420-逃避
宇宙服を身につけつつ、俺はどうしてこうなったのかを考えていた。
いや、どうして外に出ることになったかは、三行で説明できる。
まず、ナスカにせがまれる。
次に、ペルソナにせがまれる。
シアラは行ってきなと笑い、ブルーノはその場にいなかった。
あの入り口らしきものが見つかってから数日、何の進展も無い俺たちは究極の無にぶち当たった。
そのせいだろう。
ペルソナは単純な調査として、ナスカは退屈からだ。
そして俺は、外に出ることになった。
「これが.....」
「すげえよな、暑くも寒くもねえ」
「いや、異常だけど」
サルバンプライムの気温は俺の体感での日本の気温からすると若干寒い。
勿論季節によるのはわかっているが、人間によって体感の適温は異なるだろう。
宇宙服越しとはいえ、誰もが適切な温度を....というのは異常と言ってしかるべきだ。
「はい、異常です。私にとっては外気温は零度近く、排熱の際の適温です」
「だよね」
やっぱりここはヤバい。
魔女の家みたいなものだ、魔法がその辺に転がっていて、下手にふたを開けると.....
カエルになったりで済めばいいが、ここは現実だ。
死ぬよりひどい目に遭うかもしれない。
「デート気分だぜ」
「気を抜いたら次の瞬間死ぬかもしれないのに?」
「だから楽しいんじゃん」
分からんな。
俺は溜息を吐いて、周囲を見渡す。
シャトルで降りてきたはいいが、入り口以外には本当に何もないな。
安全らしいので、俺はナスカを脚で蹴って先行させる。
カナリアの代わりだ。
「階段、長いね」
「どんな神秘があるのか、気になるよなー」
「どういう神経してるの」
いや、分かってはいる。
ナスカは人間の精神構造じゃないから、恐怖とかはあくまで彼の内面で再現された姿でしかない。
とはいえ、本能から来る恐怖はあるだろうに....という問いだ。
階段の終わりの先は、また長い通路だった。
「.....ん?」
俺は視界の端を、赤い光が過ったように感じて立ち止まる。
周囲を振り返るが、何も無い。
「どうした?」
「いや、何でもない」
中は妙に明るい。
ペルソナが眼球部分を発光させてライト代わりにする隠し芸を見せてくれたが、某鉄腕ロボットと違って本来の用途ではないらしいので禁じた。
何でも暗所で足元の視界を確保するための機能で、こういう場所を照らし出すのは用途外なんだとか。
「私はお世話係としてあらゆる面で人間を越えられるように設計されていますので、当然の事です」
「お、行き止まりだぜ!」
ナスカが通路の果てに向かう。
俺がそこに立ち止まると、壁に文字が浮き上がった。
俺はペルソナの方を見た。
彼女は首を振る。
「探査チームが入った時には起きなかった現象です」
「だよね」
やっぱり何か起きたじゃないか。
俺は通路を戻る。
「帰るのか?」
「そりゃ帰るでしょ」
俺は階段を上る。
正直、ホワイト・ノアの件は俺もずっと後悔している。
それどころじゃなかったから、無視したことが大ごとになってしまった。
だから、俺は自分の存在がキーになるあらゆる事象を軽視しない。
「こっちは別にどうでもいいからさ、真実とか。他にどうしようもない時の最終手段にしたい」
「.....ああ、そういう事か。いいぜ、戻ろう」
俺たちは来た道を戻る。
その道中、特に何も起こらなかった。
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