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転生者の異世界旅行記  作者: 豆板醤
第3章 冬の旅と戦
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51話 "ゴールデンレトリバー"

12月の下旬、街は冬の厳しい寒さにもかかわらず、非常に賑わっている。

理由は生誕祭、クリスマスによく似た大きな祝祭が始まったからだ。

この時期になると、どこの街も明るく、カラフルな魔石光源が道に吊るされる。


祝祭ということで、宿のご飯も豪華なものになる。

肉のシチュー、焼いた鯉、ガチョウのローストなどが大テーブルに並んでいる。

それを客が好きに取って食べ、他の客とワイワイ騒ぎながら食べている。


「こんなに人居たんだ...、なんかすごく豪華」

「スクライラスより大きな街だから、やっぱり規模も大きいね」


ルヴニツァ市はスクライラスより一回りほど大きい街だ。

そして城壁に完全に囲まれているため、お祭り騒ぎが城壁の中いっぱいに広がる。


「ねえねえ。なんかいろいろ外でやってるみたいだし、行こうよ!」


サーシャが窓の外を楽しそうに眺めている。

日が落ちても明るい大通り、陽気な音楽がどこからか流れている。


人があふれかえる祭りの雰囲気、少しだけ苦手だ。


「だってこんなに楽しそうなんだよ!ほら、行こうよ!」

「うーん、でもどこら辺行くの?」

「中央の方行こうよ。お昼の時にちらっと聞いたけど、お肉配ってるらしいよ!」


手を掴まれて部屋から引っ張り出され、宿から出た。

イルミネーション、前世ではあまり見なかったが、今見れるとは思わなかった。

カラフルな魔石が建物を彩り、夜なのに昼みたいに明るい。


中央部に着くと、教会の前の広場に大きな木が立っていた。

綺麗に装飾された木、生誕を祝う聖樹だ。


「すごい綺麗!あんなに大きい聖樹初めて見たや」


キラキラ輝く聖樹。

どこも光り輝いているせいで、少し目が眩しい。



広場で配られていたガチョウのローストを食べながらあたりを散策する。


教会の近くを通ると、中にたくさんの人が集まっていた。

覗いてみると、礼拝堂を使って教会の人たちが劇をしているのが見える。


「あれ、何の劇だろ」

「主神の生誕劇でしょ?...あっ、そっか。スクライラスの時、孤児院にずっと引きこもりしてたから、シュウは見てないんだ」


急にちょっと悪口言われた気がする。


主神、ルテルナ教の神で聖なる力を生み出す神とかだった気がする。

俺の知識のほとんどはモニカさんから教わったもの。そして一応シスターのモニカさんは教会関連の知識がかなり適当、なので俺も一部しか知らない。


主神、聖騎士、教皇、聖都、派閥。

物語とかは一切教わらず、あまり耳にしたくない派閥争いや裏の事件とかを教えられたせいで、なんか微妙に不信感が根付いてしまった。



そんな俺とは違い、サーシャはこのお祭り騒ぎを全身で楽しんでいた。


無料のジュースを片手に、城の前で行われていた劇団の演劇を目をキラキラさせて眺めている。


龍伐戦役、数百年前の伝説の戦いを模した劇をしている。

数百の龍と一千の竜、一万の騎士と十万の軍、一人の大魔術師と一つの軍団。

当時のエウレ地方の人口が三分の二まで減ったという戦いで、劇としては有名だ。


「ねえシュウ、大魔術師の伝説って本当になの?」

「...どうなんだろう、今はその域まで達した魔術師がいないって聞いたけど」

「えぇ、じゃあ星の雨とか時を止めたりとか雲の上まで飛んだりとかないの?」

「魔術の教本だと、『人に操れる域ではない』って否定されてるから、もうないんじゃないのかなぁ」


落胆するサーシャ。

一人で龍の侵攻を遅らせたといわれる伝説の大魔術師の使った魔術、隕石や時止め以外にも、瞬間移動や空を割るなど数々の逸話が残っている。


現在の魔術の限界はクラス6、それより上は伝説となってしまっている。

百年以上前に生まれた大魔術師を最後に、それ以降は使用者が現れていない。


別に記録がないわけではない。

書物は解読できる言語と保存状態でいくつも残っているし、その辺で売っている教本を買うと内容の一節が本に記載されている。


単純に、内容を理解できる人がいないだけだ。


小学生に数学オリンピックの難問を見せても解けるはずがない。

それと同じで、一般の魔術師が彼らの理論を読んだところで、理解して解き明かすことができないだけだ。


劇が終わった。

最後は大魔術師が偉大なる古龍を打ち倒し、恐怖の軍団が竜の群れを踏み鳴らしたという終わりだった。


「騎士が一番大好きだけど、大魔術師もかっこいいなあ...」


興奮が冷めない様子で話すサーシャ。

買った肉串をむしゃむしゃ食べている。


「大魔術師って何人もいたんでしょ?一番すごいのって誰?」

「今の劇に出てた人じゃないかな。『大魔術師』って言ったら、ほとんどあの人のことだったりするし」

「他は?他にすごい人は?」

「えーっと...。最初に魔術を生み出した魔女とか、魔道具の発明家とか、騎士と竜の魔術師とか?」


とりあえず覚えてる大魔術師を片っ端から行ってみる。

目がイルミネーション以上にキラキラし、犬みたいにぴょんぴょんスキップしてかなり楽しそうだ。


「じゃあシュウも将来なってよ!大魔術師!」

「そんな無茶を...」


急に勢いよく振り返って無茶なことを言ってくる。

サーシャの長い髪が振り返った拍子に俺の顔に直撃した。



淡い金色の髪の毛とぴょんぴょんとスキップ。

ゴールデンレトリバーに見えてきた。

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