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第39話:玲奈の一言
その日の練習帰り、美咲は珍しく玲奈と同じタイミングで部室を出た。
会話があるわけではない。ただ隣を歩いているだけなのに、美咲は妙に緊張していた。
少し沈黙が続いたあと、玲奈がふと口を開く。
「最近、前より考えて踊ってるよね」
突然の言葉に、美咲は足を止めそうになる。
見られていた。その事実だけで胸が熱くなった。
「……でも、考えすぎると動けなくなる」
思わず本音がこぼれる。すると玲奈は少しだけ笑った。
「最初はみんなそうだよ」
その言葉は、以前の「続けてるだけ」と同じくらい静かだった。けれど今回は、少しだけ近い場所から聞こえた気がした。
玲奈は続ける。
「でも、考えた時間って、あとでちゃんと残るから」
短い言葉だった。特別な励ましでもない。なのに、その一言は美咲の中に深く沈んでいく。
うまくできない時間にも意味がある。そう言われた気がした。
夜道を歩きながら、美咲はその言葉を何度も思い返す。
まだ遠い。けれど、自分は確かに前へ進み始めている。
そんな感覚が、ほんの少しだけ胸に灯っていた。




