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第33話:崩れる感覚
その日の練習は、最初からどこか噛み合っていなかった。ほんのわずかな違和感が、最初の動きから残っている。足の踏み出しが半拍遅れる。腕の角度がほんの少しずれる。普段なら修正できるはずの小さなズレが、なぜかそのまま次へと引きずられていく。
流れに乗れない。そう感じた瞬間から、意識は動きそのものではなく「ミスをしないこと」に向いてしまった。だが、それは逆効果だった。確認するほど体は固まり、次の動きへの反応が遅れる。
気づけば、周囲とのリズムが合わなくなっていた。みんなは同じ音の中で動いているのに、自分だけが少し外側にいるような感覚。その距離が、妙に現実的だった。
呼吸が浅くなる。頭では分かっているのに、体がついてこない。立て直そうとするほど、さらに崩れていく。その繰り返しの中で、焦りだけが強くなっていった。
「……大丈夫?」
かすかに聞こえた声に、美咲は一瞬だけ顔を上げた。けれど返事をする余裕はなかった。今の自分を言葉にすることができなかった。
何が悪いのか分からない。ただ、どこかが噛み合っていない。その感覚だけが残り続ける。練習が終わったあとも、その違和感は消えず、美咲の中で静かに積もり続けていた。




