1-4 名門の落ちこぼれと「太陽」の兄
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前回、動物たちにだけは優しさを理解してもらえたバルド。
しかし、この物語のタイトルにある『死に際の美青年騎士団長に弟と指名され王国最強へ強制成り上がり!』という最大のフラグが、ついに回収される時が来ました。
ただでさえ味方から恐れられているのに、エリート揃いの最強騎士団のトップに立つことになってしまったバルド。
彼の不本意な伝説は、ここから本格的な「成り上がり(※ただし本人は泣いている)」へと突入していきます!
小鳥たちのさえずりと、足元で丸くなる子犬の体温。
戦場の狂気から離れ、動物たちに囲まれたベンチで目を閉じていた俺(瀬戸蓮)の脳裏に、不意に「見知らぬ記憶」が濁流のように流れ込んできた。
——それは、この最凶の顔面を持つ身体の元の持ち主、
「バルド」自身の過去だった。
『貴様のような化け物が、我が名門ヴァン家の血を引いているなどと……!
恥を知れ、この忌み子め!』
薄暗い地下室。冷たい石の床。
そこに投げ出されていたのは、まだ幼いながらも、すでに人を呪い殺しそうな三白眼と傷だらけのような皮膚を持つ少年・バルドだった。
父親である伯爵は、彼を汚物のように見下ろし、母親は恐怖で顔を覆って決して彼を見ようとしなかった。
魔法の才能もなく、剣を振るう筋力も平凡。
ただ「顔面が凶悪すぎる」という一点のみで、彼は一族の恥として幽閉同然の扱いを受けていたのだ。
そんな暗闇の底で生きる彼にとって、唯一の光が存在した。
『泣かないで、バルド。君は誰よりも優しい心を持っている。
僕だけは、それを知っているからね』
地下室の扉をこっそりと開け、温かいスープとパンを運んできてくれる少年。
黄金に輝くサラサラの髪。
宝石のような碧眼。
透き通るような白い肌と、天賦の剣術と魔法の才能を併せ持つ、ヴァン家の誇り。
——兄、アルベルトだった。
アルベルトは「太陽」だった。
誰に対しても分け隔てなく優しく、一族の期待を一身に背負う完璧な天才。
彼だけが、バルドの恐ろしい顔面に怯えることなく、
本当の弟として愛してくれた。
だが、兄が光り輝くほど、バルドの心には色濃い影が落ちた。
『兄上の完璧な経歴に、俺のような化け物の弟がいるという事実は、
絶対に傷となる』
そう悟ったバルドは、ある夜、屋敷から逃げ出した。
兄の足を引っ張らないために、名もなき一介の歩兵として、泥にまみれて死ぬことを選んだのだ。
……記憶の奔流は、さらに加速し、つい数日前の「ある光景」へと行き着いた。
激戦の最前線。
泥にまみれた一般兵のバルドが抱き抱えていたのは、胸を深く貫かれ、
おびただしい血を流す美しい青年の姿だった。
若くして王国最強の騎士団長に上り詰めた「太陽の兄」アルベルト。
彼が、瀕死の重傷を負いながら、弟の無骨な手を両手で強く握りしめていた。
『……バルド。ようやく、見つけた……。
バカな弟だ……僕が、君の顔を恐れるわけないだろう……』
『あ、あ、兄上……ッ!』
『……騎士団の皆には、伝えてある。
僕の……後継者は、この世界で一番優しくて強い……自慢の弟、
バルド……お前だ……。
……すべてを、託す……』
アルベルトの腕から力が抜け、その美しい瞳から光が消えた。
最愛の兄の死という絶望に耐えきれず、
バルドの精神はその瞬間に完全に崩壊し——
そこに、現代日本で通り魔に刺されて死んだ「瀬戸蓮」の魂がスッポリと入り込んでしまったのだ。
「…………って、えええええええええええええッ!?」
俺はベンチから勢いよく跳ね起きた。
膝の上で寝ていた小鳥たちが「チチッ!?」と驚いて飛び立ち、
子犬が「キャン!」と尻尾を巻く。
「ご、ごめん! 違うんだ、怒ってるわけじゃないんだ!」
慌てて動物たちを撫でて落ち着かせながら、俺の心臓は早鐘のように打ち鳴らされていた。
待て、待て待て待て。
タイトル回収が早すぎる。というか、事態が深刻すぎる。
あの泥水を見た時、俺はただ「最凶のブサメン兵士に転生した」とだけ思っていた。
しかし現実は違う。
俺は今、『王国最強の美青年騎士団長が、死に際に次期団長として指名した、行方不明だった顔面凶器の弟』なのだ。
「嘘だろ……!
俺、ただの一般兵としてひっそり生き延びようと思ってたのに……!」
王国最強の騎士団といえば、エリート中のエリート、プライドの塊のような美形騎士たちの集まりに決まっている。
そんな連中のトップに、この「殺戮の悦びを隠しきれない顔(※愛想笑い)」の
一般兵が君臨する? 絶対に暗殺される。
間違いなく
「貴様のような化け物がアルベルト団長の後継者などと認められるか!」と、
美しい剣技で切り刻まれる未来しか見えない。
「ひぃぃぃ……ッ! 逃げよう、今すぐこの軍から脱走して……!」
俺がガチガチと歯を鳴らしながら荷物をまとめようとした、その時だった。
「——見つけましたよ。我が新たなる主君、バルド様」
背後から、氷のように冷たく、しかし鈴を転がすような美しい声が響いた。
振り返ると、そこには白銀の鎧を身に纏い、腰に細身の剣を差した、絵画から抜け出てきたような絶世の美剣士が立っていた。
その左胸には、王国最強の証である『白百合の紋章』が輝いている。
彼は、俺の最凶の顔面を見るなり、一瞬だけ息を呑み……そして、その美しい顔を「ゾクッ」と歪ませ、なぜか頬を紅潮させて片膝をついた。
「アルベルト前団長の遺言通り、お迎えに上がりました……。ふふっ、なるほど。
噂通りの『血の匂い』……背筋が凍るほどの威圧感ですね。
あなたのような御方にお仕えできるとは、光栄の極みです」
(……え? なんでこいつ、俺の顔見て頬染めてんの?)
「さぁ、バルド団長。共に王都へ参りましょう。
あなたに反発する愚かな古参騎士どもを、その圧倒的な『恐怖』で
粛清するお時間です」
「……はい?」
神様、三度目の正直で言わせてほしい。
俺、マジで平穏に生きたいだけなんですけどぉぉぉぉぉぉッ!?(血涙)
続く...
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
ついに過去の記憶が蘇り、兄アルベルトとの関係、そして自分が「次期騎士団長」に指名されていたという絶望的な事実(本人談)に気づいてしまったバルド。
最後には、明らかに普通ではない美剣士の部下(?)もお迎えにやってきました。
ここから先は、戦場の一般兵から、王都の騎士団へと舞台を移し、さらにスケールの大きな勘違いコメディが展開されていきます!
◆読者の皆様へ
次回は第1章の締めくくりであり、新たなステージへの架け橋となる第5話となります。
第5話以降は、騎士団内の派閥争いや新キャラクターの登場など、より深く重厚なストーリーに入っていく予定です。
引き続き、熱いご声援よろしくお願いいたします。




