金を少しずつためておきたい。

王領に入るための通行税や旅代が必要になるだろうし。


部屋は相変わらず一人部屋を二人で使用。

割と安い宿泊代でシャワー式の風呂が無料で使える、かなりいい宿屋だ。

ただ、ベッドがかなり狭いのでぎゅうぎゅう詰めになってしまった。


ぎゅうぎゅう詰めのベッド、寒いからまとめて毛布にくるまっている。

二人共全力疾走で疲れていたので、すぐに眠りに落ちた。



「依頼、あまりないね」

「うーん...、やっぱ冬だとあんまりなんだね」


ギルドの依頼ボードは閑散としていて、集まっている冒険者も少ない。

そもそもギルドの建物が小さく、普段からあまり人が来ないといった雰囲気だ。

ボードの前で悩んでいると、暇そうに本を読んでいた受付嬢が話しかけてきた。


「モンスター出没が少ないの、この地域らへんだけみたいですよ」

「えっ、そうなんですか?」

「はい。グロズスキ領でも、ルヴニツァ市より南のここら辺で出没が少ないみたいなんですよね」

「原因とかって分かってるんですか?」

「うーん...、割と数年おきにこういうのはありますからね。こっちで少ない代わりに、反対側の大帝国のほうで多かったりするんですよ」

「向こうの方が大変とか、情報は来ないんですか?」

「そういう情報は半年遅れくらいできますからね...、結構時間がかかっちゃうんですよね」


向こうはたくさんの国の集まりだから仕方ないですけど、と続ける受付嬢。


情報を媒介するのは行商人や旅人。彼らが大帝国からクラヴィスアに入るには、シュワコヴォ市か、南の都市連合の方から山岳を通るかの二択だ。

どちらの道も数か月はかかる道、情報が伝わるのも時間がかかって仕方ない。


とりあえず、少ない依頼ボードから明日やるための適当な依頼を受け、近くにあった酒場で暇をつぶす。


「お金、どうする?」

「今ある資金で二月末頃まで耐えれば、何とか持つんじゃないかなぁ...」

「じゃあ節約しなきゃだね。足りなさそうな分、明日で少し稼げるといいなぁ」


軽く話しながら朝ごはんを食べる。


道行く人は少なく、冬の寂しさが感じられる。

熟練の冒険者らしき四人が門の方へ歩いて行った。依頼だろうか?

通りを歩く人を観察すると、冒険者や旅人がほとんど。市民は冬越えのために家にこもるから、外を歩くのは旅をする人だけになるんだろう。



朝ごはんを食べ終わり、軽く街を散歩する。

街の広場には小さな教会があった。

小さい街の教会だが、聖騎士がいるらしい。


今まで見た聖騎士は神聖さを感じる雰囲気で礼拝堂にたたずんでいたが、目の前の聖騎士は長柄のメイスと全身を覆うプレートアーマーを活用し、蜂の巣を取り除いている。


街の人が遠目に見て笑っているのを見ると、この街ではよくある風景なのだろう。


「そういえばさ。聖騎士って下級とか上級に分かれてるって聞いたけど、上級ってどういうところにいるんだろうね」


蜂の巣と戦いを繰り広げる聖騎士を見ながら、サーシャがつぶやく。

聖騎士って上級と下級があるんだ。まずそれをあまり知らないので答えられない。

とりあえずなんとなく答えておこう。


「...聖都ってところがあるらしいから、そことかにいるんじゃない?あとは大きい教会とか?」


適当に答えたが、サーシャは納得したみたいだ。

多分、聖都もいつか行ってみたいとかを考えているだろう。

しかし、教会の関係者ならともかく、ただの冒険者が入るのは難しい。

遠くから眺めるのが精一杯だろう。




その後は夕方まで街を歩き、のんびりと過ごした。

明日のモンスター討伐のために装備を整え、早めに床にはいる。


「ねえねえ」

「ん?」

「今日ずっと探してたんだけどさ、温泉ってやつ、街の中に看板とかなかったね」


...たしかに、そういう案内の看板は一つも見当たらなかった。

でも、別に温泉街ってわけでもないので、単純に立ってないだけかもしれない。


「明日さ、依頼が終わったら帰りに聞いてみる?」

「そうしよっか」

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