267-流行と夜空
昼食を終えた俺たちは、街の中心部へと繰り出していた。
帝国といえども、別にこの辺は変わった様子もない。
ショーウィンドーを横目に歩きつつ、適当な服飾店へと入る。
「何か目を引くものはあるかな?」
「ええ、ありますね」
一目見ただけでわかる。
クラリウム星系群で買い物をした時、ブランドショップで服を買った。
ここもブランドショップだが、形式が違う。
王国では原色よりの色を避け、素材も合成品が多かった。
あの時買わなかったような服は、レトロなSFで見るような服ばかりだった。
それに対して、帝国は俺が来た地球寄りの感覚に近いものが揃っていた。
まあ、買わないが。
王国で購入したものは全て、胸がきつくなってもう着れない。
最近は成長も控えめになったが、基本的にオーダーメイドでなければ充分な品を用意できないのだ。
というわけで、アルのぶんを買う事にする。
「格好いいね」
「そ、そう?」
「うん、かっこいい」
帝国のトレンドは、格好良さが前面に出ている。
日本のような慎ましい格好良さではなく、所謂バカみたいな格好良さが前に。
ただ、それを恥じることなく堂々と見せつけるのが流行のようだ。
「不思議な流行ですね」
「いや。...それは貴方が広めたものだ」
「そうなんですか?」
俺が?
疑問に思う俺に、皇帝は説明をくれた。
「女性と言えばドレス、そして慎ましやかにというのが帝星民の考えだったのだ、しかし貴方が騎士の服装で登場したことから、多くの民はその隠さず、堂々とした振る舞いを真似しようと躍起になっているのだ」
「そんなに大きな意味のある服装ではなかったんですが....」
いわゆる”娼婦みたいなドレス”を着させられそうになったから、慌てて服を用意しただけだ。
....それも、シラルドの私服を。
「支払いを」
「帝室支払いで頼む」
「はい」
流石に店員は慣れたものらしく、慌てふためく事はなかった。
貴族相手の商売も当然こなしているからだろうな。
買い物を終え、服は配送サービスに任せる事になった。
「さて、次はどうしましょうか?」
「実は、最後に案内したい場所があるのだが....アル君には少し退屈かもしれないな」
「そうですか、では....適当なカフェかレストランに滞在させたいのですが?」
「近くにシラルドの行きつけがある、そちらに依頼しよう」
何かは知らないが、二人きりになりたい理由があるらしい。
あるいはお子様に用はないと言いたげだ。
「アル、ごめんね」
「大丈夫.....」
近くにあったカフェにアルを預ける。
シラルドの行きつけというから、店員も選りすぐりだろう。
決してアルに不快な思いはさせないと信じたいが。
皇帝は、俺を都市の中央部へと案内した。
中央広場よりも中央にある、交差点だ。
交通規制が敷かれていて、一般人も見えるが近寄れてはいない様子だ。
「ここが何か特別なのですか?」
「ああ、今から特別になる場所だ」
青鈍色の空がよく見える。
綺麗ではあるが、どこからでも見える光景である。
そう思っていた俺だったが、突然轟音と共に、その空を何かが横切った。
.......戦闘機か?
よく見えなかったが、翼がV字に曲がった変な機体だ。
「これを見せたかったのですか?」
「もともと、民間向けに航空ショーを行う予定だったので、案内したまでだとも」
「そうですか」
軍事パレードのようなものらしい。
王国に俺が戻る前に、軍事力を見せつける目的もあるんだろうな。
思えば、この好待遇も王国人である俺に対しての、見せつけの行為だったのかもしれない。
理由はどうあれ、そういう感情も入っているんだろうなと俺は思った。
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