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第41話:母の視線
初舞台が終わってから、家での時間が少し変わった。
美咲自身は何かを変えたつもりはなかった。いつも通り学校へ行き、練習へ行き、帰ってくる。それだけの日々。
けれど、母は以前より美咲を見る時間が増えていた。
「最近、帰り遅いね」
夕食の準備をしながら、何気なく投げかけられた言葉。
その声には責めるような響きはなかった。ただ、心配しているような静かな響きがあった。
「練習だから」
美咲は短く答える。
それ以上、言葉は続かなかった。
本当は話したかった。初舞台のこと。うまくできなかった悔しさ。玲奈との差を感じたこと。そして、それでも続けたいと思ったこと。
でも、なぜか言葉にできなかった。
母は昔から美咲を心配していた。無理をしていないか。夢中になりすぎていないか。
その気持ちは分かっている。
分かっているからこそ、反論できなかった。
「そんなに頑張って、何になるの?」
いつか聞かれるかもしれない言葉。
その予感が、どこかにあった。
部屋に戻った美咲は、机の上に置いた舞台の写真を見る。
そこには笑っている自分が写っていた。
完璧ではなかった。
でも、あの日ステージに立ったことだけは嘘ではない。
美咲は写真を見つめながら思った。
母に分かってもらいたい。
でもその前に、自分自身がこの気持ちをもっと信じられるようにならなければいけない。




