2-4 嫌がらせの予算凍結? 前世のコストカッターの前ではただの「無駄なサブスク解約」ですが
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さて、第4話の更新です。
前回、コンプライアンス遵守のために騎士団の帳簿を綺麗にしたバルドですが、それが原因で王宮の財政を牛耳るボスの逆鱗に触れてしまいました。
今回は、王宮財務院からやってきたエリート文官による「予算凍結」という理不尽な嫌がらせに、バルドの前世のスキル(?)が炸裂します。
どうぞお楽しみください!
「——というわけで、書式が急遽変更されたため、
近衛騎士団の今月の予算は一時的に『凍結』とさせていただきます。
明日までに、この新しい申請書式にて赤字を解消できなければ、
来月の部隊の給与はゼロですな。
いやはや、お気の毒に」
団長執務室。
片眼鏡をかけた、いかにも神経質そうな王宮財務院の文官、
シフォン子爵が、ねっとりとした嫌味な笑みを浮かべていた。
彼が俺(瀬戸蓮)の机の上にドンッ! と積み上げたのは、辞書のように分厚く、
複雑怪奇な数字がびっしりと並んだ予算申請書の山だった。
(げぇっ……!! 出たよ、本社(財務院)からの無茶振りな予算カット要求!
ていうか期限が明日までって、どこのブラック企業だよ!)
俺は、胃の辺りをギュッと掴みながら、三白眼で書類の山を睨みつけた。
シフォン子爵は、俺の凶悪な顔面を前にわずかに肩をビクつかせたが、
「数字の計算などできない無学な平民め」という露骨な優越感で
それを覆い隠していた。
(チクショウ、絶対に俺をハメようとしてる。
ここで給与が未払いになれば、部隊長たちの俺への忠誠心なんて一瞬で吹き飛んで、今度こそ寝首を掻かれるぞ……!)
生き残るためだ。やるしかない。
俺は覚悟を決め、前世で幾度となく経験した
「月末の経費削減ミッション」の記憶を呼び起こし、
分厚い予算申請書をめくり始めた。
異世界の複雑な文字は読めなくても、不思議なことに「数字の羅列」と
「不自然な項目の動き」は手に取るように分かった。
「……なんだこれ」
俺は思わず低い声で唸った。
「『軍馬用特殊飼料の優先手配料』? そもそも市場価格の三倍はおかしいだろ。
それと、この『聖剣研磨および甲冑メンテナンスの月額定額』ってなんだ。
毎月こんなに使ってないだろ。
あと、この『第三会議室用の高級茶葉購入費』……ふざけんな、麦茶で十分だ!」
それは、前世のダメな営業所がよくやっていた「無駄な経費」のオンパレードだった。
相見積もり(コンペ)を取らずに高い業者を使い続け、使ってもいない謎の月額サービスに延々とお金を払い続けている。
俺はイライラしながら、机の引き出しから真っ赤なインクの羽根ペンを取り出した。
そして、「無駄・不要・ボッタクリ」と判断した項目に対し、
一切の躊躇なく、ビーッ! ビーッ! と赤い横線を引いて、次々と削ぎ落としていった。
「こんなボッタクリ業者、今すぐ切れ。
相見積もりを取って一番安いところに変えろ。
あとこの月額サービスは本日付けで解約だ。
使ってもいないものに毎月金を払うとか、頭が湧いてるのか」
俺は、赤線だらけになった書類を、ため息交じりにシフォン子爵へと突き返した。
「無駄を削ったら、赤字どころか大幅な黒字(予算余り)になったぞ。
これでもう問題ないな。さっさと承認印を押して帰れ」
「…………ッ!!??」
シフォン子爵は、突き返された書類を見た瞬間、片眼鏡をガチャンと床に落とし、信じられないものを見るような目で俺を凝視した。
その顔は、まるで「死神に余命宣告された」かのように真っ青だった。
(えっ、なに? 俺、なんかマズい項目まで消しちゃった?)
俺が戸惑っていると、いつものように背後に控えていたルシアンが、
ゾクゾクするような熱を帯びた声で囁いた。
「……バルド団長。恐れ入りました。
まさか、王宮財務院が何十年もかけて構築した
『108の不正な中抜きルート』を、瞬き一つせず一刀両断されるとは」
「……はい?」
「皆様、ご覧ください! バルド団長が赤い線で『解約しろ』と命じた項目……
それはすべて、財務卿ハルバート公爵の息のかかった
ダミー商会ではありませんか!
彼らが騎士団の予算から密かに吸い上げていた
不正な資金源を、団長は一瞬の数字の羅列から
完全に見抜き、真っ赤な血のようなインクで
『次はお前たちの首をこうして斬り裂く』と、
無言の宣告を突きつけられたのです!」
「ひっ、ひぃぃぃぃぃッ!!」
シフォン子爵が、腰を抜かして床にへたり込んだ。
「ば、バカな! 我ら財務文官が複雑に偽装した完璧な資金洗浄ルートを、
たった数分で……っ! こ、この男は、悪魔だ! 数字の悪魔だぁぁぁッ!!」
シフォン子爵は、赤線が引かれた書類を抱え、半狂乱になって執務室から逃げ出していった。
「逃がしませんよ。団長が暴いたこの証拠をもとに、
財務院のダミー商会を一斉摘発いたします」
ルシアンが、冷たい笑みを浮かべて剣の柄に手をかけた。
(ち、違う! 俺はただ、使ってない謎の月額サービス(サブスク)を
解約しただけなのにーっ!)
♢
かくして。
最凶の顔面を持つ新団長は、嫌がらせの予算凍結を仕掛けてきたエリート財務文官に対し、「前世のサラリーマン的なコストカット」を行っただけで、財務院の巨大な暗部を一撃で粉砕。
王宮の財政を牛耳る大ボス・ハルバート公爵との、血で血を洗う(と思われている)全面戦争の火蓋が、いよいよ切って落とされたのである。
いつも応援ありがとうございます!
今回は、バルドの元へやってきた王宮財務院からの嫌がらせ(予算凍結の危機)に対するエピソードをお届けしました。
エリート文官が自信満々で持ち込んできた複雑怪奇な予算案。
しかし、前世で会社員として揉まれていたバルドにとっては、ただの「無駄なサブスク」と「ボッタクリ業者」のオンパレードでした(笑)。
躊躇なく赤ペンで「解約!」「相見積もり!」と線を引いていっただけなのですが……
それが結果的に、財務院の不正な資金源をピンポイントで全滅させる「死神の宣告」として受け取られてしまいます。
これでいよいよ、第2章のボスであるハルバート公爵が本格的にバルドを「排除すべき最大の脅威」として認識しました。
次回の直接対決に向けて、物語がさらに加速していきます!




