417-終わりなき蒼穹
「とにかく、一度帰還するべきです」
俺はサボランたちへの通信で、そう申し出た。
この事態は、明らかに異常だ。
通常でない事が起きているときに、何もかもが通常通りに進むとは限らないと、俺はこれまでの旅で実感していた。
『.....リーダー、俺も同感だ』
『ここまで来たのだぞ、戻るなど....』
『俺たちの常識が全く当てはまらないんだ、敵は消えたが、俺たちがそうじゃないって、どうして言い切れるんだ? あの霧だって、ただの霧じゃないのはあんたも分かってるはずだ。宇宙と連絡が取れないのも、全てが奇妙だ』
そう言うのは、別チームのリーダーのカトーだ。
日本人っぽい名前だが、全然違うらしい。
とにかく俺は帰りたい。
こんな場所にいたくない。
ここは――――怖い。
「リリー様、顔色が.....」
「ううん、何でもない」
隠す必要もない。
こんな事は怯懦ですらない。
ただ恐ろしかった。
魔法を見た気分だった。
科学の延長線にない、本物の魔法を。
「こんな事が可能な文明の遺跡をこれ以上探索するのは、自殺行為に近いと私は感じました」
『.......それならば、探査・調査を続行するチームだけが残るという事にしてくれ。軌道上の船団と合流し、帰還するか残留するかを決定してくれ』
「分かりました」
この老人は何が何でも結果を持ち帰りたい。
いや。
次がいつになるかも分からない現状は、ここの全ての真相を知りたい。
それが正直な気持ちなんだろう。
ただ。
『わしの自殺に、付き合ってもらう必要は無いからな』
自殺行為である事は理解しているのだろう。
だからこそ、俺たちを遠ざけてもいいと感じている。
「ペルソナ、帰還準備」
「はい」
オリオンは地上に降りていたが、他の艦船と共に出港準備を進める。
その際に、コルベットの一隻が先んじて軌道上へと戻る。
斥候の役割もありそうだ、軌道上との通信は途絶えたままだからな。
だが。
「コルベット、なんか変だね」
「はい、特定座標で静止しているように見えます」
何かあったのか、コルベットはレーダーに映ったままだ。
肉眼でもかろうじて見える位置に留まっている。
『......カトー隊長、ヤベーかも....』
『どうした?』
通信が響く。
空に行ったコルベットはオフラインになっていたはずで、上を見ればゆっくりと降下しているのが見えた。
『宇宙に出られないんだ、どこまで行っても青い空が広がってるだけで』
『何だと?』
『ぶつかる感覚は無い、何か途轍もなくでかい膜に進めないようにされているというか...』
『分からん、もう一回行ってこい』
『ラジャー』
俺は底冷えするような感覚がした。
そうだ、何故気付かなかったんだ。
地球人なら見慣れた空、その違和感に。
雲がない。
そして、太陽も月も見えなかった。
空が晴れているのに、通信が途絶えたまま。
「リリー様、確かにこれ、相当ヤバいかもです」
「.........だね」
認めざるをえなさそうだ。
ペルソナは空を観測したんだろう、そしてそこに何もない事を知った。
『駄目だ、隊長! 空には届かない! 撃ってみたんだが、そこで止まってやがる!』
本格的にまずい事態。
俺たちは――――この惑星に。
閉じ込められた。
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