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居場所をなくした勇者と元魔王が辺境でスローライフはじめました  作者: 冬木ゆあ


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第22話 魔法都市③

 それからしばらく街の雰囲気を楽しんだ後、俺たちは宿屋に戻り、休憩していた。すると、ニコエラは満足そうな顔で戻ってきた。


「人類の魔道具は素晴らしい! いい勉強になった。――レイチェル、今回は案内ありがとう」


 そう言って、ニコエラがレイチェルに差し出したのは、金色のチェーンに黄色のガラスビーズがあしらわれた可愛らしいブレスレットだった。レイチェルはそれを受け取り、嬉しそうにさっそく身に着けた。


「あら、ありがとう。素敵なブレスレット」

「レイチェルに似合うと思ってな。これはアルとコリン」


 ニコエラは、今度は俺とコリンに小さなガラスドームの中に水色の細かいガラス入ったチャームを手渡した。


「なんでも水の精霊の加護がかけられているらしい。健康のお守りだそうだ」

「悪いな。俺たちニコに何も買ってないよ」


 俺は申し訳なさそうにそう言うと、ニコエラは首を横に振った。


「気にするな。魔法都市に付き合ってもらったお礼だよ。――さぁ、夕食を食べに行こう」



 俺たちは夕食を食べ、宿屋に戻ってくる頃には、辺りは夜の帳が下りていた。


「レイチェル、今回は案内してくれてありがとう。俺たちは明日の朝立つよ」

「ええ。気をつけてね」


 レイチェルはそう言って、軽く手を上げ、俺たちに背を向けようとしたときだった。


「レイチェル、二人だけで少し話せるか? ――アルとコリンは、先に部屋に戻っていて」


 俺は不思議に思いながら、コリンを連れて先に部屋へと戻った。しばらくしてニコエラも戻ってきたので、俺たちは大浴場へ向かった。



 俺とニコエラは、バルコニーでワインを飲んでいた。コリンはベッドでぐっすりと眠っている。


「楽しい旅行だったな」


 ニコエラがまったりとした顔でそう言ったので、俺はうなずいた。


「そうだな。楽しかった」


 しばらく静かに夏の夜風に当たっていたが、さきほどレイチェルと何を話していたのか気になった俺は、隣にいるニコエラに尋ねた。


「それで、さっきレイチェルと二人で何を話していたんだ?」


 その問いに、ニコエラは俺の顔を真剣な表情で見つめた。


「コリンのことだ。あの子には魔法の才能があると思う」

「コリンに? 魔法の授業でそう感じたのか」


 ニコエラは正面を向き、うなずいた。


「魔法都市には魔法学校があるだろう? それについてレイチェルに聞いていたんだ。入学するかは置いておいても、選択肢が多いのはコリンにとっていいことだ」

「ニコの言う通りだ。コリンのこれからのこと、ちゃんと考えないといけないな。中等部までは村にあるからありがたい。子供にはちゃんとした教育をという村長の意向らしい。俺がいた村には学校はなかった」


 ニコエラはワインを一口飲み、俺を見た。


「アルの子供の頃か。想像できないな」

「可愛かったぞ、俺は」


 それにニコエラは吹き出すように笑った。

 こうして、魔法都市旅行は幕を閉じたのだった。


 魔法都市から帰ってきた翌日。

 俺たちはのんびりと朝食を食べた。やっぱり我が家が一番落ち着くとしみじみ思っていると、コリンがいそいそと出かける準備をはじめた。


「お土産を配ってくる」


 コリンがそう言うので、俺も立ち上がった。


「俺も村長にお土産を買ってきたから、一緒に行こう」


 俺とコリンは村へと向かった。すると、コリンは村の入り口に一番近い家の扉をノックした。俺は友達の家だと思って、コリンの後ろで待っていると、出てきたのはサイモンさんだった。たしか子供はすでに村を出ていて、ひとり暮らしのご老人のはずだ。

 コリンはクッキーの箱を開けて、差し出した。


「お土産です。一枚どうぞ」


 サイモンさんは少し目を丸くしたが、すぐに柔らかく微笑んだ。


「ありがとう、コリン。どこに行ってきたんだい?」

「魔法都市だよ! すごい体験もしてきたんだ。言っちゃいけないから、詳しく話せないけど……」


 コリンが嬉しそうにそう話し、サイモンさんはうなずいた。


「よかったなぁ。アルさんも、お土産ありがとう」


 俺は苦笑しながら首を横に振った。それからコリンは一軒一軒にクッキーを配って歩いた。


 帰宅して、ニコエラにそれを話すと、ニコエラはおかしそうに笑った。


「なかなか帰ってこないと思ったら、そういうことだったのか」

「笑い事じゃないぞ。俺は気まずかった……」


 俺が苦笑いしている正面で、コリンは余ったクッキーを食べている。ニコエラはそんなコリンの肩を抱いた。


「旅行に行けて嬉しかったんだよな?」


 コリンは満面の笑みでうなずいた。


「次は闘技場だな! おれ、絶対優勝するんだ!」


 俺とニコエラは、今からうきうきとしているコリンに笑みを浮かべていた。

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