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第30話:次の一歩
練習が終わったあとも、美咲はすぐには帰らなかった。
誰もいなくなりかけた部室で、一人だけ残り、静かに床を見つめる。
体は疲れている。
それなのに、不思議と心は落ち着いていた。
玲奈の言葉が、何度も頭の中で繰り返される。
「続けてるだけ」
特別なことは何も言っていない。
けれど、その一言は確かに重かった。
今までの自分も、確かに続けてきた。
それは間違いじゃない。
けれど、これからは少し違う。
ただ繰り返すのではなく、自分で選んで続けていく。
逃げるためでも、なんとなくでもなく、“近づくために”続ける。
その違いは小さいようでいて、大きな意味を持つ気がした。
ゆっくりと息を吐く。
胸の奥にあった焦りや迷いが、少しだけ形を変えていく。
まだ足りない。
まだ遠い。
それでも、止まる理由にはならない。
美咲は静かに立ち上がった。
そして、もう一度だけ鏡の前に立つ。
さっきよりも少しだけ、前を向いた目で。
次の一歩は、もう迷っていなかった。




