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顔面凶器の一般兵、死に際の美青年騎士団長に弟と指名され王国最強へ強制成り上がり!  作者: マサッチ
第2章 王都激震・最凶団長の胃痛スローライフ編

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2-3 団長、コンプライアンスの精神で王宮の闇を怯えさせる

いつも応援ありがとうございます!おかげさまで、ブックマークや評価をいただけるようになってきました。執筆の大きな励みになっております!


第3話となる今回は、前回バルドの「営業スマイル」に恐怖した部隊長たちが、なぜか自ら差し出してきた「裏金」の処理を巡るドタバタ劇です。

前世がしがないサラリーマンだったバルドにとって、「裏金」や「不透明な帳簿」は恐怖の対象(コンプラ違反)でしかありません。彼が必死に組織をホワイト化しようとした結果、王宮の闇が動き出します……!

「……で、これが我が第一部隊から第三部隊が蓄えていた『調整金(裏金)』の

 帳簿と、現物にございます」


団長執務室の机の上に、ドンッ、ドンッ、と、革袋に入った大量の金貨と、

羊皮紙の束が置かれた。

差し出してきたのは、前回俺の「名刺交換」に涙目で恭順を誓った

エリート部隊長たちだ。

彼らは今や、俺が少し視線を動かすだけで

ピクッと肩を震わせるほどに飼い慣らされていた。


(いや、何これ。多すぎでしょ。ていうか……)


俺(瀬戸蓮)は、目の前の金貨の山を三白眼でじっと睨みつけながら、

内心で盛大に頭を抱えていた。


(裏金じゃねえか!! ガッツリ犯罪だよ!!

なんで着任して数日の俺のところに、こんなヤバい裏帳簿が回ってくるんだよ!)


前世でしがない営業マンだった俺の脳裏に、

真っ先に浮かんだのは【コンプライアンス違反】という恐怖の十字架だった。

こんな出所不明のブラックマネー、もし税務調査(この世界なら王宮監査)が

入ったら一発で営業停止……いや、一発で死罪だ。

スラムに逆戻りどころか、ガチの処刑台が手招きしている。


(ダメだ。絶対にダメだ。こんな不透明な資金、

今すぐクリーンに処理(マネーロンダリング)

……じゃなくて、健全な予算として組み替えなきゃ、俺の命が危ない!)


俺は、前世で経理部に毎日怒られながら叩き込まれた「健全な経費処理」の知識を

必死に絞り出した。

まずは、この不鮮明な帳簿の記載を正さなければならない。


「おい、お前たち……」

俺は恐怖で引きつった声を、なんとか絞り出した。


「「「ヒッ……!!」」」

部隊長たちが一斉に直立不動になる。


俺は裏帳簿の一ページを指先でトントンと叩いた。


「……こんな、誰がどこで使ったかも分からない不透明な金、あってはならない。

 ……いいか、これからは全ての支出に『領収書』を添付しろ。

 どこで、誰が、何のために使ったか、1ゴールド単位で正確に記録するんだ」


「り、領収書……? 記録……ですか?」

銀髪の部隊長が困惑したように声を漏らす。


「そうだ。特に、この『交際費(貴族への賄賂)』という名目の無駄な支出は、

 今後一切認めん。

 会議の茶菓子代、備品の購入、兵士たちの訓練環境の改善……

 すべて『福利厚生』と『必要経費』として、誰に見られても恥ずかしくない

 公明正大な名目に書き換えるんだ」


俺が言っているのは、現代日本なら新入社員でも知っている「経費精算の基本」だ。

裏金をプールするな、ちゃんと会社の予算として正しく使え、というだけの話である。


しかし、これをルシアンが聞くと、その脳内フィルターは恐るべき超訳を開始した。


「……なるほど! 素晴らしいです、バルド団長!!」

ルシアンがパンッと手を打ち、瞳に狂信的な光を宿らせた。


「え?」


「皆様、お分かりですか?

  バルド団長は、この裏金をただ没収するのではなく、

 完璧に『合法的な国家予算』の枠組みへと偽装(ロンダリング)し、

 財務派閥の目を完全に欺こうとされているのです!

  1ゴールド単位の正確な記録とは、裏を返せば、

 敵に一分の隙も与えない完璧な『防壁の帳簿』を作るということ!

 さらに賄賂を絶ち、兵の育成(福利厚生)へと資金を回すことで、

 騎士団の戦力を合法的に底上げする……!

  悪徳貴族どもの資金源を断ち切り、我が騎士団を完全なる独立組織へと

 変貌させる、あまりにも冷徹で完璧な『組織改革(ホワイト化)』です!」


「「「な、なんだと……ッ!? そこまで先を読まれて……!」」」

部隊長たちが、感極まったように顔を紅潮させ、再び床に平伏した。


「団長の深謀遠慮、恐れ入りました!

 直ちに、財務官の目を欺く『一紙の隙もなき領収書精算網』を全軍に敷き、

 不透明な資金をすべて『騎士団の血肉(経費)』へと変換いたします!」


(違う! 俺はただ監査が怖くてコンプラを守りたいだけなのに!

なんで『財務派閥に戦争を仕掛ける』みたいな話になってんの!?)


バルドの必死の悲鳴は、またしても熱狂の渦にかき消された。


——しかし、この時、バルドは知らなかった。

彼が「ただ保身のために」命じたこの完璧な帳簿改革が、

王宮の財政を裏で牛耳る、ある【本物の怪物】の琴線に触れてしまったことを。


♢


——王宮の最深部、財務統括室。


山のような書類に囲まれ、冷徹なガラスの球体のような瞳をした男

——王国財務卿、ハルバート公爵は、手元の報告書を見て、

初めて不快そうに眉をひそめた。


「……近衛騎士団の裏金ルートが、一晩で完全に消失した、だと?」


「は、はい……。そればかりか、新団長のバルドなる男の指示により、

 騎士団の帳簿が『我々財務官でも一分の穴も見つけられない、

 完璧な資金循環』へと書き換えられております。

 中抜きや横領の余地が、完全にゼロに……」


報告を行う部下の声は震えていた。

ハルバートは、ペンを机に置いた。

彼は感情に左右されない、徹底した合理主義者だ。

バルドの「最凶の顔面」などという噂話には一微塵も興味はなかったが

——この「完璧すぎる財務の引き締め」には、明確な脅威を

感じざるを得なかった。


「フン……ただの粗野なスラム上がりかと思えば、

 背後に相当な『数字の天才(キレ者)』を囲っているようだな。

 面白い。我が財務派閥の資金源を潰そうという実力行使か。

 ならば、どちらのロジックがより王宮にふさわしいか……

 徹底的に精査してやろう」


冷徹な合理主義者の目が、

バルドを「排除すべき明確な敵」としてロックオンした。


何も知らないバルドは、

執務室で「よし、これで税務調査が来ても安心だな!」と、

ようやく少しだけ痛みの和らいだ胃をさすりながら、

のん気に胸をなでおろしているのだった。

いつも応援ありがとうございます!

皆様のおかげで、なんと本作が【12ポイント、ブックマーク1人、評価1人】を突破いたしました!!本当に、本当にありがとうございます!読者様の一言やブクマが、バルドの胃薬……ではなく、私の執筆の最大のエネルギーです!


さて、第3話ではバルドの前世のサラリーマン魂(コンプライアンス意識)が炸裂しました。

「裏金怖い!監査怖い!」という一心で、部下たちに「領収書を貰え」「複式簿記でクリーンにしろ」と普通の経理の基本を命令しただけなのですが、ルシアンの手にかかれば「財務派閥の目を欺く、完璧な防壁の帳簿作り」に大破廉恥翻訳されてしまいました(笑)。


そしてラスト、ついに第2章のボスである冷徹な合理主義者・ハルバート財務卿が登場です!

ハッタリの顔面が一切通用しない「数字と論理の怪物」を相手に、バルドは前世の営業・経理知識でどう立ち向かうのか……!?

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