419-困窮
というわけで、表面の探索が開始された。
地上部隊と上空部隊に分かれ、まずはマッピングからのようだ。
オリオンからも戦闘用ドローンを出し、偵察に回させている。
「とは言っても、まあ......何も無いんだよね」
「ああ、ほんとにな」
惑星表面には何もない。
金属の表皮が永遠と続いていて、溶けない”雪”に覆い隠されている部分もあるが、そこに何かあるわけではない。
本当に何もないのだ。
「まあ、という訳で何も無いわけだから、苦しむナスカを横目に優雅に編み物でも」
「ババくせえ趣味だな」
「この世界、意外と娯楽が少なくて.....」
オフラインだと意外と娯楽は少ないものだ。
一応オフラインでも遊べるゲームはダウンロードしてはあるが、それらは本当に暇になった時の為にとっておく。
エグニカ・ドールクライスはオフラインゲームではあるし、割とどこでもオンラインに出来るがここでは無理だ。
ローカルホストでの通信プレイには対応しているが、ナスカは脳筋だしペルソナは忙しい。
出発前にシアラやブルーノに布教しておけばよかった。
「何もない惑星の上に取り残されて、少なくとも非常用食料はあと30日分程度...」
これまでの教訓から、非常用食料を余ったスペースに仕入れて詰め込んでいたので、ちょっと恨まれつつそれらを船団にも売り捌いた。
ただで配るのはナシだ。
それで30日は保つ。
「それにしても、エストジール帝国にも編み物の文化ってあるんだね」
「そもそも、その毛糸は兄貴の贈り物だろ」
「あ、そうだっけ」
「兄貴も草葉の陰で泣いてるぜ」
「まだ死んでないとは思うけど」
「過労死してるかもしれねえぜ?」
ペルソナが忙しいので、会話に割って入る人間がいない。
無限に続くかと思った会話だったが、
「リリー様、構造物を発見したそうです」
「えっ!?」
その忙しいペルソナに割って入られた。
俺は彼女の横に移動し、送信されて来たであろう画像を見る。
「構造物っていうか......入り口だよね、これ」
「そのようです」
地球で見た地下道への入り口のような、台形の構造物。
”雪”で覆い隠されているせいで、観測できていなかったようだ。
「中の調査は?」
「どうやら内部に続いているようですが、探検メンバーが足りないため現在輸送機が向かっているようです」
「進展があるのは良かったけど.....」
蛇の口に見えて仕方がない。
内部は魑魅魍魎、とかでなければいいんだが。
まあ、とにかく進展は歓迎だな。
「輸送機が到着、内部の探索が始まりました」
「異変に注意して、ペルソナ」
「はい」
「今襲われたら、迷惑じゃ済まないしね。せめてここの事をもう少し知らないと」
まだ護衛艦は修理も終えていないしな。
戦闘艦を一隻落とされているのも痛い。
地上に墜落した戦闘艦は原形をとどめていなかったし、生存者はいなかった。
あの敵.......仮に「ランサー」と名付けているあれに突き刺さられて、自爆されたんだろう。
残骸を回収できていないので、あの槍が何で出来ているかは分からないが。
「内部に到達しましたが、行き止まりのようです。安全性は確保されているようですよ」
「そうなんだ」
「リリー様、行ってみませんか?」
「絶対、何か起きるけど」
今まででそのパターンがなかったことは一度も無い。
俺は危険な事はしない。
何度も言っているはずだ。
ペルソナも分かっているからか、二度とそれを口にする事は無かった。
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