3-1 平和な休日に「ヤバすぎる特使」がやってきた件
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皆様からの熱い応援のおかげで、ついに本日から【第3章:隣国外交・戦闘狂のデスゲーム編】がスタートいたします!
第2章で王宮の闇を(物理的に)払い、最強の騎士団を手に入れた新団長バルド。
ようやく平穏な日々が訪れるかと思いきや……次に彼の前に現れたのは、隣国からやってきた「最悪の特使団」でした。
しかもその中の一人は、バルドと同じく「前世の記憶」を持つヤバい男のようで……!?
新章も、胃痛と勘違いがフルスロットルで加速します。
どうぞお楽しみください!
「……ふぅ。やっと、本当にやっと、平和な休日が来た……」
団長室のソファに深く腰掛け、俺(瀬戸蓮)は淹れたての温かい紅茶をすすりながら、感動のあまり泣きそうになっていた。
前世で過労死寸前の営業マンだった俺にとって、休日は命のオアシスだ。
ハルバート財務卿の一件が片付き、騎士団の連中もすっかり大人しく(というか俺の顔を見るだけで直立不動に)なった今、ようやくこの異世界で「スローライフ」と呼べる時間を手に入れたのだ。
(今日は一日中、何もしないぞ。お茶を飲んで、昼寝して、またお茶を飲むんだ……!)
俺が最高のリラックスタイムを満喫しようと、目を閉じたその時だった。
「バ、バルド団長!! 大変でございます!!」
バンッ! と勢いよく扉が開かれ、副団長のルシアンが血相を変えて飛び込んできた。
「ぶふぉっ!?」
俺は思わず熱い紅茶を吹き出しそうになった。
「な、なんだルシアン。敵襲か!?」
「いえ、敵襲よりも厄介な事態です! 先ほど、隣国の『ガルディア帝国』から、事前の通達なしに特使団が到着いたしました。……しかも、あの【血塗れの狂犬】と呼ばれる最強の騎士を伴って!」
「きょ、狂犬……?」
「はい。そして国王陛下は、この国で彼らの相手を務められるのは、ハルバート卿の陰謀を一人で打ち砕いたバルド団長しかいないと……団長を『全権大使』にご指名なされました!」
(はぁぁぁ!? なんで俺!? ちょっと待って、さっきまでの俺の平和な休日は!?)
「すぐに謁見の間へお急ぎください! 相手は一筋縄ではいかない連中です。団長のその『覇気』で、奴らを完全に威圧してやってください!」
「いや、俺は別に……」
「さあ、こちらへ!」
反論する間もなく、俺はルシアンに引きずられるようにして、謁見の間へと連行されてしまった。
***
王宮、謁見の間。
俺が重い扉を開けて中に入ると、そこにはすでに二人の人物が待っていた。
一人は、妖艶なドレスに身を包んだ、息を呑むほど美しい女性。隣国の特使、カーミラだ。彼女は俺の顔を見た瞬間、その凶悪な三白眼に気圧されたのか、ビクッと肩を震わせてから、警戒心も露わに薄く笑った。
(うわぁ……美人だけど、めちゃくちゃ値踏みするような目で見てくるじゃん。絶対に関わっちゃダメなタイプの取引先だ……)
俺は胃の痛みを堪えながら、彼女の背後に立つもう一人の人物に視線を移した。
——その瞬間、俺の背筋にゾクッと冷たい汗が走った。
巨大な大剣を背負った、長身の若い男。
彼の目は、獣のようにギラギラと飢えており、口元には好戦的な笑みが張り付いていた。彼こそが、隣国最強と謳われる騎士、ジークである。
ジークは、俺と目が合った瞬間——ピタリと動きを止め、その瞳を歓喜で見開いた。
(スゲー……!! なんだこいつ!)
ジークの内心は、激しく昂ぶっていた。
ジークの前世は、現代日本の「重度のゲーマー」である。特に、理不尽なほど難易度が高いアクションゲーム(通称:死にゲー)をこよなく愛する男だった。
彼にとってこの異世界は、スリル満点の『超高難易度ゲーム』でしかない。
そして今、目の前に現れた「バルド」という男を見た瞬間、彼のゲーマーとしての直感が激しく警鐘を鳴らし、同時に歓喜の声を上げていた。
(ただ突っ立ってるだけなのに、オーラ(威圧感)が完全にラスボスじゃん……! エンカウント(遭遇)した瞬間にわかる、絶対にこいつレベルカンスト(上限)してるヤバい敵だ! 間違いない、こいつがこの王国の『最強の隠しボス』だ!)
ジークの顔に、凶悪なまでの笑みが浮かぶ。
「……見つけたぜ。最高の獲物をよ」
一方、バルドは。
(ひえぇぇぇ!! めっちゃ睨まれてる! 目が完全に血走ってるよ! ガチのヤバい奴じゃん! なんで俺のこと見て嬉しそうに笑ってんの!?)
俺は心の中で絶叫しながら、必死に震える足を堪えていた。
ここでビビっているのがバレたら、最悪、その場で斬り捨てられるかもしれない。とにかく、波風を立てないように、無害であることをアピールしなければ!
俺は意を決し、前世でクレーマーを相手にするときに鍛え上げた、最高の「営業スマイル(ただし顔面は最凶)」を浮かべた。
「——遠路はるばる、よくお越しくださいました」
ジークは、その笑みを見て再び息を呑んだ。
(うおっ、笑った! あれだけの殺気をぶつけたのに、まるでそよ風でも吹いたかのような余裕の笑み……! こっちの実力を完全に下に見ているのか。最高に燃える展開じゃねえか!!)
「……へへっ。よろしく頼むぜ、騎士団長さんよ」
「ええ。こちらこそ、何卒よしなに……(帰りたい……)」
♢
最強の隠しボス(だと思い込んでいる戦闘狂のゲーマー)と。
ただ波風を立てずにやり過ごしたい(元営業マンの)騎士団長。
前世の記憶を持つ二人の、果てしなく噛み合わない「すれ違いのデスゲーム」が、今ここに幕を開けたのである。
第3章スタート!まさかの「同郷」の来訪です!
いよいよ第3章が開幕いたしました!
今回バルドの前に現れたのは、隣国からのヤバい特使団。その一人である戦闘狂「ジーク」は、なんとバルドと同じ転生者で、しかも前世は「重度のアクションゲーマー」でした。
バルドの最凶の顔面を見て、ジークは「こいつ、威圧感が完全にラスボスだ!最強の隠しキャラだ!」と、ゲーマー特有の思考で大歓喜してしまいます。
一方のバルドは、「なんかヤバい奴にロックオンされた!」とビビり散らかし、必死に営業スマイルで対応。
それがまた「余裕の笑み」と勘違いされるという、前途多難なスタートとなりました(笑)。
前世の「社畜知識」と「ゲーム知識」がどうすれ違っていくのか。そして、彼らが「お互い日本人だ」と気づく日は来るのか……!?




