9話 死について
パァン——
パァン——
「よし。」
「次は?」
「もう弾が少なくなってきた。戻るか。」
「どこに?」
「キャンプだろ。」
「キャンプは襲撃にあっているらしいじゃないか。」
「そろそろ終わっているんじゃないか?」
「確認しよう。」
ザザ——
「こちら、バーギルア。応答願う。」
『あー。聞こえるか?』
「聞こえる。」
『どうした?』
「そろそろそっちに戻りたいが、状況はどうだ?」
『なんとか撃退し終わったところだ。』
「了解。ではそちらへ向かう。」
『逃げた奴らがそちらに向かっている。五人だ。鉢合わせないようにな。』
「わかった。気をつける。」
「ということだ。帰ろう。」
「ああ。」
こちらが使っているルートは特殊で、おそらく01が使っているルートも同様だろう。お互いが避けあっているのだからばったりあうことはないだろう。
相棒はよく頑張ってくれた。任務を全うすると言うことは簡単なことではない。それは俺にも言えることかもしれないが。
手首につけたブレスレットは今も大切にされている。それが本来の価値よりも大きな意味を持つことは言うまでもない。それが原動力となっているのだろうか?あまりそうとは言えないのかもしれない。原動力というよりはむしろ、死についての理解を深めるツールとなっている。そんなものをなぜ今もつけていのか?手放してしまったほうが気持ちが楽になるのかもしれない。人を撃つときの生々しさを軽くしてくれるだろう。それをしないのは生きる理由を持つためだろう。これは死の意味と同時に生きる意味も示してくれるのだ。
「ひどいな。」
キャンプの周りには戦いのあとが残っていた。
「おかえり。二人とも」
「隊長。」
「俺達がついたときにはもう終わりかけだった。レア隊は全員生還だ。」
「そうですか。良かった。」
「お前たちはどうだった?」
「まあまあなダメージだったと思います。隊長クラスと思われるやつを二、三人と単純に数もだいぶ減ったと思います。」
「よし。じゃあ、休んでくれ。」
「はい。」
レア隊はどうやらしぶといらしい。危ない場面はたくさんあったが今のところだれ一人死んでいない。明日の任務はどんなものだろう。
「今日は、レア隊とシン隊、アシド隊、ベース隊合同で、バーギルアを本格的に攻撃する。」
「昨日で、こちらは兵を失った部分もあるが、相手も同じような状況だ。ここで体制を立て直すより、いっきに叩くほうがいいと言う判断だ。」
「今日でバーギルアを落とし切る。いいな。このキャンプの総力戦だ。」
「自分の身は自分で守ることを心がけろ。」
四人の隊長が話す。色々まくし立てているが、これで総攻撃など、無謀ではないのか。昨日、レア隊が偵察に行ったことはバレただろう。しかし、きのう二人だけでなんとか頑張ったんだ。大丈夫か。
「総攻撃か。初めてだな。」
「そういえばそうだ。いつも隠密行動ばかりだったから。」
「なれないが、やれることをやるしかない。」
「そのとおりだな。」
カチャカチャ——
「準備完了だ。」
「了解。」
ドウン——
ドカンッ——
手榴弾が投げ込まれた。開始の合図だ。
「焦らず、いつもと変わらない、効果的な一発を。」
「了解。」
コキッ——
「では、あの左胸に勲章があるやつ。」
「了解。」
パァン——
パァン——
「よし。」
「次は、あの男だ。」
パァン——
「そしてその隣も。」
パァン——
「よし。次はきのう言っていたこの要塞のトップがいるだろう部屋を狙撃する。移動するぞ。」
「いっきに決着をつけるんだな。」
「ああ。」
「了解だ。」
ゾクッ——
嫌な悪寒がした。
「伏せろ!」
ドッ——
近くの気に着弾した。向こうのスナイパーに見つかったのか。
「このまま匍匐前進だ。」
「一度体制を立て直さないのか?」
「それしかないな。すまない。冷静さを欠いた。」
「いいんだ。」
だめだ。要塞を攻めるという攻撃的状況で、何でもできる気になっていた。油断は本当に命に関わる。
「少し休むぞ。」
「ああ。」
「そしたら、昨日の最後にいたところに行く。」
「了解だ。」
カチャカチャ——
いつもよりも強い弾を使う。ガラスなどを貫通するように。
「準備はいいか?」
「ああ。」
「では、一発打ち込む。」
ポキ——
ドガンッ——
パァン——
二種類の銃声が聞こえた。散々いろんな音がしているのにその二つだけが強調されて聞こえた。一つはここから撃ったもの。もう一つは?
「ああああっっっ!!」
「どうしたっ!?」横を見ると相棒が腕を抑え、悶えている。
「ヤバい。弾にあたった。向こうのスナイパーに見つかった。」
「大丈夫か?一度木の後ろへ隠れるぞ。」
パァン——
「いぁああっ!!!」
今度は足だ。膝から崩れ落ちる。
「くそ。」
それを抱えて遮蔽物に隠す。
「大丈夫か?すまないがここでは治療できない。」
「わかっている。だが、おれはこれ以上戦うのも無理だ。なんとか帰ることができないか。」
「担いでいくさ。」
「ありがとう。」
「どこから撃たれた?そこから隠れながら帰らないと。」
「正面のようだ。」
「正面か。建物の屋上に人がいたのか?それとも中から窓を開けて撃ったりしたのか?」
「わからない。」
「くそ。一体どこから?」
建物を隅から探す。
屋上、なし。
ターゲット周辺の室内、なし。
地上、候補あり。
建物の色にうまくカモフラージュしているが、スナイパーを確認した。
「おそらく、地上から撃たれ……」
パァン——
視界がうねる。
おい!——
おい?なに?
……!!——
静かだ。音が消えるとこんなに安らかなのか。知らなかったな。
……っ!——
なにか聞こえる。うるさいなあ。いま気分よく休んでるんだから、そおっとしといてくれ。
………………。




