3-3 必死に逃げていたら「無敵フレーム」と勘違いされ、ついに口から出た「コンプラ違反」
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前回、バルドの「両手を前に出す(ストップの合図)」を、伝説のカウンター技「パリィ」の構えだと勘違いし、最高潮に興奮してしまった戦闘狂のジーク。
ついに晩餐会の席で、凶悪な大剣がバルドに向かって振り下ろされます!
絶対に戦いたくない元営業マンは、この絶体絶命のピンチをどう切り抜けるのか!?
そして、二人の運命を繋ぐ「あの言葉」がついに飛び出します。
どうぞお楽しみください!
「——いくぜ、最強の隠しボス(ネームド)!!」
豪華なシャンデリアが照らす晩餐会の会場。
隣国最強の戦闘狂・ジークが、身の丈ほどもある巨大な大剣を軽々と振り上げ、俺(瀬戸蓮)の脳天めがけて一直線に飛びかかってきた。
「ひ、ひぃぃぃぃッ!?」
(死ぬ死ぬ死ぬ!! ガチで斬られる!!)
俺は恐怖のあまり足がもつれ、無様にもその場に尻餅をついて後ろに転がった。
ズドォォォォォォン!!!
直後、俺が0.1秒前まで立っていた場所を、ジークの大剣が粉砕した。
大理石の床が爆発したように吹き飛び、土煙が舞い上がる。
「な、なんだと……ッ!?」
土煙の中から、ジークの驚愕に満ちた声が響いた。
(俺の最速の振り下ろし、完全にタイミングを合わせたはずだ。それを、あんな不格好な前転で完全に回避しただと……!? いや、違う! あれはただの回避じゃない!)
ジークのゲーマー脳は、俺の「無様な尻餅」を、超人的な動体視力によって信じられない解釈で分析していた。
(攻撃判定が当たるフレーム(瞬間)に合わせて、あえて自分から姿勢を崩し、ローリングの『無敵時間』だけで俺の攻撃をすり抜けたんだ! 当たり判定の極限を見切ってやがる……なんちゅう変態的なプレイヤースキルだ!!)
ジークが一人で戦慄している間にも、俺は「ひえええ!」と情けない悲鳴を上げながら、床を這いつくばって必死に逃げ回っていた。
「バルド団長!! おのれ野蛮人め、我が主君の慈悲に泥を塗るか!」
見かねたルシアンが剣を抜き、俺を庇おうと飛び出してこようとする。
「こ、こっち来んなルシアン! お前まで巻き込まれるぞ!!(俺のそばにいると巻き添え食らうから離れてて!)」
俺はパニックになりながら、ルシアンに向かって「シッシッ」と手を振った。
しかし、それがルシアンとジークの目にはこう映った。
——『手出しは無用だ。この程度の小虫、私一人で十分遊べる』と。
「……ッ! 承知いたしました! 団長の邪魔立てはいたしません!」
ルシアンは感動の涙を浮かべて剣を収め、直立不動で見学モードに入ってしまった。
(バカァァァ! 何納得してんの!? 助けてよ!!)
「ハハハハッ! 部下を下がらせたか! いいぜ、その余裕ごと叩き潰してやる!」
ジークはさらに興奮し、大剣をブンブンと振り回しながら俺を追いかけ回し始めた。
俺が逃げようとして絨毯に足を取られて転べば、大剣が頭の数ミリ上を通り過ぎる。
俺が恐怖でテーブルの下に潜り込めば、大剣がテーブルごと上の空間を薙ぎ払う。
結果として、俺は「敵のすべての攻撃を最小の動き(ミリ単位)で回避し続ける、圧倒的な達人」のムーブを偶然にも連発してしまっていた。
「はぁっ、はぁっ……! バケモノかよ、あんた! 俺の全コンボを、一切の反撃もせずに(舐めプで)全回避するなんて……!」
ジークが息を切らしながら、狂気と歓喜の混じった目で俺を睨みつける。
一方の俺も、すでに体力と精神力の限界だった。
(もう嫌だ……。異世界に来てまで、なんでこんな理不尽な客(戦闘狂)のクレーム対応みたいなことさせられなきゃいけないんだよ……!)
前世のブラック企業時代。
土下座しても許してくれない理不尽な取引先、連日のサビ残、そして胃潰瘍で倒れた記憶がフラッシュバックする。
俺の中で、何かがプツンと切れた。
ジークが最後の大技を放とうと、大剣を上段に構えたその瞬間——。
俺は両目を固く瞑り、前世でずっと叫びたかった「魂の叫び」を、喉の奥から絞り出した。
「もうやめてくれぇぇぇ!! 労災も出ないのにこんな無茶振り、明らかな『コンプラ違反』だろぉぉぉ!!!」
ピタッ。
俺の顔面まで残り数センチというところで。
ジークの大剣が、ピタリと静止した。
「……は?」
晩餐会に、不自然なほどの静寂が落ちた。
周囲の貴族やルシアンたちは、
「コンプライハン……? いかなる古代魔法の詠唱だ?」
と息を呑んで戦況を見守っている。
大剣を構えたまま硬直したジークは、目を丸くして俺をまじまじと見つめた。
そして、恐る恐る、信じられないものを見るような声で呟いた。
「……おい、あんた。今、『コンプラ』って言ったか……?」
「えっ」
「それに、『労災』って……」
俺は恐る恐る目を開けた。
そこには、さっきまでの「血に飢えた戦闘狂」ではなく、「道端で偶然同級生に会った時の現代の若者」のような、戸惑い100%の顔をしたジークがいた。
「……あ。はい。コンプライアンス(法令遵守)、ですが……」
「……マジか。あんた、もしかして……」
「……はい。元、営業マンです……」
数秒の沈黙の後。
ジークは「ガコンッ」と音を立てて大剣を床に落とし、両手で頭を抱えた。
「うおおおおおマジかよぉぉぉ!? なんでこんな異世界のガチファンタジーな場所に、日本のリーマンがいんだよぉぉぉ!!!」
♢
最凶の顔面を持つ元営業マンと、最強の戦闘狂である死にゲーマー。
二人の運命が「現代の社畜ワード」によって、ついに重なり合った瞬間だった。
いつも応援ありがとうございます!
今回は、ジークの猛攻を「ただの運と情けない逃走」で避け続けた結果、ゲーマー特有の「無敵フレームを使った舐めプ回避」だと勘違いされるバルドの受難をお届けしました。
そして、ついに限界を迎えたバルドの口から飛び出した「労災」と「コンプラ違反」という悲鳴。異世界には絶対に存在しないその現代ワードを聞いて、ジークのゲーマー脳も一瞬でフリーズし、ついに互いが「同郷(日本人)」であることに気がつきました。
周りのルシアンたちが「古代魔法の詠唱か!?」と勘違いしたままなのもポイントです(笑)。
次回は、周囲が固唾を飲んで見守る中、二人がこっそりと「現代日本あるある」を確認し合うシュールな展開へ。ついにバルドに初めての「気の合う友達」ができる……!?
どうぞお楽しみに!




