252-皇帝とのお茶会
翌日。
俺は皇帝からの招待状を受け取った。
『午後二時に中庭でお茶を飲むけど、来てくれると嬉しい――――』
大体そんな旨の事が書かれていた。
実際は筆まめな文章なのだが、分かりやすく言うとだ。
「とは言ってもなぁ」
忙しいだろうに、俺を誘うメリットって何だ?
高度に政治的な何かなんだろうが、パンピーには分からない。
仕方ないので、クローゼットに入っていた黄色のドレスを着る事に決めた。
ドレスは無駄に重いんだよな、肩が凝る。
生地の重さなのか....?
時間が近づくと、俺は部屋を出た。
「(人の目があると歩きづらいな)」
全力ダッシュなんてしたら、まあすごい目で見られるからな。
この辺は地球と変わらないんだが、どうにも落ち着かない。
「...ここは」
中庭に着くと、皇帝陛下に指示されているらしいジャミアンに会った。
少し話をして、目的地へと案内される。
そこには大きな池があった。
池の真ん中に出島が突き出していて、そこに俺たちは向かう。
「待っていたよ」
「...え、ええ」
そして、その中央のテーブルで、皇帝陛下が待っていた。
またこのパターンかよ。
そんなに二人で会うのが好きなのか...
俺は席に着く。
「一度君をこの場に招きたいと思っていた」
「そうですか」
「君が帝国に来ると知ってから、新たに設立した場所なんだ」
怖いな。
今ゾッとしたぞ。
サフィア嬢が勘違いするのも仕方ないことだな。
特別扱い、というよりは英雄に個人的な興味が...とかそういう感じだろうが。
何しろお伽話の英雄みたいな感じらしいからな、帝国内での俺の扱い。
「そうですか」
「ああ」
俺にそういうことしないで、もっと周囲の令嬢の想いに気づいてやればいいのに。
そう思ったが、言わないことにした。
どう言い繕っても、俺の語彙だと失礼になってしまう。
俺は適当に菓子類をつまむ。
そうしていると、メイドがやって来て茶をポットから注いでくれた。
「君の好みがわからなかったから、悪いが私の好みのフレーバーにしてある」
「でも、好きですよ」
「そうか...よかった」
俺は茶のフレーバーに明るくないが、紅茶のカモミールに近いだろうか。
意識の低い生活スタイルだからな、今も昔も。
改めて対面すると、いつもナスカを思い出す。
家族だからなんだろうな。
「何か、お話があるのでしょうか?」
「いいや、特にないな」
「...? では、何故呼んだのですか?」
「特に理由はない、いや...君と茶を飲みたかっただけなのだ」
益々理解できないな。
俺はこうして無為な時間を過ごすのはあまり歓迎しない派だ。
何かしていないと爆発する。
「でしたら、お話を少し」
「...何だ?」
「陛下の好みの贈り物や、趣味についてお聞きしましょうか」
「...ふむ」
サフィア嬢に伝えるための情報収集を、ここで終わらせておこう。
皇帝陛下のコネは流石に作れないだろうが、伯爵令嬢、将来の皇妃のコネはありがたい。
「私はそなたからの贈り物であれば何でも良いが、できれば揃いのアクセサリーが良い」
「そうですか」
これはいい情報だ。
次は趣味だな。
「私の趣味は...ううむ、文を書くことと、剣技を少しだな」
「剣技ですか?」
「そなたが聞いてわかるものでもないだろうが、パラティオン流を少し嗜んでいる」
なら、サフィア嬢は揃いのアクセサリーや、アームガードや手袋などを贈れば喜ばれるんじゃないだろうか。
今までの贈り物が悪かったのかもしれないな。
「...そうだ、君の好きなものと趣味を聞きたい」
「私ですか?」
俺の趣味か...
言っていいか迷うが、半無礼講と思って行こう。
「私は平民ですので、陛下に理解できるものかは分かりませんが、好きなものはお茶ですね、気分が落ち着きます」
長い航海、心を落ち着けるのは茶やコーヒーだ。
「いや、理解できなくはない。私も茶は好きだ、宇宙を旅する君には、それが一番だということだな」
「ええ、それから...趣味はゲームです」
「ゲーム? 盤上遊戯か?」
「いえ、電子画面の....ビデオゲームですよ」
「何と....平民の間で流行っているのは知っていたが、私にも出来るか?」
「はい、大丈夫だと思います....けど、王国の携帯端末が必要ですよ」
「用意させよう」
本気か。
まあ、このお茶会で得られたものはあったかもしれないと、俺は後に思う。
エグニカ・ドールクライスの新規ユーザーが一人増え、俺は招待報酬を受け取り、アルたちを助けられるフレンドが一人増えた。
こんなんでいいのか....
↓小説家になろう 勝手にランキング投票お願いします。




