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居場所をなくした勇者と元魔王が辺境でスローライフはじめました  作者: 冬木ゆあ


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第10話 コリン②

 その後も眠りが浅く、結局、俺はいつもより早く起きることにした。まだ寝ているニコエラとコリンを起こさないように気をつけながら静かにベッドを出た。

 朝日が眩しい畑で、軽く伸びをしてから水を撒いた。

 家の中に戻ると、ニコエラも起きていて、朝食の準備をしている。


「おはよう」


 そう声をかけると、ニコエラは顔を上げて、


「おはよう、アル」


 と、返してきた。

 俺がリビングの椅子に座ると、ニコエラがお茶を用意してくれた。すると、ドタドタと慌ただしい足音と共にコリンが起きてきた。俺とニコエラの顔を見て、ほっとしたような顔をしている。まだひとりでいることが不安なのかもしれない。そう感じた俺は、明るく振る舞った。


「おはよう、コリン」

「おはよう、おじさん」


 コリンはそう言いながら、俺の正面に座った。


「お、おじ……」


 未だにこの呼ばれ方に抵抗があり、呼ばれるたびにダメージを受けている気がする。ニコエラは朝食をテーブルに運びながらコリンに言った。


「『おじさん』じゃなくて、『アルおじさん』と呼んでやれ」


 俺はニコエラの一言に苦笑する。


「『おじさん』は外してもらえないだろうか……」


 すると、ニコエラとコリンは顔を見合わせて笑った。それからコリンが笑顔で俺に言った。


「アルおじさん!」



 それから朝食を食べはじめて、俺はコリンを心配して尋ねた。


「今日は学校を休んでもいいんだぞ。俺と一緒にいるか?」


 ニコエラもうなずき、コリンの様子を見ている。コリンは少し悩んだ様子を見せてから答えた。


「ううん。おれ、学校行くよ」


 俺とニコエラは顔を見合わせて、ニコエラはうなずいた。


「じゃあ、そうしよう。私もいるし、大丈夫だろう」


 それからコリンが言った。


「洋服とか取りに行きたい。アルおじさんとニコ先生も一緒に来てくれる?」

「もちろんだ。俺も取りに行かないといけないと思っていた。学校終わりに待ち合わせて、三人で荷物をまとめよう」


 そう決まって、ニコエラとコリンは学校へと出かけていった。

 俺は皿を洗ってから、いつものように村の周りを散歩した。一度家に戻り、コリンの荷物を積むための台車を引いて、村に向かった。すると、村の広場に商人のジョンさんが来ていたので声をかけた。


「こんにちは、ジョンさん」

「やぁ、アルさん。商品を見ていってくれよ」


 俺は並べられた商品の中に、気になるものを見つけたが、これからコリンの家に行くため、今買うのは気が引けた。


「今日は何時までやっていますか?」

「夕方まではいますよ。今日は実家に泊まるんで」


 俺は首を横に傾げた。


「実家? ジョンさんはこの村の出身だったんですか?」

「言っていませんでしたか。わたしは村長の息子なんです。この村、不便でしょう? だから、定期的に商人が来たらいいなと思っていたら、自分がなっちゃいました」


 そう言って、ジョンさんは笑った。言われてみれば、笑顔が奥さんにどことなく似ているような気がした。


「ジョンさんのおかげで、アンカースまで買い出しに行かなくてすむから助かりますよ」

「今後とも、どうぞ御贔屓に」


 俺は笑いながら、手を振り、村長の家に向かった。ノックすると、奥さんが顔を出して、俺を家の中に招き入れてくれた。リビングの椅子に座っていた村長が俺に微笑んだ。


「こんにちは、アルさん。コリンの様子はどうですか?」


 俺は村長の正面の椅子に座りながら言った。


「まだ情緒不安定なところは見受けられますが、今日もニコと一緒に学校に行きました」


 お茶を持ってきてくれた奥さんがほっとしたような顔をした。


「よかったわ。心配していたのよ」


 俺はお茶を受け取り、一口飲んでから切り出した。


「今日はこのあとコリンの家に行って、荷物を取ってこようと思います」


 村長は白い顎髭を撫でながらうなずいた。


「そうですね。では、わたしも同行しましょう。――おい、サラ、昼食を作ってくれないか? サンドイッチとか簡単に食べられそうなもの」


 奥さんはそれにうなずいた。


「そうですね。きっと学校が終わって、コリンとニコさんもお腹が空いているでしょうし」

「お手数をおかけして申し訳ない」


 俺が恐縮してそう言うと、村長と奥さんは笑みで返してくれた。


「こちらこそですよ。コリンを引き取っていただいたし、フォローまで任せてしまって……。なにかあれば力になります。遠慮なくおっしゃってください」


 俺はお言葉に甘えることにした。


 俺と村長は、学校が終わる時間に合わせて学校に向かった。

 子供たちが学校から出てきて、俺と村長に挨拶をして去っていく。そのあと、アンナ先生とニコエラとコリンが出てきた。アンナ先生は俺と村長に軽く会釈をした。


「あら、こんにちは。お二人ともどうされたの?」


 俺も会釈を返してから答えた。


「これからコリンの家に行って、荷物をまとめようと思いまして。迎えに来ました」

「それなら、わたしもお手伝いしますわ。人手は多い方がいいでしょう?」


 そうして、俺たちはコリンの家に向かった。

 コリンの家のリビングで軽く昼食を取ってから作業をはじめた。ニコエラとコリンとアンナ先生は、コリンの部屋で持っていくものをまとめている。俺は村長立会いの下、必要なものをもらうために話をしていた。


「昨日、ニコエラの毛布をお二人のご遺体を隠すために使ってしまったので、よければニコエラとコリン、二人分の毛布をいただきたいのですが……」

「もちろんですとも」


 俺は夫婦の寝室から毛布を一枚いただいた。それから、コリンの部屋に行き、コリンが使っていた毛布を持ち、外に置いてある台車に乗せた。それから、家を見て回り、余っていた食料をいただいた。またコリンの部屋に行き、まとめ終えた分の荷物を台車に積んでいく。

 そのとき、村長が俺に提案した。


「アルさん、もしよろしければ、この家に移住されますか? 森の小屋だと、なにかとご不便も多いでしょう?」


 俺は荷を積んでいた手を止めた。たしかに村から少し離れているし、コリンの学校なども考えると、この家に住み替えた方がいいのかもしれない。とはいえ、畑を作ったり、俺とニコエラの事情を考えると、村人たちから少し距離を置いていた方が気楽ではある。


「……俺ひとりでは決められないので、ニコとコリンとも相談させてください」


 俺はコリンの部屋に行き、空いている扉を軽くノックして、ニコエラとコリンの気を引いた。


「村長から、この家に住んでもいいと話があった。二人はどう思う?」


 ニコエラとコリンは顔を見合わせた。二人も悩ましいようだ。


「俺も決めかねている。コリンの学校のこともあるし、村の方が生活しやすいだろうか?」


 ニコエラは言いたいことがあるようだが、憚れるのか言い淀んだ。


「……それはすぐに決めないといけないのだろうか?」


 その質問には俺の後ろにいる村長が答えた。


「いいえ。ゆっくりでいいですよ。移住したくなったら、おっしゃってください」


 ニコエラはほっとした顔でうなずいた。そして、コリンの荷物をまとめる作業を再開した。


 一通り積み終わり、村長とアンナ先生にお礼を言ってから別れた。

 帰り道、俺たちはジョンさんのところに寄った。気になっていた商品を二人にも見てもらいたかったからだ。それは大人用と子供用の同じ柄のパジャマだった。それを見て、ニコエラは苦笑しながらもどこか嬉しそうである。


「アルはおそろいが好きだな」

「いいじゃないか、家族感があって。冬用のパジャマだ。温かそうでよくないか?」


 コリンはこそばゆそうにしながらうなずいた。


「おれもいいと思う。アルおじさんと、ニコ先生とおそろいのパジャマ」


 二人の同意を取りつけて、俺は三着のパジャマを買った。


 その日の夜。

 俺たちは同じ柄のパジャマを着て、リビングでくつろいでいた。寝る前のリラックスタイムだ。


「とりあえず、これで一段落かな」


 俺がそう言うと、ニコエラとコリンはうなずいた。それから、コリンが少し照れながら言った。


「今晩も三人で寝たいな……」


 ひとりで眠るのは不安なのかもしれない。そう感じた俺は、笑みを浮かべてうなずいた。


「三人だと狭いからな……。俺と二人で一緒に寝るのはどうだ?」


 コリンはお茶の入ったマグカップを両手で持って、うなずいた。


「アルおじさんと二人で寝る」


 すると、ニコエラが少し寂しそうな顔をしたので、俺は少し考えてから言った。


「じゃあ、こうするか? 明日はニコと寝ればいい」


 その提案にニコエラが顔を真っ赤にして、わずかに腰を浮かした。


「私はアルと一緒には寝ないぞ!」


 何か勘違いしているニコエラに、俺は苦笑した。


「明日はニコとコリンの二人で寝ればいいと言ったんだ」


 ニコエラはさらに顔を赤くして、座り直しながら小さな声で言った。


「ああ、そういうことか……」


 俺とコリンはおかしくて声を上げて笑った。

 こうして、三人での生活が本格的にはじまったのだった。

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