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転生者の異世界旅行記  作者: 豆板醤
第3章 冬の旅と戦
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52話 "冬季旅"

年が明けて一週間、冬の寒さが一番厳しくなる時期だ。

俺らはルヴニツァを発ち、ボロヴィツェに向けて旅を始めている。


かなり寒いが、魔道具付きの防寒着のおかげで凍死は防げそうだ。

魔力の注入で動く電熱服的な魔道具。着たまま寝たりすると低温やけどするので、使い方はちゃんと守らなくてはいけない。

かなり値はするが、冬の旅の必需品だ。



「ブルトヴァルトって冬でも赤いんだね...、やっぱり不気味だなぁ」

「木の葉が落ちないから枯れないのもなんか不気味だしね」


遠くに微かに見える血色の森、ブルトヴァルト。

目的地のボロヴィツはブルトヴァルトから100km以上の距離があり、その間に平原や川、林などを挟んでいる。


今まで都市を出ればすぐにブルトヴァルトが遠くに見えていたので、それが見えなくなるのは目に優しくなる。


雪が降り外があたり一面銀世界になっていても、遠く薄っすらと赤い森が見える。

森に近い地域では『悪い子はブルトヴァルトに連れ去られる』という風に子供を教育するらしく、共通で恐ろしい認識を持っているのがわかる。


「自然に赤い魔力がある、っていうけど、別の色の森とかもあるの?」

「ないんじゃないかなぁ...。本で読んだけど、ブルトヴァルトってかなり珍しい地域らしいから」


極北では空に光の帯が生まれるらしく、それも色の付いた魔力とされている。

実際に見ていないからわからないが、ただのオーロラなんじゃと個人的に思う。

普通の自然現象が魔法と誤認されていることもあるんじゃないだろうか。


「自然の魔力が強い場所は特殊だけど、色がついてるのはさらに特殊ってこと?」

「うん。危険地帯の中でも五本の指に入るくらいなんだってさ」

「そんなに危険なんだ。ずっと見てきたから、ちょっと実感できないな」

「ラドガ雪原と同じくらいって本で読んだけど、俺もよくわかってないや」


大公国の国土の半分近くを占める大雪原。

冬季は猛烈な吹雪が地上を均すという大地に匹敵すると書かれても、俺らはそこまでの危険があるように実感できない。


森への認識は、たまに強いモンスターが外に出てくるくらいだ。

恐らく、もっと近寄ったり森の中へ入ればその危険性が実感できるんだろうが、Bランクのモンスターがうじゃうじゃいる森に入りたくはない。


「雪原...、どんな場所なんだろう。いつか見てみたい、というより大公国に行ってみたいなぁ」

「院長先生が昔に行ったことがあるんだっけ」

「うん。どんな国なのか気になるし、東の方に行ったらそのまま入れないのかな」

「関所を通れれば入れるけど、時期とか情勢で入れなかったりするらしいよ」


クラヴィスア王国は東の国、ラドガ大公国と仲が悪い。

昔は何度も戦争が起きていたが、ここ数十年は大きな戦いは起きず、たまに小競り合いが起きる程度らしい。


王国から大公国に入る場合、ほとんどは二つのルートがある。

北の小バルティア地方か、南のルーニツキ領からが一般的な入国方法になる。

国境の中央は湿地帯が広がり、棲息するモンスターの危険性や足場の悪さなどから通行に適さない。そのため、北と南のルートが一般的に多く使われている。



「ボロヴィツエの次の予定はあるの?」

「迷ってるんだよね...。南に行って山岳地帯に行くか、北に行って王領に行くか、どっちにしようかなって」

「王領行こうよ!だってルイザちゃんいるじゃん!」

「確かに。そういえば王領の孤児院にいるんだっけ、それなら王領に行ってそのあとに東部に行くのでもいいかもね」


ルイザは今、王領で慈善団体の運営する孤児院にいる。

その慈善団体は教会の関係らしく、規模も大きいので常に人手が不足している。

裁縫が得意なルイザはかなり重宝されているだろう。



日没が近づいてきたので、少し早いが野宿の準備を始めた。

焚火を付け、テントを敷く。何度もやってきたので、一瞬で用意が終わった。


「やっぱ焼いたお肉の方が干し肉よりおいしいや」

「ちょうど鳥がいてよかったね」


近くにいた野鳥を仕留め、少し早い夕飯にした。

日が落ちてきたことで気温はより下がり、二人して焚火に当たっていた。


少しずつ暗くなる街道を眺めていると、馬を連れて歩く人影が見えた。

人影は街道から離れ、こちらに向けて近づいてきた。


近づくと焚火で照らされ、人影が行商人であることが分かった。


「お二人共、ルヴニツァから来られましたか?」

「はい、そうですけど...」

「ルヴニツァの閉門時間をお聞きしたいのですが...」


行商人は少し困った顔でそう聞いてきた。

匪賊騒動はまだ続いており、ルヴニツァの城門が閉まる時間は今も早い。

旅程を調整しないと城門の前で野宿することになりかねないので、行商人としては重要なことだろう。


「今も日没より閉まるのが早いですよ」

「なるほど。ありがとうございます、助かりました」


安堵した行商人。

俺らの進行方向から来たということは、ボロヴィツから来たんだろうか。


「行商人さんはボロヴィツから来たんですか?」

「えぇ。お二人は冒険者ですか?この冬は特にモンスターが少ないので、冒険者の方は稼ぎが大変でしょう」

「やっぱり少ないんですね、ボロヴィツもですか?」

「依頼がないと言ってほとんどの冒険者が街から出ましたね。市民としては嬉しいことでしょうけどね」


貯金はまだあるので、節制すれば冬は越せるだろう。

ボロヴィツは宿代もそこまで高くないらしいので、春頃まで滞在しようかな。


「では、私はこれで...。よい旅を」


行商人はそう言い残して焚火を離れた。



「ボロヴィツ、結構平和なんだね」

「小さな街でブルトヴァルトからも遠いからね。冬はそこで越そうかな」

「いいね!...寒いぃ、明日はもっと進んで、早く行こうよ」


凍えるような寒さ。

二人で焚火にくっついていた。

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