6-2 不審者(刺客)の目撃と胃痛の再発
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魔王軍の右腕・ヴァルガが動き出した「第6章:魔王軍の右腕編」、いよいよエピソード2の開幕です!
現場のホワイト化を「精神汚染と強制労働」と勘違いした魔王軍の最強将軍が、バルドの元へと迫ります。
果たしてバルドの胃はどうなってしまうのか……!?
フェルグランツ王国北東、魔物国家エリア。
かつては凶暴なオークやゴブリンが略奪と内ゲバを繰り返していた荒廃した現場は、今やバルドの導入したWBS、シフト制、そして味噌汁給食の導入により、驚異的なクオリティとモラルを誇る「ホワイト集落」へと生まれ変わっていた。
早朝、集落の中心部でバルドはタブレット状の魔導端末を片手に、本日の進捗状況(進捗率百パーセント)を確認していた。
「よし、本日の味噌デプロイ計画も順調だな。現場のモラルも高い。これならいつ魔王軍の査察が来ようとも――」
その時である。
集落の周辺警備を担当していたゴブリンの斥候が、青ざめた顔で駆け込んできた。
「ば、バルドさん大変っす! 集落の北西外縁部に……とんでもない怪物が近づいてきやがったっす!」
「怪物? 魔物国家の周辺で、我が社の労働基準に適合しない野良の魔物か?」
「いや、そんなレベルじゃないっす! まるで歩く要塞みたいな、全身漆黒の重鎧を着た人間――いや、魔族の男っす! あいつ、結界を一目見るなり、素手でバリバリと引き裂きやがったっす!」
バルドの眉間がピクリと跳ね上がった。
(バリバリと引き裂いた……? 我が社が総力を挙げて構築したセキュリティ結界を、まるでダンボール箱のように……!?)
バルドは急ぎ、集落の監視カメラ(魔導映像投影盤)の前に立った。
そこに映し出されていたのは、常軌を逸した光景だった。
漆黒の巨躯。背負った巨大な大剣。纏う闘気は周囲の空気を歪ませるほどの凄まじい重圧を放っている。
冷酷な眼光を宿したその男は、一歩進むごとに地面を抉りながら、真っ直ぐにバルドたちの集落へと歩みを進めていた。
(なんだあの過剰なまでの暴力装置は……! 労務管理もコンプライアンスもあったもんじゃない! あんな奴が現場に入ってきたら、一瞬で安全配慮義務違反の労災が発生するぞ……!)
背筋に冷たいものが走る。
バルドは思わずみぞおちを押さえ、顔面を蒼白にさせた。
(前世のブラック企業のワンマン社長を彷彿とさせるこの圧倒的なプレッシャー……! まさか、無謀なデスマーチを強いる『外部の悪質コンサルタント』か、それとも『悪質な敵対的買収(M&A)を狙う競合他社の刺客』か……っ!)
一方、その頃。
「ふん……。あの小賢しい人間の男が巣食う集落か」
謁見の間を出立した魔王軍最強の将軍、ヴァルガ・ザルツは、冷徹な笑みを浮かべて大剣に手を掛けた。
クラウス様から命じられたのは「挨拶」という名の処刑だ。精神汚染で魔物たちを狂わせたという卑劣な人間の首を刎ね、我が軍の圧倒的な武力を知らしめる。それこそが彼の任務であった。
「おい、人間の小僧! 姿を現せ! 魔王様を侮辱し、我が軍の秩序を乱した罪、その命をもって贖ってもらう!」
ヴァルガの咆哮が、地鳴りのように集落全体を揺るがした。
集落の広場にいたオークやゴブリンたちが恐怖で震え上がる中、バルドはゆっくりと、しかし三白眼を限界まで鋭く光らせてその姿の前に歩み出ていた。
(殺し合いに来た……だと? いや、待て。ここで怯えた態度を見せたら『悪役』としての既成事実を作られる。かといって正面から武力で迎撃すれば、俺の「犯人の顔」がさらに凶悪な殺人鬼として世界に知れ渡ってしまう……!)
胃痛の激痛に冷汗を流しながらも、元営業PMバルドは、営業スマイルならぬ「死んだ魚のような冷徹な営業スマイル」を顔面に張り付けた。
「……おや。我が社の敷地にアポなしで突撃してくるとは、随分とマナーのなっていない外部業者だな」
バルドの低く威圧的な声と、凶悪な三白眼がヴァルガを捉えた。
静まり返る集落。魔王軍最強の将軍と、顔面凶器の元PMが、いま真っ向から対峙しようとしていた。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
魔王軍最強の将軍ヴァルガとバルドがついに遭遇しました!
圧倒的な武力を持つヴァルガを「マナーのなっていない外部業者(または悪質コンサル)」と勘違いするバルドの胃痛とビジネス脳は、果たして通じるのか……!?
次回の展開もお楽しみに!
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