第11話 雪の日
やけに寒いと思ったら、外は雪景色だった。
俺はリビングの窓から景色を眺め、お茶をしていると、ニコエラとコリンも起きてきた。コリンはまだ眠そうで、目を擦っている。
ニコエラは俺の隣に立ち、一緒に窓の外を眺めた。
「結構降ったな」
「雪かきしないとな」
それから朝食を食べ、俺はコートを着こんでスコップ片手に家を出た。吐く息は白く溶けていく。雪かきしながら、ふといいアイディアが浮かんで、家に戻った。
この日は土曜日で、学校が休みだったコリンがリビングでお茶を飲んでいたので、俺は声をかけた。
「コリン、お前も手伝え」
すると、コリンは少し嫌そうな顔をしながらも支度をした。そんなコリンと共に外に出て、俺はスコップを雪に差した。
「かまくらを作ろう」
すると、コリンは茶色の瞳を輝かせた。
「おもしろそう!」
俺が雪を集め、コリンが手袋をした手で雪を固めていく。そこそこ大きな山ができたとき、ニコエラが窓から顔を出した。
「コリンもいないと思ったら、なにやら二人して楽しそうなことをしているではないか」
俺は作業の手を止め、ニコエラを振り返った。
「ばれたか。作ったのを見せて、驚かせようと思ったのに」
ニコエラはおかしそうに笑った。
「そうだったのか。それは悪いことをしたな。だが、私も参加するぞ」
そう言って、ニコエラは窓を閉めると、しばらくして外に出てきた。そして、コリンと並び、雪を固める作業に加わった。
俺は家の周りの雪をかきながら、庭に集めていく。山がいい大きさになったので、入口を掘り、中を整えていく。なんとか三人が入れそうな広さが確保できて、俺は満足げに額にかいた汗を拭った。それから、背後でその作業を見ていたニコエラとコリンを振り返った。
「かまくらでココアでも飲もう」
ニコエラは笑顔でうなずきながら言った。
「いいな! 用意してこよう。コリンも手伝って」
「うん!」
二人が家の中に入っていったのを見届けて、俺はその間にかまくらを完成させようとせっせと作業した。
しばらくして二人はお盆にココアとクッキーを乗せて戻ってきた。俺たちは三人で完成させたかまくらに入って座った。ニコエラが三人の間にお盆を置き、俺はそこからココアの入ったマグカップを取ってさっそく一口飲んだ。ココアの温かさが全身に優しく広がっていく。
「うまいな」
ニコエラとコリンも同じようにココアに口をつけていて、こくりとうなずいた。ココアの甘い香りがかまくらの中に充満していた。
ココアを飲みながらクッキーを食べていると、また雪がちらついてきた。
「また積もりそうな雪が降ってきた。雪かきしたばかりだぞ」
「だが、なかなかにいい景色だ」
そう言うニコエラの横顔は穏やかで、俺は自然と笑みを浮かべていた。
翌日。
俺が見回りから帰ってくると、リビングには誰の姿もなかった。不思議に思って庭に出てみると、ニコエラとコリンはかまくらでココアを飲んでいた。
俺はかまくらの中を覗き込んだ。
「俺抜きでココアを飲むなんてずるいぞ」
ニコエラとコリンは俺が入る隙間を作り、ニコエラは微笑みながら言った。
「そろそろ帰ってくるころだろうと思っていた。アルの分もあるぞ」
お盆には湯気が立っているココアが入ったマグカップがひとつ置かれていた。俺はかまくらに入りながらそれを手に取った。
「随分とかまくらが気に入ったようだな」
ニコエラは笑みを浮かべながらうなずいた。
「ああ、居心地がいい。三人でこうぎゅっとなっているのがいいな」
コリンもうなずいている。
俺はココアを飲みながら、雪の日も悪くないと思った。
その日の夜。
夜のリラックスタイムにお茶を飲みながら、俺は話を切り出した。
「村への引っ越しの件だが、二人はどう思う?」
ニコエラは隣に座るコリンの顔を窺った。
「コリンはどう思う? 森の小屋では生活しづらくないか?」
コリンは俯き、少し考えている様子だった。
「……おれはここがいい。あの家は父さんと母さんとの思い出が多すぎる」
コリンが膝に置いた手をぎゅっと握りながら言った。俺はうなずき、今度はニコエラに視線を向ける。
「ニコはどうだ? 村に住みたいか?」
ニコエラは隣に座るコリンの肩を抱いた。
「私はこの小屋が気に入っている。ここがいい」
俺はその答えに微笑んだ。
「俺もだ。畑も順調だし、手放すのは惜しいと思っていた。――それじゃあ、引き続き、この小屋で生活を続けるということでいいな?」
ニコエラとコリンがうなずくのを見て、俺もうなずいた。
翌日の午後。
俺は村長の家を訪ね、リビングでお茶をしながら昨晩話し合われた内容を村長に伝えた。
「そういう訳で、俺たちはこれからもあの小屋で生活をしたいと思います」
村長はうなずき、笑みを浮かべた。
「もちろんですとも」
しばらく雑談をした後、俺は村長の家を出て、大きく伸びをしながら冬の澄み渡った青空を見上げた。
「よし。帰るか……」
ニコエラとコリンが待つ家に向かって、俺はゆっくりと歩き出した。




