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第45話:沈黙の距離
練習が終わった夜。
家に帰ると、母はいつも通り夕食の準備をしていた。
気まずい空気があると思っていた。
けれど、意外にも普通だった。
「今日はどうだった?」
突然の質問。
美咲は少し驚いた。
「……練習」
それだけ言って、少し間を置く。
そして初めて、自分から話し始めた。
初舞台のこと。
悔しかったこと。
でも、そこから変わりたいと思ったこと。
母は黙って聞いていた。
途中で否定もしなかった。
ただ、静かに耳を傾けていた。
話し終えたあと、美咲は少し不安になった。
どう思ったのか分からない。
すると母は小さく言った。
「そんな顔で話すくらいなら、本当に好きなんだね」
その言葉に、美咲は何も返せなかった。
認められたわけではない。
全部理解してもらえたわけでもない。
でも、閉じていた扉が少しだけ開いた気がした。
美咲は静かに頷く。
まだ距離はある。
でも、その距離は昨日までとは違う。
そして美咲は思った。
次は、自分自身がもっと前へ進まなければならない。
次の目標へ向かうために。




