3-4 周囲が「謎の暗黒魔法」に戦慄する中、元リーマンとゲーマーは同郷確認に必死です
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さて、第4話の更新です。
前回のラスト、極限状態のバルドの口から飛び出した「コンプラ違反」という魂の叫び。それによって、お互いが「現代日本からの転生者」だと気づいたバルドとジーク。
しかし、周囲のルシアンや隣国の美女カーミラたちにとっては、二人の会話は「未知の暗黒言語(日本語)による、恐るべき精神戦」にしか見えません。周囲の深読みがさらに加速する中、二人の秘密のコミュニケーションが始まります。
どうぞお楽しみください!
「うお、うおおおおお……ッ!」
隣国最強の戦闘狂・ジークが、大剣を床に放り投げ、両手で頭を抱えてガタガタと震え出した。
その姿を見た晩餐会会場の貴族たち、そして副団長のルシアンは、一斉に息を呑んだ。
「な、何が起きたのだ……!? バルド団長が何か『呪文(コンプラ違反)』を呟いた瞬間、あの狂犬が武器を捨てて怯えだしたぞ!」
「……精神攻撃だ! バルド団長は、一歩も動かずに言葉ひとつで相手の精神を破壊したのだ!」
(違う、ただ単に『同郷の人間』がいて驚いてるだけだから!!)
周囲が勝手に戦慄する中、俺(瀬戸蓮)の心臓は別の意味でバクバクと音を立てていた。
まさか、こんな中世ファンタジー全開の異世界で、現代日本の社畜ワードが通じる相手出会うなんて夢にも思わなかったからだ。
ジークは頭を抱えたまま、周囲に聞こえないほどの小声で、しかし必死の形相で俺に話しかけてきた。もちろん、この世界の言語ではなく、前世の「日本語」で。
「……おい、マジで日本人なのか? あんた、前世で何やってた人だよ」
「え、あ、はい……。東京のIT企業で営業マンをしてたんですが、最期は顔面凶器の男に逆恨みされて刺されて死んじゃって……。目が覚めたら、あろうことか俺を刺した犯人とまったく同じ顔で転生してたんです」
俺も慌てて、周囲に聞こえないように小声の日本語で返した。
すると、ジークの目が「同情」と「ドン引き」の光で潤んだ。
「うわ、自分を殺した犯人の顔に転生……!? なにそれ、この世界の神様(運営)、性格悪すぎでしょ……どんなクソゲーだよ……。つか、前世からしてハードモードすぎんすか……。俺はただの大学生で、ゲームのやりすぎで徹夜して心臓が止まったクソゲーマーっす。つか、あんたのその顔面とオーラ、まじでチート級の最強ボスに見えたから、本気で戦いにいっちゃいました。すんません!」
「チートとか言うな! こっちはただビビり散らかして、極度の緊張で胃が痛くて顔が引きつってるだけなんだよ!」
「ガチすか!? じゃあ、さっきのミリ単位の回避は!?」
「ただ絨毯に足が引っかかって転んだだけだよ! 殺されかけて本当に死ぬかと思ったんだからな!」
「ぶはっ、マジかよ! 完璧な無敵時間での回避だと思って感動してたのに!」
ジークはぷるぷると肩を震わせて笑いを堪え始めた。
完全に「ただの日本の若者」のノリである。凶悪な戦闘狂のオーラは一瞬で消え去っていた。
しかし、この「小声で謎の言語(日本語)を話し合う二人の姿」は、周囲の人間たちには『神々の次元で行われている、常人には理解不能な超高度な心理戦』にしか見えていなかった。
隣国の特使である美女・カーミラは、青ざめた顔で額の汗を拭っていた。
(信じられない……。我が国が誇る最狂の戦士ジークが、バルド団長の放つ『未知の言語の圧力』によって、完全に主導権を握られているわ。あのバルドという男、底が知れなすぎる……!)
ルシアンもまた、狂信的な目をさらに輝かせていた。
「素晴らしい……。バルド団長は、力で圧倒するのではなく、異界の神聖な対話によって、野蛮な狂犬の『戦意』そのものは完全に包囲し、削ぎ落としていらっしゃる。これぞ真の強者の戦い方だ……!」
(だから、ただの同郷確認の雑談だってば!!)
周囲の勘違いのハードルが天高く跳ね上がっていくのを感じ、俺の胃が再びキリキリと痛み出す。
「……よし、とりあえずこの場を収めよう」
俺は小声の日本語でジークに提案した。
「これ以上騒ぎが大きくなると、俺の胃が限界を迎える。そっちから上手いこと降伏してくれないか?」
「了解っす、先輩。ここは俺が上手いこと空気読みますわ」
ジークは頼もしく頷くと、床に落ちていた大剣を拾い上げ、鞘に収めた。
俺に向かって深々と頭を下げ、会場全体に響き渡る声で言った。
「……ふっ、俺の負けだ。バルド団長、あんたの『精神の深淵(コンプラの重み)』には、到底敵いそうにねえ。これ以上戦っても、俺の魂が消し飛ばされるだけだ。……参ったよ」
ジークが爽やかに降伏を宣言した瞬間、晩餐会の会場は静まり返り、次の瞬間、割れんばかりの歓声と拍手が巻き起こった。
「おおお! 近衛騎士団長, バルド様の完全勝利だ!」
「剣すら抜かずに、帝国の狂犬を屈服させたぞ!」
パチパチパチと拍手を送る貴族たちの中で、俺は引きつった営業スマイルを浮かべながら、ジークと目配せを交わした。
ジークは片目を瞑り、楽しそうにニヤリと笑った。
♢
こうして、絶対絶命だったはずの隣国とのファーストコンタクトは、前世の「日本語」という奇跡のパスワードによって、誰も予想しなかった方向へと動き出す。
その日の深夜、お互いの孤独と苦労を分かち合う「秘密の居酒屋(飲み会)」が開催されることを、まだ周囲の誰も知る由はなかった。
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お互いが「日本人(転生者)」だと気づいたバルドとジーク。
周囲が「未知の暗黒魔法による高度な精神戦」だと勝手に震え上がる中、当人たちは「元社畜です」「ガチゲーマーっす。あの回避まじチートっすねw」「ただ転んだだけだよ!」と、非常に平和な同郷確認を行っていました(笑)。
ジークに前世の死因と、この顔の秘密(第1話のアレです!)を明かしたバルド。自分を殺した犯人の顔に転生させられるという神様の最悪な仕打ちに、ゲーマーのジークも「どんなクソゲー(神様)だよ!」と、深く同情してくれたようです。
ジークが上手く空気を読んで降伏してくれたおかげで、バルドの「剣を抜かずに敵を屈服させた最強の男」としての名声はさらにカンストしてしまいました。ルシアンもカーミラも、もうバルドを神か悪魔のように恐れています。
次回は、いよいよお楽しみの深夜の密会!
異世界で出会った二人が、お酒(と前世の思い出)を片手に、現代日本あるあるで大盛り上がりする「意気投合編」です。
どうぞお楽しみに!




