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顔面凶器の一般兵、死に際の美青年騎士団長に弟と指名され王国最強へ強制成り上がり!  作者: マサッチ
第2章 王都激震・最凶団長の胃痛スローライフ編

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2-2 前世の営業スマイルと名刺交換が、血の契約と勘違いされる

いつもお読みいただき、ありがとうございます!

第2章、第2話の更新です。


前回、うっかり(物理的に)巨大汚職を摘発してしまった新団長バルド。

今回は、騎士団のトップエリートである「部隊長」たちとの初顔合わせという、

胃が痛すぎる定例会議に挑みます。


エリートたちに舐められまいと必死なバルドが頼ったのは、

前世で培った『日本の由緒正しき営業ムーブ』でした。

しかし、最凶の顔面を持つ彼が「営業スマイル」で名刺を差し出すと……?


異世界ファンタジーと現代ビジネス作法の最悪のすれ違いコント、

どうぞお楽しみください!

王宮近衛騎士団には、絶対的なヒエラルキーが存在する。


団長の下には、各部隊を実質的に統括する五人の「部隊長」がおり、

彼らはいずれも一騎当千の実力と、高位貴族としてのエベレスト級のプライドを

持つエリート中のエリートたちだ。


そして今日、その部隊長たちと新団長である俺(瀬戸蓮)との、

初めての顔合わせとなる「定例会議」が開かれていた。


(……空気が重い。重すぎる。みんな俺のことめちゃくちゃ睨んでるじゃん!)


円卓の最上座。

分厚いマホガニーの椅子に(浅く)腰掛けながら、俺は必死に冷や汗を引っ込めていた。


五人の部隊長たちの瞳には、

「スラム上がりの正体不明の男」に対する強烈な警戒心と、

隠しきれない敵意が宿っている。

彼らにとって、得体の知れない平民が上に立つなど屈辱以外の何物でもないのだろう。


(このままじゃ、絶対にいつか寝首を掻かれる!

 ここは一つ、前世で培った『下っ手に出る営業術』で、

 俺が無害で親しみやすい人間だと アピールしなければ!)


俺は意を決して立ち上がった。

そして、前世の営業マン時代に数え切れないほど繰り返してきた、

あの「必殺のルーティン」を発動した。


「えーー皆様! 本日はお忙しい中、

 お集まりいただき誠にありがとうございます!」


第一声は、ハキハキとしたワントーン高い声。

そして、両手を胸の前でスリスリと擦り合わせる「揉み手」からの、

腰をピシッと折る完璧な「45度のお辞儀」である。


「「「…………ッ!?」」」


その瞬間、部隊長たちが一斉に息を呑み、椅子をガタッと鳴らして後ずさった。


(よし、掴みはオッケー!

  注目を集めたところで、すかさず畳み掛ける!)


俺は、部隊長の中で一番偉そうな席に座っている銀髪の男にツカツカと歩み寄ると、自分の名前を走り書きした羊皮紙の切れ端(名刺の代わり)を、両手で恭しく差し出した。


「わたくし、新しく団長に着任いたしましたバルドと申します!

 浅学非才の身ではございますが、皆様の『懐』に入り込めるよう、

 粉骨砕身(ふんこつさいしん)の覚悟で努めさせていただきます!

 今後とも、何卒よしなにお願いいたします!」


満面の、本当に心からの「営業スマイル」を浮かべて。


だが、俺は知らなかった。

三白眼で顔中に傷のある大男が放つ「営業スマイル」は、

どう見ても『獲物を前にして殺戮の悦びを隠しきれない狂人』の

笑顔にしか見えないということを。


そして、前世の平和な日本の営業ムーブが、

血生臭い騎士団のルールの中でどう翻訳されるかということを。


「ひっ……!」


銀髪の部隊長は、俺が両手で差し出した羊皮紙を、

ガチガチと震える手で受け取った。


「……ル、ルシアン副団長。

 これは、一体何の儀式だ……?」


銀髪の男が、助けを求めるように背後のルシアンを見た。


ルシアンは、またしても感動に打ち震えたような顔で、重々しく口を開いた。


「見れば分かるでしょう。

 ……バルド団長は今、自らの名を記した『血の契約書』を、

 両手(相手の逃げ道を塞ぐ構え)で貴殿に突きつけたのです」


(違うよ! ただの名刺交換だよ! 両手で渡すのがマナーなんだよ!)


「あの奇妙に手を擦り合わせる動作(揉み手)は、

 『お前たちの頭蓋骨など、いつでもこのように粉砕できる』という無言の威嚇。

 そして、急所である首を差し出すかのように身を屈める(45度のお辞儀)のは、

 『いつでも首を刎ねてみろ、返り討ちにしてやる』という圧倒的強者の

 挑発です」


「な、なんだと……ッ!」


「極めつけは、あの恐るべき宣告です。

 『皆様の懐に入り込み、粉骨砕身の覚悟で……』。

 つまり、我々の弱点(懐)はすでに完全に把握しており、

 逆らえば骨を粉々に砕く(粉骨砕身)、という最後通牒ですよ」


「「「ヒィィィィィィィッ!!」」」


部隊長たちの顔から、一気に血の気が引いた。


「そ、そんな……! 我々はすでに、この怪物の掌の上だと言うのか……!」

「あの笑みを見ろ……俺たちの恐怖を啜って、歓喜しているぞ……!」


(違う違う違う! 俺はただ「末永く仲良くしてください」って言ってるだけなのに!)


俺が誤解を解こうと、焦って一歩前に出た瞬間。


「「「ははぁーっ!!」」」


エリート部隊長たちは、一斉に円卓の横で膝をつき、床に額を擦り付けた。


「我ら五名の部隊長、バルド団長に絶対の恭順を誓います!」

「我々の骨を粉々に砕くのだけは、どうかご勘弁をぉぉぉッ!」

「仰る通り、我々の懐事情(裏金)はすべて包み隠さず報告いたしますぅぅぅ!」


(えっ? 今なんか裏金とか言わなかった?

 ていうか泣かないでよ、俺が虐めてるみたいじゃん……)


ルシアンが満足げに頷き、俺に向かって深々と一礼した。


「さすがは主君。

 武力すら使わず、ただの『挨拶(という名の心理的制圧)』だけで、

 一癖も二癖もある部隊長たちを完全に屈服させるとは……!

 このルシアン、一生ついていく所存にございます」


(もう嫌だ……。誰か、俺に正しい異世界の挨拶の仕方を教えてくれ……)


俺の平穏への道は、またしても見当違いの方向へ全力疾走していくのだった。

いつも応援ありがとうございます!

今回は、バルドの前世の「営業マンとしての習性」が

火を噴くエピソードをお届けしました。


エリート騎士たちに嫌われないよう、必死で「揉み手」「45度のお辞儀」

「名刺交換」という日本の営業ムーブを繰り出したバルド。

しかし、最凶の顔面を持つ男がそれをやると、「頭蓋骨粉砕の暗喩」

「血の契約の強要」という恐ろしい挑発に変換されてしまいました(笑)。


ルシアンの翻訳機能がポンコツ(深読みしすぎ)なせいで、

着々と騎士団の「恐怖のカリスマ」として崇められていくバルド。

彼の胃薬が尽きるのが先か、騎士団が完全に平定されるのが先か……!

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