262-リンチ
試合は続く。
2試合目、3試合目は長引いて、激しい鍔迫り合いでスタジアムは湧いた。
アルは大興奮だったが、俺はそこまで入り込めなかった。
引っかかるものがあったからだ。
VIP席のウェイターはベイラス人なのに、双眼鏡で観客席を見ると、ウォルタール人がウェイターの大半を占めている。
しかも、扱いも悪い。
転ばされても、誰も気にも留めない。
これが現実ということなんだろうか。
『さあさ、皆様! 本日最後の試合で御座います! 帝国最強に、愚かにも挑む奴隷剣士の悲劇!』
その時、耳を疑うような声が会場に響き渡る。
四試合を終え、残るはケレンの試合だけだ。
アルは帝国語を知らないから、分からないだろうが...
『最初に入場するのは、ビルフ・ノスタージア! 北部の猛獣です!』
歓声を浴びながら登壇したのは、凄まじい筋肉の男だ。
観客席に手を振っている。
これと戦うのか。
ただ、まだ勝機はありそうな気もするが...
『続いては...!』
「...」
『アレイン・グレイブ! スカルヴァ星系の英雄だ!』
「はあっ!?」
二人目が入場した。
今までずっと一対一だったというのに。
「......どうしたの?」
「いや、何でもない...」
これが普通なのかもしれない。
これくらいならひっくり返せるほど、ケレンは強いと思われて...
『最後に出るは、シェイン・ネジェカ! 前大会をご存知なら、知らぬ者はいない英雄だ!』
「...」
一対三か。
とはいえ、まだわからない。
ケレンの強さを俺が知るわけないんだからな。
ひょっとすると、三人くらいなら余裕で倒せるのかもしれない。
「あれ? あの人は?」
「...今回の選手だよ」
わざとなのか、ケレンが入ってくる時に選手紹介は無かった。
客席から色々なものが投げられて、届かずにリングのそばへ落ちる。
扱いがまるで違う。
『では...開始!』
始まった直後、ケレンは真っ直ぐにアレイン選手へと突っ込んでいく。
俺にはよくわからないが、それは悪手な気がする。
三人に半包囲される形になったケレンだが、すぐにアレインと剣を打ち合う。
アレインの剣を吹っ飛ばしたケレンは、シェインに向かおうとして...
「はっ?」
起き上がってきたアレインに殴られた。
剣を捨てて、失格の筈なのに、だ。
特に審判は何も言わない。
馬乗りになって殴られても剣を離さないケレンだったが、そこに寄ってきたシェインとビルフ選手に剣でめった打ちにされる。
誰も何も言わないまま、残酷に五分が過ぎ、ついにケレンが剣を手放した。
地面に剣が落ちる音が響く。
『試合終了! 最強連合の勝利だ! 皆様、拍手をお送りください!!』
歓声が巻き起こる。
アルも俺も、全然納得がいかなかった。
これが決勝?
ただのリンチじゃないか。
歓声を浴びながら退場していく三人の後ろで、ケレンは俯いて去っていった。
「...アル、ここでちょっと待ってて」
流石に抗議するべきだろう。
俺は立場のある人間なんだし、こんな試合を見せられて愉快に思えるはずもない。
俺は席を立ち、皇帝のいる場所へ向かった。
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