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第44話:小さな衝突
翌朝、家の中は少しだけ静かだった。
母も美咲も、昨日のことを気にしているのが分かった。
けれど、どちらから話しかけることもできない。
そんな空気の中で、美咲は靴を履いた。
いつもなら「行ってきます」と言うだけ。
でも今日は少し迷った。
「……行ってきます」
小さな声。
すると少し間を置いて、母が返した。
「気をつけてね」
たったそれだけ。
でも、その言葉に少しだけ温かさがあった。
完全に分かり合えたわけではない。
昨日の問題が消えたわけでもない。
それでも、何かが少し動いた気がした。
練習へ向かう道で、美咲は考える。
自分の気持ちを伝えることは怖い。
相手が大切な人なら、なおさら怖い。
でも、言わなければ何も変わらない。
それは玲奈に一歩近づこうとした時と同じだった。
逃げずに向き合う。
その小さな積み重ねが、自分を変えていくのかもしれない。




