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夢のステージへの思い  作者: あいぼ
第2章 初舞台編
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第46話:次の一歩

舞台が終わってから数日が過ぎても、美咲の中にはあの日の感覚が残っていた。


照明のまぶしさ。

客席から聞こえる小さな音。

足を踏み出した瞬間の緊張。


初めて立ったステージは、怖い場所ではなかった。


むしろ、ずっと夢見ていた場所だった。


それなのに――。


家に帰ってから何度も思い返すほど、美咲の胸には悔しさが残っていた。


「もっとできたはずなのに……」


鏡の前で踊る自分を見ながら、美咲は小さくつぶやいた。


失敗したわけではない。

振りを間違えたわけでもない。

周りから見れば、きっと「よく頑張った」と言われる舞台だった。


でも、美咲自身は分かっていた。


玲奈の踊りを近くで見ていたからこそ、自分との差を感じていた。


同じ曲。

同じ振り付け。


なのに、玲奈の動きには自然に引き込まれる何かがあった。


美咲は以前なら、その差を「才能の違い」だと思っていた。


でも今は違った。


玲奈が積み重ねてきた時間。

見えないところで何度も繰り返してきた練習。

考えて踊ってきた日々。


それを少しだけ理解できるようになっていた。


「悔しいって思えるなら、まだ変われるってことなのかな……」


そう考えながら、美咲はもう一度音楽を流した。


ただ踊るためではない。


自分が何を変えるべきなのかを探すために。


数日後、練習場所へ向かうと、玲奈がいつものように鏡の前で練習していた。


美咲は少し迷ったあと、声をかけた。


「玲奈……私、まだ全然足りないと思った」


玲奈は踊りを止めて、美咲を見る。


「舞台?」


「うん。楽しかった。でも……終わったあと、もっと伝えられたはずって思った」


言葉にすると、悔しさがまた胸の奥から出てくる。


玲奈は少し考えるように黙った。


そして、静かに言った。


「それに気づいたなら、前より進んでると思う」


「でも、まだ玲奈みたいには踊れない」


美咲が正直に言うと、玲奈は少し笑った。


「私も昔から今みたいに踊れたわけじゃないよ」


その言葉に、美咲は顔を上げた。


玲奈が過去のことを話すのは珍しかった。


「何回も、自分の踊りが嫌になったことある」


「玲奈でも?」


「あるよ」


短い返事だった。


でも、その一言には、美咲には見えなかった時間が詰まっている気がした。


「だから、美咲も急がなくていいと思う」


その言葉を聞いて、美咲の胸に少し温かいものが広がった。


自分だけが遅れていると思っていた。


でも、誰もが迷いながら進んでいる。


その日の帰り道、美咲は空を見上げた。


次の舞台がいつになるかはまだ分からない。


でも、今度はただ出るだけではなく、自分の中にあるものを届けたい。


そう思えるようになっていた。


家に帰ると、母がリビングで美咲の練習着を見ていた。


「また練習?」


以前なら少し責めるように聞こえた言葉。


でも、今日は少し違って聞こえた。


美咲は少し驚きながら答える。


「うん。まだ上手くなりたいから」


母は何か言おうとして、少し黙った。


その表情には、まだ心配が残っていた。


けれど、美咲の本気を見ようとしているようにも見えた。


「……無理だけはしないでね」


その言葉に、美咲は小さくうなずいた。


完全な応援ではない。


でも、前とは違う。


美咲は気づいていた。


自分が変わり始めたことで、周りとの関係も少しずつ変わっていることに。


そして次に向かうべき場所が、少しずつ見え始めていた――。

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