277-嘲笑の裁判
「がごっ?!」
首筋に衝撃が走って、俺は目覚めた。
だが、暗い。
腕も、後ろ手に縛られていて、口に何か嚙まされている。
身体も足も、ベルトか何かで拘束されている。
「では、これより裁判を開始する! 観衆の者は静粛に!」
裁判だと?
俺は何も悪い事は....いや、そもそも、俺の事じゃない可能性も...いや、ないな。
なら、こんな拘束をする意味がない。
「被告人、リリー・シノ!」
「こちらに居ります」
俺の横で、誰かが言う。
俺は誰だと聞きたかったが、轡のせいで顎が動かない。
顎が痛くなるほどの大きさのボールの様なものが、強引に押し込まれている。
「それでは、罪状を読み上げる!」
声を上げてもいいが、こんな事になっている以上叫んだところで無駄だろう。
被告人を口封じする裁判など、まともじゃない。
「まず一つ! 皇帝陛下の暗殺未遂による国家反逆罪!」
....そんな事はやっていない。
今、口に出来たところで変わらないだろうな....
「次に、国庫からの持ち出しを偽装した書類で行ったことによる公文書偽造罪!」
それもやっていないが、冤罪をかけるなら丁度いいか。
「最後に、ウォルタール人を弁護しようとした事により、旧法第四十七条により国家転覆罪に問う!」
どうせ最後が全部なんだろう。
旧法を持ち出してまで非難する時点で、公式の場じゃないな。
落ち着かないが、そわそわしても仕方ない。
叫びたいくらいの気分だった。
このまま放置すればまずいと思ってはいても、ここで叫んだところで無駄だと理性では分かっていた。
「被告人リリー・シノは昨日午後八時に、皇帝陛下と対面で会う約束を取り付け、所持していた果物ナイフで殺傷する計画を立てていた! これは調理場のものであると調査で判明している!」
たった一日で調査が完了するものか。
俺は轡の下で嘆息する。
子供のおままごとじゃないのだから、もう少ししっかりやったらどうなんだ。
まあ、この場において火にくべられようとしているのは俺なのだが...
「貴族連合はこれに対して有罪を求刑する!」
「有罪!」
「有罪!」
「有罪!」
じりじりと胸の内で恐怖が募る。
流石に死刑にされる事はないとは思うが...それ以外なら、どんな目に遭ってもおかしくはない。
「続けて、被告人リリー・シノは二十日ほど前に、国庫からの持ち出しでダイラ子爵のパーティーに出資し、それを偽造した書類で行った事により、公文書偽造の罪に問う!」
「有罪!」
「有罪だ!」
「有罪!」
これについては覚えがないが、内容を鑑みると誰かの不正を俺に押し付けたな。
ケチくさい真似をと思うが、何をパクったかではなく、その罪自体をなすり付けて無かった事にしたいのだろう。
「そして、被告人リリー・シノは剣闘士大会において、厳正なる勝負の結果を穢し、あたかも不正によって破れたなどとウォルタール人の剣士の敗北を弁護し、試合のやり直しを申し立てた! これは実行され、彼女の望む形での勝利が成し遂げられようとしている! 重罪であるとし、有罪を求刑する!」
「有罪!」
「有罪!」
「死刑に処せ!」
「静粛に!」
そこまでウォルタール人が憎いのか。
いや、意義は失われた差別なんだったな、ウォルタール人が嫌いだからやっているのではなく、下で、負けるのが当然で、誰も口出しなどしないのが当たり前。
そういう扱いなんだろう。
貴族側も、ただ勝負の結果だけに文句を言ってるわけじゃないだろう。
庶民の主催者だけで、あのマッチを組めるはずがない。
こいつらが支援して、それが無駄になったとかそういう理由だったのかもしれない。
もしくは対抗選手から賠償金でもせしめられたか。
「判決を言い渡す! 被告人リリー・シノに終身懲役刑を言い渡す!」
「惑星の収容所へ移送せよ!」
そして、暫くの後。
語るにも値しない茶番の後に、そういう判決が出た。
死刑ではない。
俺の身柄を保証できなければ、帝国に王国が制裁を下すような事に発展するかもしれないと貴族は恐れているはずだからだ。
実際はたかが王国人一人のために、王国が動くはずはないのだが。
「歩け!」
俺は無理やり連れていかれる。
この暗闇の先に、何があるのか...
出来れば早く、誰か助けて欲しい。
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