275-休暇の終わり
「(やれやれ、またか.....)」
リリーは森の中に設けられた道を歩いていた。
帝城の外庭にある館で、皇帝がディナーを希望していたので、それに応えるために向かっていた。
大方、最後の挨拶がしたい等の理由なのだろうと、彼女は予想していた。
「ここか」
森の中にある館。
リリーは無遠慮に扉を開け、中を見た。
中には、誰もいなかった。
「どういう――――」
声を出そうとした時、彼女は後ろから押さえつけられた。
誰だ。
リリーがそう叫ぼうとしたとき、その男は首元に注射器を押し付け、引き金を引いた。
彼女の体が一瞬痙攣し、目がひっくり返ってそのまま気絶した。
「こちらC、確保」
『了解だ、そのままこちらへ運べ。怪我をさせるんじゃないぞ』
「分かった」
リリーを抱えたCと呼ばれた男に、他の人間が駆け寄り手伝う。
素早く撤収した彼等は、森の中へと消えていく。
そして、数十分後。
森の中より一隻の小型艇が飛び立ち、どこかへと飛び去った。
◇◆◇
数時間後、リリー・シノ拘束の報を受け取ったリアシュは、顔面を蒼白にした後に、息を吐いた。
そして、静かに言う。
「.....詳細を報告せよ、グラハム」
「はっ。帝城内にてマルゴ伯爵に粗相をしたという行いについて、下級貴族たちが彼女を拘束、即決裁判にて終身懲役刑、既に惑星アルゴラⅡへ移送済みとの事です」
「何故、それを許した!」
「.....全ては終わった事です、陛下」
グラハムはあくまで判断をリアシュに委ねていた。
報告を受けても、眉一つ動かさずに。
リアシュはそんなグラハムに、疑念を抱いていた。
「グラハム、まさか貴様.....」
「陛下、ご判断を誤らずに」
その言葉は、リアシュにはよく効いた。
自らの立場が責務と責任を思い起こさせ、冷静さを呼び起こしたのだ。
「全ては慎重に行わなければならない。グラハム――――エルドールを呼び出せ」
「――――はっ」
エルドール・マイン・グラッドベルン。
軍部のトップの一人であり、親皇帝派閥の一員である。
それを呼び出すという事は即ち、軍が動くという事だ。
「では、失礼致します」
グラハムは部屋を出ていく。
そして、次に向かうのは別の部屋である。
そこは、シラルドの私室であった。
前皇帝側室の部屋を転用したその部屋で、シラルドが待っていた。
「シラルド様」
「ああ、それで....どうだ?」
「皇帝陛下にはそのままお伝えしましたが、恐らく移送先の惑星は嘘の可能性が高いと、私は思います」
「だろうな。.....この件は俺が調査するから、お前はそれとなく伝えてほしい」
「了解しました」
グラハムは深く頷き、再び席を立った。
「救世主、何者かに誘拐される!」
その事件は、瞬く間に帝都を駆け巡った。
そして、皇帝が動き始める。
同時に、王国も――――
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