6-3 緊急インシデント対応と「要件のヒアリング」
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魔王軍最強の将軍ヴァルガと、顔面凶器の元PMバルドがいよいよ対峙!
圧倒的な武力行使(アポなし訪問)を行うヴァルガに対し、バルドの「緊急インシデント対応」が炸裂します。
果たしてヴァルガの圧倒的な威圧感は、バルドにどう受け取られてしまうのか……!?
ぜひお楽しみください!
「……なんだと? 外部業者……だと?」
魔王軍最強の右腕ヴァルガ・ザルツは、眉を釣り上げ、凄絶な笑みを深めた。
目の前に立つ人間の男——バルド。
背広のような黒い衣服を身に纏い、冷酷きわまりない三白眼でこちらを見下ろしている。その瞳には恐れも、焦りも、動揺の一欠片すら存在しない。ただ「面倒な不祥事が起きた」とでも言いたげな、冷徹な視線だった。
(この男……! 我が身から放たれる『覇王の威圧』を完全に無視しているというのか……!?)
ヴァルgaの纏う闘気は、並の戦士であれば立ち眩みを起こし、その場に膝をつくほどの威力がある。
だが、バルドはただみぞおち(胃)を片手で軽く押さえ、微動だにせず立っていた。
(くっ……胃が痛い。このプレッシャー、前世で本社の監査部から予告なしでコンプライアンス調査が入った時の緊急監査チームにそっくりだ……! だが、ここで怯めば終わりだ。PMとして、まずはファクトチェックと相手の要件ヒアリングを行わねば……!)
バルドは胃液が逆流しそうな感覚を力づくで押し殺し、さらに凶悪に見える「営業用ポーカーフェイス」を張り付けた。
「我が社のセキュリティ結界を破壊しての不法侵入……。あいにくですが、本日の新規飛び込み営業の受付は終了しております。ご用の場合は事前にアポイントメントをお取りいただきたい」
「貴様……タダで済むと思うなよ、小僧!」
ヴァルガの手が背の大剣にかかる。巨体が僅かに沈み込み、凄まじい衝撃波が集落の地面を揺らした。
「我が名はヴァルガ・ザルツ! 魔王クラウス様が右腕にして、我が軍の破滅を担う将である! 卑劣な呪詛にて我が配下の魔物どもを汚染し、奴隷として働かせている罪……その首を跳ねて償わせてくれる!」
咆哮とともに、背負った大剣が引き抜かれた。
それだけで周囲の樹木が圧迫感で倒れ伏すほどの、暴力の権化。
だが、バルdの脳内では、別の翻訳が実行されていた。
(魔王の右腕……? 破滅を担う将……? つまりこいつは、クラウス社長直属の『執行役員(CSO/最高戦略責任者)』か……! そして配下の魔物(子会社)が勝手にホワイト化して業績を上げているのが気に食わず、直々に現場叩き潰しに乗り込んできたというのか……!?)
バルドの三白眼が、怒りと冷や汗でさらに恐ろしく細められた。
(なるほどな……! 本社のブラック体質をそのまま押し付け、せっかく立ち上げたホワイト事業部を解体しに来たわけだ。典型的な『現場を知らない無能な上層部』のパワハラ監査じゃないか……っ!)
「待ちなさい」
バルドは低く、地獄の底から響くような声で制した。そのあまりの凄みに、剣を引き抜こうとしたヴァルガの動きがピタリと止まる。
「……何だ? 命乞いでもする気か?」
「いいえ。インシデント対応の基本手順(SOP)に従い、事実関係の確認を行いたいだけです。あなたが主張する『呪詛による精神汚染』とは、具体的にどの運用プロセスを指しておられるのですか?」
「なっ……!?」
「我が社が提示したのは『適切な労働時間(シフト制)』『WBSによる工程の可視化』および『味噌汁給食によるコンディション管理』の3点のみ。これのどこに呪詛の要素があるのですか? 具体的なエビデンス(証拠)をご提示ください」
ズイ、と一歩踏み出し、バルドは三白眼でヴァルガを睨みつけた。
その姿は、あまりにも堂々たる「犯人(あるいは悪の首魁)」の風格そのものだった。
武力で威圧しに来たはずのヴァルガの背筋に、生まれて初めて「未知の恐怖」という冷たい汗が流れた。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
武力でねじ伏せようとする魔王軍の右腕ヴァルガに対し、エビデンスとコンプライアンス(SOP)で真っ向から反論するバルド!
お互いの「勘違い」が高度に噛み合ったまま、緊張の要件ヒアリングが始まってしまいました(笑)。
次回の展開もお楽しみに!
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