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転生者の異世界旅行記  作者: 豆板醤
第3章 冬の旅と戦
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50話 "鎖鎧"

肌寒い。

毛布に包まれて寝ていたが、いつもより寒さを感じて目が覚めてきた。

もぞもぞ動くと、隣に居るはずの熱源がない。

記憶に新しいことが思い起こされる。


勢いよく飛び起き、部屋を見渡す。

サーシャはテーブルに座り、貯金を数えていた。


安堵で胸をなでおろし、再びベッドに潜る。


「二度寝しないでよ!ほら起きて!」

「ええぇ...」


叩き起こされるようにベッドから引き釣り出される。

サーシャがテーブルの上を叩いて指し示す。


「これ!60万グロスも貯まったんだよ!」


テーブルの上には金貨の山、60万もあるらしい。

賊を打ち倒したことに対する褒賞で50万グロスが市から払われ、貯金の10万と合わせて60万、かなりの額が貯まった。


「これだけあればさ、シュウの防具買えるんじゃない?」

「サーシャの防具の新調を優先した方がいいんじゃない?」

「え?じゃあシュウの防具はどうするの?」

「サーシャが今着てるやつを着ればいいよ。少し調整すれば着れるんじゃない?」


俺の身長は175cm、サーシャが171cmくらい。

4cmくらいしか差がない。肩幅の差はあるが、もともと少し大きめの革鎧だったので、少し紐を緩めれば着れるだろう。


「70万もあればチェーンメイルとか買えるだろうし、サーシャはそれを着て俺は革鎧を着ればいいよ」

「うーん...。なら、そうしよっか」



そうして向かった防具屋。

目的はもちろんチェーンメイル、鎖帷子だ。


小さな鎖の輪を編んで作られた鎧、防御力は革鎧より遥かに上だ。

ただ、作る手間の問題で価格も革鎧の遥か上。


価格は40万グロス、ルヴニツァにはチェーンメイルの制作に長けた技術者が多いらしく、他の都市よりは少し安い。


「革鎧より重いね...、動きづらいや」

「なんでそんな重いのを着てジャンプできるの...」


15か17kgはあるのに。

ぴょんぴょん飛んで回転してる、力の塊だ。


ちょうどいいサイズのが在庫にあったので、すぐに買うことができた。

手入れがかなり面倒らしく、定期的に油で磨かなきゃいけないらしい。



「毎日油で磨くのって、かなり面倒だね...」

「手入れ道具、また別に買わなきゃだね」


革鎧も鎖鎧も、定期的にメンテナンスをしないとダメになる。


「そういえば、錬金術の本に書いてなかったっけ?保全の何とかってやつ」


そういわれて思い出した。

錬成工房の人がくれた本に書いてあった技術、道具の保全などができる保全技術。

これを覚えれば、メンテナンスはだいぶ楽になる。


「ちょっと練習してみようかな、錬成術...」

「シュウが普段使ってる魔法とどれくらい違うの?」

「うーん...、大本の技術から違うかな」


魔力を使う技術という分類なら、魔術も錬成術も祈祷術も同じ。

ただ、魔術は魔力で生み出すもので、錬成術は魔力で変える物、祈祷術は魔力で奇跡を降ろす物、とかなり違う。


「錬成術師の冒険者っているのかな」

「攻撃とかができないし、いないんじゃないかな?」


職人などが使うような技術で、戦闘向きじゃない。

召喚術を使う冒険者は居るらしいが、錬成術で戦う冒険者は居ないだろう。


宿に帰り、さっそく本を読む。



そして数日が経った。

錬成術の本をずっと読み、ようやく基礎の技術を覚えられた。


「部屋がもう石だらけになっちゃうよ...」


拾ってきた石を使い、宿で練習を続けていた。

そのせいでいくつも金属が生えた石が床に転がっている。


「基本的なのは覚えれたけど、修繕や保全はまだ遠そうかな」

「よくわかんないなあ...、魔法って難しいや」


覗き込んでいたサーシャが離れ、剣と鎧の手入れを始める。


活発的で元気と力の塊のような性格だが、かなり几帳面な性格だったりする。

毎日の軽い確認と、使用後の念入りな手入れは欠かさないし、貯金の管理もサーシャが自分からやっている。


俺は鎧の手入れが苦手なので、サーシャがまとめてやってくれている。

装備品や金銭の管理をサーシャに任せる代わりに、俺は旅程や受ける依頼の調整をしている。



ルヴニツァに滞在し大体二ヵ月が経過、十二月の最中だ。

一月中には次の目的地、ボロヴィツに着きたいので、そろそろ出発になる。


徒歩で長くて五日間か、それくらいはかかる。

冬季の旅、かなり念入りに準備をしないと凍死してもおかしくない。


それでも向かいたいのは、普通に温泉が入りたいからだ。

割と強行軍だが、道中の宿などを使えば少しは安全に向かえるはずだ。

それに、冬季の旅用の道具もしっかりある。


前世の中世だと、この時期に旅をすれば死んでしまうだろう。

魔法があるこの世界だと、魔道具を使った防寒具がある。

それに今年は例年より比較的寒くはならない、らしい。


「それ、次の旅程?」


手入れが終わったサーシャが地図を覗きに来る。

宿、野宿、野宿、宿、野宿のざっくりとした旅程。


「うん。ルヴニツァで年越ししたら、何日か後にボロヴィツに向かう予定だよ」

「ボロヴィツの近くに温泉があるんでしょ、どこらへんなの?」

「山岳の方にある村、らしいけど、現地に行ってみないとわからなさそう...」


地図にはその山岳が書かれていない。

本では確か、南部の山脈の近くと書かれていたが、ボロヴィツから山脈まで300kmほどはある。


古い本だったので間違いが多いんだろう。



そう考えて納得し、旅程の調整を進めた。

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